2010.10拍手:謙蔵






「蔵!身長何センチやった?」

今日は年に一度の身体測定。
一ヶ月も前から牛乳飲んだおかげで身長がかなり伸びとって、俺はごきげんやった。
今年も蔵に身長勝ったやろか、と着替えとる途中の蔵に身長を聞いた。

「ん?ああ、178やで」

「178!?」

「うん、178」

「えええええ嘘やろ!?」

思わず、でっかい声で叫んでしもた。
俺にとっては、それくらいショックやった。
今年も蔵より俺のほうが大きいと思いこんどったのに、その俺の期待を、蔵の返答はそれを見事に打ち砕いた。
やって、去年までは2センチも差が合ったんやで。
絶対ありえへん。

「くっそー…抜かされた…」

俺は去年、167センチやった。
蔵は165センチ。
去年、蔵の身長を聞いて散々「俺のが2センチ大きいんやで」と自慢気に言っとったのに、それが今年は逆転て、どういうこっちゃ。
13センチとか伸びすぎやろ。
やっぱ栄養バランスのええ食事しとるからやろか。

「謙也は何センチやったん?」

「177…」

「1センチだけやん」

「1センチだけでも嫌や…」

好きなやつより背が低いとかありえへんやん。
蔵に告白するとき、「俺が蔵のこと守るから付き合って」なんて言ってしもたのに。
それやのに、これじゃあかんわ。
蔵より背が低くいくせに、守れるわけあらへん。

「別に1センチくらいええやん。すぐ伸びるやろ」

「せやけど…俺のが背小さいとか、蔵は嫌やろ?」

「なんで俺が嫌やと思うん」

「やって、俺が蔵を守ったるとか言うたのに俺のが小さいとか…」

そう言うと、蔵はきょとんてした。
それから、軽く笑って頬をつねった。
ちょっと痛い。

「そないなこと気にして、あほやなぁ」

「やって…」

「俺は、背が大きくても小さくても、謙也に守ってほしいな」

クラスのやつに聞かれたらマズイから、蔵は小さな声で言った。
頬は痛かったけど、それでも俺は胸がきゅってなった。
蔵のこういうとこ、ほんま好きや。
せやから全力で守らなあかん、そう思った。
この綺麗な笑顔を、ずっと見ていられるように。
ヒリヒリと頬をつねる手さえも愛しくて、俺は自分の手を重ねた。





――――――

クラスでもひそかにいちゃつく謙蔵。
たまにはちょっとヘタレな謙也さんが書きたいのである。
白石のが生まれたの早いから、謙也にとっては余裕あるお兄さんだったらいいな^^