おまけ | ナノ

おまけ

起きてるタイプの睡眠姦

 なにか気持ちいいような感覚でぼんやり目を覚ます。横向きに寝ている佐久夜に後ろから寄り添う体温は巡だろう。それ自体は構わないが、片方の腕が回ってきて佐久夜の胸を揉んでいた。
 何をしているんだとは思ったが指摘するほどでもないかとまた眠ってしまおうとする。ただでさえ何度も交わった上に最後に一回と言われてからその一回を伸ばしに伸ばしたためにそこそこ疲弊していた。
 長い髪に顔を埋めて首筋に口づけられたり耳を食まれたり、佐久夜が起きないと思ったのかだんだんと巡の行動は大胆になっていく。佐久ちゃん、と小さく呼ぶ声は甘く湿っている。微かに水音がしてそれでようやく佐久夜の身体をまさぐっていない方の手が何をしているのか悟った。
 いい加減眠気もどこかに行ってしまった。限界まで耳を澄ませて巡の声や物音を拾っている。しばらくすると彼は満足したのか小さくため息を吐いて布団から出ていった。
 風呂場からの光で薄ぼんやり明るい中で身を起こす。枕元の灯りを点ける。眠る気もなくなってしまった。散々身体を重ねた後だというのにまだできそうだなと思う。
 戻ってきた巡は佐久夜が起きているのにぎょっとして一瞬足を止めた。
「わ……起こしちゃった?」
「お前がいなかったから」
「寂しかった? 寝てる間にいなくなったら嫌だよね」
 いそいそと彼が隣に潜り込んでくるので灯りを消した。背中側から巡を抱きしめる。
「なに? 甘えた期?」
 巡はくすくす笑って、そのまま眠気に任せたようだった。
 穏やかな息を慎重に窺う。寝付く寸前を捉えようとする。
「……巡?」
 小さく声をかける。巡は返事をしない。眠気と面倒さが勝って寝たふりをするだろうという予想通りだった。
 ゆっくりその肌を撫でさする。うっすらした腹筋をなぞり、脇腹を揉み、胸をくすぐり、下腹部の際どいところまで指を滑らせて肝心な部分には触れない。そろそろと焦らすような愛撫を続けるうち、巡の呼吸が乱れ始めたのを感じる。寝ているふりをしている手前隠そうとしているのだろうがぴったりくっついているからはっきり分かった。
「巡……」
 耳元で呼ぶと腕の中でぴくりと小さく震える。背中に固くなった性器を押し付けるとタオル地のバスローブが擦れて気持ちよかった。巡がしていたように耳を唇で弄びうなじにキスをして、そうしてたまらなくなって噛み付いた。
「ふあ、あ──っ!?」
 今度こそ隠し切れないくらいに身体をびくつかせ巡は甘い悲鳴を上げる。
「……巡……」
「……何してんの」
 さすがに寝たふりを続けるのは無理があると覚悟を決めたのか、巡は少し低い声を出す。
「……すまない」
「人の身体で……」
 巡の顔を見たいな、と思った。灯りを消してしまったのは失敗だった。きっと見たことのない表情をしているに違いなかった。
 また腰を擦り付けて続きを乞うと、小さな唸り声が聞こえた。不機嫌を装って期待しているようだった。
「……一回だけね」
「分かった」
「さっきみたいにずーっとするの無しだからね」
「……分かった」
 寝返りを打とうとする巡を押し留めて、裾を捲り上げ指で探った。そこはまだ柔らかくあっさり侵入を許す。さっき彼が弄っていたのはこっちだったのかもしれないと思うと息が苦しくなった。
 背後から挿入したことはまだなかった。巡は顔を見たがったし佐久夜もそれは同じだったし従者が主人に取らせるような姿勢でもなかったので。初めての体勢でぎこちなく繋がる。腕の中で身体を震わせているのがはっきり伝わってくる。
 後ろに挿れたまま巡の性器を触ると中が締まった。度を越えた快楽に巡が苦しげに身をよじるのを背後から抱き抑え、両方への刺激を続けるとすぐに彼は達し、合わせて佐久夜も中に出した。
 性器を抜くと巡がこちらに寝返りを打つ。呼吸を整えつつ暗闇で気配を頼りに唇を触れ合わせる。上がったばかりなのに風呂に連れていかないといけないが、しばらくはこうしていたいと思う。
「こういうの、今度は起きてる時にしてよね」
 巡は文句じみたことを言う。分かったとお決まりの言葉を返しながら、実はさっき起きていたんだと言ったらきっと怒るんだろうな、と思った。
20220327


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