ドリンクバーじゃないんだから | ナノ

ドリンクバーじゃないんだから

佐久鵺、佐久←巡要素あり
飲精

 舐めてって言ってみたら特に躊躇いもなく咥えられてしまったので、なんだかなあ、と巡は思う。顔だけ見れば上品で高貴で、俗っぽいこととは無縁ですみたいな、そういう綺麗な感じをしてるんだからちょっとくらい戸惑う様子とかあってもいいんじゃないの。何より支配者然として人に尽くされて当然みたいな雰囲気のこの人がこんな奉仕じみたことをしているのが気持ち悪い。
 おまけになんか、舐め方も堂に入っている。舌先でちょっと舐めるくらいを想定してたのに喉の奥までずっぽり咥えてしゃぶられている。解釈違いもいいとこだってのにちゃんと気持ちいいから最悪だった。だからこれは間違いなく裏切りだ。誰かの誰かに対する。
「あー、……あ、やば、出っ、くち、」
 肩を押して離させようとしたけど少し遅く、喉に流し込むみたいに射精した。やっちゃったと思ってたら彼は上品な仕草で品のない音を漏らしながら巡の性器に吸い付いて精子を残らず綺麗に口の中に吸い上げて、それで白い喉を晒して飲み込んだ。
 はあ?って思った。あんたが? 九条鵺雲が? 精液を? 飲んだ?
「……な、何してんすか」
 うん?って首を傾げるその人はさっきまで口いっぱいに男性器を含んで舐めて飲みさえしてたってのにやっぱりそんなこと微塵も感じさせないくらいに綺麗な顔をしていた。
「飲んだよ?」
「……や、飲んだよ?じゃなくて。てか飲むのも飲ませるのも駄目ですって」
「そうなの?」
 誰かさんがそうしてたんだろうなと巡には分かってしまう。こういうのは飲むものなのですとか言っちゃってさ。底無し欲深悪食男。欲しいものはなんでも腹の中に入れたくなっちゃうんだね。余計なことばっか教え込んで。
「じゃあ、次は気をつけるね」
 次。あるとしたら相手は巡だ。あいつとの次なんてない。そんなもの与えてなるものか。何のために巡がこんなことをしていると思っているのか。
 佐久夜には触らせない。
「続きしましょうよ」
 高貴で清純そのものみたいなその人は巡の性器をしゃぶっただけでちゃんと勃たせていた。これも解釈違いだけど、でも、これはちょっと興奮する。勃起した男性器は普通の人と変わらない形のはずなのになんとなく品があるように思えて自分で馬鹿じゃないのって笑う。頭がすっかりおかしくなっている。ゴムを着けてやるついでにちょっと擦ってやったら甘く鼻にかかった声が上がってぞくぞくした。ああもう完全におかしい。
 押し倒す。余裕の表情をした彼が完全に入られる側のつもりなのが癪に障って、だから、その反対にしてやった。些細な意趣返しのつもりなのに彼の薄笑いは全く崩れなくて、やっぱり滅茶苦茶に不愉快だ。巡の考えることもすることも全部想定内で、ばかりか幼馴染に押し入られる妄想で長年自慰をしてることすら見透かされているような気になる。親友に無理やり犯されるシチュエーションで尻をいじるとか、間違いなくイカれてるって自分でも分かってるよ。それが一番気持ちよくなっちゃうんだから仕方ないじゃん。本当にどうしようもない。
 望んだ相手ではないけれど、慣れた身体は誰のものでもちゃんと気持ちよくなれた。というか、よすぎた。初めて受け入れた生身の人間のそれは熱くて固くて勝手に動いてきて、指じゃ届かないところまで中を押し潰しながら入ってくる。意図してないのに媚びた甘い声が止められない。サービス精神溢れる優しい巡くんはちゃんと名前も呼んでやる。上手く口が回らないまま甘ったるく呼び交わすとまるで恋人同士みたいだった。そう思ったら吐きそうなくらい気持ち悪くて意味が分からないくらい気持ちよくなってそのまま頭が真っ白になった。腹の中がびくびくするのに伴って入っている方も精液を吐き出した気配があって、息ぴったりかよってどこかで思った。
 はー。ずるりとそれが抜けてぐったりと彼の隣に転がる。薄く微笑む彼と目が合ってピロートークみたいで嫌だったからだるい身体を起こして彼からゴムを外してやる。血統主義の名家って言っても量は別に普通だった。指を突っ込んで触れた分を舐めてみるとちゃんと普通に不味くて、悪趣味だなあって思った。見ていた鵺雲がやっぱり飲むものなの?とか言い出すので、面倒になって口を塞いでやった。ちょっとだけ自分のっぽい味もして、それもやっぱり不味かった。
20220303


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -