あいつもあいつも出てくる昔の話続き。アルネオ目立たない。

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神様がいるならそいつはひどい奴なんだろう。


10歳にも満たない、少し目付きの悪い少年は常々そう思っていた。
そして、退院してきた隣家の弟分を見てその思いはさらに大きくなった。

彼は自身の境遇を嫌い、弟分の陥った状況を嫌った。他にも嫌いなものはたくさんあった。



少年には嫌いなものが多かった。





「アルネオ」
「はい」


事故から一週間するかしないかのうちにアルネオは退院した。
退院してきたことでもう大丈夫なのかと思ったが、少し落ち着いたから退院というだけでこれからも病院通いは続けるらしい。ごめんね、よろしくねとおばさんに謝られた。何で謝られたのか分からなかった。


「そっちのアイス、一口」
「あ、はい」
「さんきゅ。…ん」
「?」
「お前もこっち一口食え。こーかん」


退院した翌日におじさんの葬儀が行われた。
親族が集まる中、家が隣だからかうちにも葬式の連絡が来た。師父は出席するみたいだったので俺も出るのかと思ったが、出るよりもアルネオと一緒にいろと言われた。結果、俺たちだけは会場に行かず後で棺が運ばれてくる墓場で師父たちと落ち合おうということで家から少し遠い墓地近くで子供同士時間を潰していた。
適当に遊んだり、もらっていた小遣いでおやつを買い食いしたりしていた。学校に行っていると遠足くらいでしかこんなことはできない。

でも、楽しめるわけないだろう。


「じぶんはいいです…」
「ああ?俺だけ食ったら不公平だろが。ちっさくてもいいから一口食えこら」
「ロンドくんはおうぼうです」
「まだ学校も行ってないのにどこでおぼえたそんなん」


泣きも笑いもしないだなんて。人形じゃないんだから、お前。


「こっちもうめーだろ」
「…はい」

謝られた意味が何となく分かった気がした。





「あ」

あいつに出会ったのはそうやって二人で墓場の近くで時間を潰していたときだった。出会ったというか、見覚えのある奴がいたからつい声をかけてしまった。
人形みたいなこいつはきっと初対面だろうが、俺は学校の行き帰りにときどきそいつを見かけたことがあったのだ。話しかけたことはないので向こうが俺を知っているかどうかは知らない。
それまでの知り合いは全員俺と同年代の頃は小学校に通っていたので、同じ年頃なのに学校に通っている様子のないそいつがちょっと物珍しくて記憶に残っていた。

そのときは時間潰しのネタが尽きて退屈だったからつい声をかけてしまったんだろう。
これがいい出会いなのか悪い出会いなのかは今でも少し迷ってしまう。



「なあお前、そこのイトマルのやつ」
「僕?なに?」
「俺、学校の行き帰りにたまにお前見かけるんだけどさ。このへんに家あんの」
「家はこの近くだけど」
「ならこのあたりで時間つぶせるところ知らねーか。し…親とかが来るまで近くで待ってなきゃなんねえの。こいつも一緒に」


説明しつつ背中のほうに何も言わずにくっついてくる幼なじみの頭を軽く叩く。
知らない奴がいると知り合いや物の影に隠れて様子をうかがうのはこいつの習性みたいなものだ。人見知りなんだろう。
声をかけられた奴はわけが分かったのか分からないのか少しだけ首を傾げた後で頷いた。

「そっちが楽しめるかどうかは分からないけど、案内だけならしようか。このあたりなら何があるかはだいたい分かるはずだ」
「マジか。心強いな」
「マジだ。ところで、名前」
「あ、俺、ロンド。こいつは…いや、名前くらい自分で言えお前。ちゃんと顔も出せ」
「………。…じ、じぶんは、アルネオです」
「ロンドとアルネオか、よろしく」


そいつは俺たちの名乗りをうんうんと頷きながら聞いてから右手を出した。

「僕はジェロウド」


差し出された手を握ると、豆やたこができていて少し驚くほどには固かった。



***
まだ続きます。


2012/09/09



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