肌にまとわりつく湿った空気を震わすだけのほんの小さな声で、蓮二くんは私に語りかける。真夜中の公園は、いつも不思議な静けさを持っていた。私は無言で、蓮二くんの胸に頭を預ける。彼のTシャツの胸元は、うっすらと汗ばんで湿っている。
「ねえ、このまま二人で駆け落ちしようか」
 私が上目づかいで囁くと、蓮二くんはふと笑って、そして首を横に振る。
「駄目だ。駆け落ちした男女は幸せにはなれないものだと相場は決まっている」
 彼はそう言って、私の髪を指で梳く。なんと不毛で、いとおしいやり取りだろう。私と彼は、どちらからともなく吸い寄せられるようにキスをした。
 こうしていると、世界には私と彼のふたりきりしかいないような錯覚におちいる。私や彼を縛るもの、例えば家族や学校や、最終的には自分の体を失くして、ひとつに溶け合ってしまえればいいのに。それができないの歯がゆさに蓮二くんの長い指をくわえると、彼はくすぐったそうにくすくすと笑った。こんな熱帯夜は、ふたりきりなのにとても寂しい。
「ねえ、私たち、溶けてしまえばひとつになれるかな」
 私がまた上目づかいで囁くと、彼は黙って額にキスを落とした。


ふたりきりだから


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