※狼男基山×吸血鬼緑川♀ いちゃいちゃ度高めです(当サイト比)







夜も更け、人々が寝静まるとそこはもう"彼ら"の世界だ。





「う……」
「、っん…」

広すぎるベッドの上で睦みあうようにして重なる男女の姿があった。まさに情事真っ最中ですと表現したいところではあるが、そうするには違和感が生じる。
少年の上に馬乗りのような体勢で座っている少女。そこまでは人間と何ら変わりないが、彼女の可愛らしい口には似つかわしくない鋭い牙。それは深々と少年の首筋に突き刺さっている。片や少年には明らかに人間のものではない耳と尾。毛の質感は狼のものに酷似していた。

「ん…ごちそうさま。」

少女が顔を離すと、おぞましいほど口まわりは血で濡れていた。ついた血を少年が手で拭ってやると、条件反射のように少女はその手を舐める。

「今回は随分持っていったね…」
「だって誰かさんがお腹すかせるようなことばっかりするから。」

血の気多いしいいでしょ、と頬を膨らませる。少年は困ったように笑った。

「リュウは特に食い意地はってるしね。」
「…だってお腹すくんだもん。」

そう言って先ほどまで牙をたてていた箇所に舌を這わせた。未だ溢れる血を舐めとり傷口を埋めるかのように丁寧に。沸々と食欲もわいてくるが一応そこは我慢した。舐めたそこに先ほどの痛々しい傷跡は影も形も残っていない。
馬乗りになったままでリュウは悪戯っ子のように微笑んだ。

「それとも何?私がヒロト以外の血を飲んでもいいの?」

そう言い終わるか終わらないかのうちに体勢が逆転し、ヒロトに組み敷かれた。冗談のつもりで言ったのにその瞳は暗い影を落としている。

「絶対ダメ。」

あまりに真剣な表情に少し戸惑う反面嬉しくもある。彼の特別だと実感できるから。

「…意外とヒロトって心狭いよね…」

そっと首に手を回す。その間に降り注ぐキスに酔いながら呟くと、呆れたようなヒロトの声。

「当たり前だろ。リュウは俺が満月の夜にほかの子を抱いても気にしないわけ?」
「するに決まってるじゃん!……やだよ。」

思わず腕に力を込めると、つまり同じことだよとまた彼は笑う。してやられたようで何か悔しい。でもヒロトがほかの子を、と考えるだけで胸のあたりがもやもやする。
リュウにとってはとある理由でヒロトだけだが、ヒロトは相手を固定する必要がないのだ。欲を吐き出せればいいのだから。
そんなリュウの気持ちを見透かすように、ヒロトは彼女の髪に口づける。

「そんな泣きそうな顔しないで。リュウが狼男の血を好むみたいに、俺だってもうリュウにしか反応しないんだから。」

普通の吸血鬼は人間の血、あるいは同族の血を求める。だというのにリュウはどうやら変わり種のようだ。初めて出会ったのは物心つく前だったが、会うやいきなり噛みつかれたことだけは鮮明に覚えている。
ヒロトもヒロトで毛色や目の色が他の狼男とは異なる変わり種なので偉そうなことは言えない。
一族のはみ出し物、と言うほどに疎まれてはいなかったものの、異なる者同士惹かれあうのは必然だったのかもしれない。

「……私だって誰でもいいわけじゃないの、ヒロトのが一番だから。」

だからまた明日もよろしくね、と可愛らしい笑顔で言う。その真意は食欲を満たすためなのかはたまた恋慕か。そんな些細なことを気にするような時間すら勿体ない。今ここに二人あるだけで満たされているのだからそれでいいのだ。

「…とりあえず次は俺の番だよね?」
「えっ、ちょ…!!待って、…あ」

突然のことに驚いたのか手足をじたばたさせてリュウは抵抗する。男は抵抗されればされるほど燃えることを知らないのだろうか。まぁそこがいいのだけど。
手足を押さえ、唇を食むようにキスを落とすとだんだん抵抗してくる力が弱まってきた。顔を見れば物欲しげに瞳を潤ませている。どこまでも可愛いのだから堪らない。
所有の証として首筋に歯形を残し、リュウから見えない耳の後ろにそっと跡も残しておいた。

「こんなの悪循環だよ…!」
「どこが?そんなやらしい表情で言われても説得力ないなぁ。」
「うう…」

恥ずかしいのか真っ赤になった顔を隠すように俯く。手は未だヒロトが押さえたままなので使いたくても使えない。

「体力使って、ヒロトの血もらって。またこんなことになって。」
「それでいいよ。俺はリュウから離れたくない。」
「ばか……っ」

悪態を紡ぐ唇をまた塞いでやる。お互いの犬歯が少し邪魔だが、舌を掬いとり絡ませる。リュウの口内は少し血の味がした。

ヒロトの一族とリュウの一族は不仲な訳ではない。むしろ良好とも言える。ただ、種族を越えた恋愛に世界は五月蝿い。いつ切り離されるかわからない不安を二人ともが抱えている。そうなるつもりは毛頭ないし、別れるつもりもないのだが。

「…夜が終わらなければいいのに。」

そう言うとリュウは違うでしょと言う。

「確かに私たちは夜行性だけどさ、胸張ってお日さまの下歩きたいな。一族のみんなとは違うし、日陰者と言えばそうなんだけど、」

ヒロトとなら歩いていける気がするから。

言って恥ずかしくなったのか、うつ伏せになって顔を隠してしまった。そんな行動も言動も全てが可愛い。可愛いとしか言えないほど可愛い。
にやりとヒロトはほくそ笑み、うつ伏せになったことであらわになったうなじを舐める。

「ひゃあ!!舐めるな、ばか!」
「リュウが可愛すぎるから仕方ない。ばっちり興奮しちゃったから責任とってね?」

老若男女問わず見惚れるような笑顔を浮かべるヒロトに対し、リュウは青ざめひきつった顔をした。

「やだってば、わ、だめ!」
「だから説得力ないって。おとなしく俺に食べられなさい。」
「っ、あっ……明日覚えてろよ……!!貧血になるまで吸ってやるから……!」
「はいはい。今はこっちに集中して。」

未だに納得のいっていない表情のリュウをねじ伏せたらあとはこっちのものだ。ヒロトは先ほどの笑みを崩さないままだったが、瞳は獰猛な気質を宿し始めていた。



甘いお菓子も苦い悪戯も、どちらが片方なんて選べない。
与えられるもの全てが欲しいだなんて欲張りだと罵られそうだが、どちらも諦められないのだから力ずくで奪うまでだ。






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設定を生かしきれなかったうえにめちゃくちゃになりました…が!30〜31日の間はフリーなのでよろしければお持ち帰りくださいませ〜


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