※原作四巻冒頭らへんの話



合宿二日目の朝



午前六時半。
アラームのやかましい音で目を覚ましたら、大変なことになっていた。

「やまだぁ〜」

「うわああああ!」

後ろから、宮村が俺の体に絡み付くようにがっちりホールドしていたのだ。
この状態、熱いし気色悪いし、しかも肩に涎がついているらしくシャツが張り付いてもう気持ち悪すぎる。
二度寝するつもりだったのに、それどころじゃない。朝から最悪の気分だ。

「起きろ宮村!」

「うーん…やまだぁ…すきだぁ…」

ダメだ、まだ夢の中だ。
どんな夢を見ているのかわからないが、余計絡み付いてきた。
虜の能力っつーもんはなんて厄介なんだ。
さっさとキスして解除したいのに、この体勢じゃできない。
そうか、寝てる隙に解除されないように後ろからしてきたのか。くそ、策士め。

「おい宮村!」

「んあ…?うーん…」

やっと目を覚ました宮村は寝ぼけた声でむにゃむにゃ言いながら頬を背中に擦ってきた。
背筋にぞわぞわとした悪寒が走り、とうとう不快感はピークに達した。

「…ああ、おはよう山田ー今日も好きだー」

「とりあえず、どけ」

「えーやだー」

「おいいいい!」

更にぎゅっと抱きついてこられて苦しい。
というより暑苦しい。
ただでさえ眠たくて機嫌が悪いのに、宮村のせいで更にイライラしてきた。
ああ、くそ、自分から虜の能力にかかりにくるなんて、何考えてんだ。
実験なら伊藤だけで十分だったのに、面倒なことしやがって。

「あれ、山田?」

「ん?」

宮村は何かに気づいたように俺の下半身を覗き込んできた。
なんだとその目線の先を追うと、股間の辺りのハーフパンツが、見事にテントを張っていた。
レム睡眠だかノンレム睡眠だかのせいでなる、アレだ。

「マジかよ…」

「朝勃ちか。元気なことで」

「うええ…」

しまった、よりによってこんなときに勃たなくてもいいだろ。
普段はそんなになったりしないのに、今日に限って朝勃ちかよ。
同じ男同士とはいえ、勃起しているのを見られるのはさすがに恥ずかしい。
早く治まれと念じてみるも、中々戻らない。
そんな様子を、背後から宮村はまじまじと見て怪しく笑うと、あろうことかパンツに手を入れてきた。

「おい!何してんだよ宮村!」

「何って、ナニ?」

「いや、いいからそういうの!」

ちょっと待て、腰の辺りになんか硬いモノがあたっている気がするが、たぶん気のせいじゃないよな。
まさか、宮村も勃ってるのか。
いや、これは俺のこれとは違うだろう。
明らかに、俺の朝勃ちを見てから勃起したものだ。
さすがにこれは洒落にならなくなってきた。
俺は身の危険を感じて、できるかぎりの抵抗を試みた。

「おい宮村!マジでやめろよ!」

「まあまあ、お前は大人しくしとけって、な」

「あ…っ!?お、い…ッ」

ついに宮村の手がちんこに達して、揉みだした。
いくら虜の能力のせいでも、男同士でこんなことして気持ち悪くないのか。
俺はもう逃げたくて仕方ないんだけど。
そもそも宮村だって女子大好きなはずなのに、俺にこんなことをして、解除されたときの反動がとんでもないことになるぞ。

「はあ…山田のちんこ熱い…」

「宮村!オマエいい加減にしろよ!」

「やだね。気持ちよくさせてやるからいいだろ?」

「よくない!大体なあ…ぅあ…!」

先端をぐりぐり擦られて、思わず声が裏返った。
抵抗したいのに、下半身の刺激のせいで力が入らない。
なんとかしてこいつをぶん殴ってでも逃げないとヤバいぞこの状況は。

「あー…だめだ、好きすぎて舐めたい」

「は!?な、なに言ってんだよ、みや…ッあ!?」

宮村はボソリと有り得ないことを呟くと、俺の首筋を舐め始めた。
変な声も出ちまうし、ますます気持ちが悪くなって身体がびくびくと震える。
まるで犬のようにペロペロと舐められ、冷や汗がどっと溢れるのを感じた。

「しょっぱいなー」

「当たり前だろ!お前のせいで汗かいてんだから!」

「いや、それがいい」

「な…ッあ、や、やめ、あ…!」

今度は耳も舐めてきた。
ぴちゃぴちゃと、耳を塞ぎたくなるようないやらしい音がすぐ耳元で聞こえてくる。
耳の穴にまで舌が入りこんでくると、息がかかるのも相まってもう完全に力が入らなくなってしまった。
ずるずると下ろされたパンツは足を拘束して更に動きがとれなくなって、もうされるがままだ。

「かんわいい声だなー、ほんと山田かわいい…」

「ちが…ぅ、ん、これ、は…」

「何が違うんだよ?ここからもなんか出てきたぜ」

「え…っ、あ、やめ、まじ、あ、あッ」

先端からトロリと溢れた液体を指に絡ませて、宮村は更に先ばかりを揉みしだく。
耳は宮村の唾液でぐちゃぐちゃだし、挙げ句の果てには顔まで舐めてきた。
マジで犬かよと思いながらも、耳元で聴こえる低い声は人間の発するもので、時々かかる荒い息も妙に艶かしい。

「みや…むら…ッ」

「なんだよ、手だけじゃ足りねえのか」

「そういう意味じゃ…って宮村!?」

宮村は起き上がり俺の身体を布団に押し付けると、股間に顔を埋めた。
この体勢は、まさか、まさか!

「ぅあ…ッ!みや、むら…っ、そんな、とこ…!」

「あー…山田のちんこうめぇ…」

「ひッ、やめ、あ、や、やめろよぉ…」

宮村の赤い舌が俺のちんこを舐め始めて、頭が沸騰しそうなくらい熱くなった。
なんだって男にこんなことされなきゃならないんだ。
恥ずかしいし気持ち悪いし、しかも宮村だし。
もう早く逃げたい。小田切とキスして解除したい。
なのに、なんで、

「あれ、またかたくなったけど」

なんでココはこんなになってんだよ。
もしかして、さっきから身体が熱いのも、背筋がゾクゾクするのも、気持ち悪いせいじゃない?
そんなことあるのかよ、男同士だぞ。
俺だって健全な男子だ。こういうのはもちろん女子にしてほしい。
でも、男の身体は正直ってことなのか、刺激を与えられたらこうやって勃つらしい。
もはや精一杯の抵抗は、宮村を見ないように顔を隠すだけだった。

「…も…やめてくれよ…」

「顔、真っ赤だぜ?かーわいー」

「クソ…も、さいあくだ…」

「俺は最高の気分だ」

そんなの知ったことか。
初めてフェラされた相手が宮村だぞ。
これを最悪以外になんて表現するんだ。
つーか、なんなんだよ、これ。
舌はざらざらしてんのに、ぬるぬるして変な感じがする。
手まで使って、そんな、両方するのは卑怯だ。

「なんだかんだで感じてるんだろ?」

「く…っ、ぁ、は、はぁ…」

「なあ、気持ちいいだろ?」

「…っ、な、わけ」

「んなわけ、あるだろ。こんなにしといて」

「あ…ッあ、う、あ…っ」

舌と手がリズムよく同時に上下するせいで、下半身の熱は治まるどころかさらに集まっていく。
やっぱり男同士だからか、どのあたりが気持ちいいのか分かってる。
舐めるときの絶妙な調整や、手の力加減に、普段使わないような筋肉に力が入る。
好き勝手に股間を弄くりまわされて、宮村の舌も熱いし、身体も熱いし、溶けてしまいそうだ。

「ん…ッ、あ、みや、あ、も…」

「でそう?いいぜ、だして」

このままだと宮村の口の中に出してしまう。
頭を引き剥がそうとするも、宮村は仕上げとばかりに激しく舐め回しながら扱いてきた。
そんなにされたら、もう、出そうだ。

「はあ、はあ、みや、ああ…、うあッ!やめ、あ、そん…っ、あっ!」

「んー?」

「あ、あッ、みやむら…っでる…から…っ、はなせよ…ッ!」

「ん…」

「あ、あ…ッでる!みやむら…!でる!…う…うああッ!」

腰が浮く程の快感と共に、俺は体内にあった白い液体を宮村の口の中に出してしまった。
慌ててティッシュを探そうと辺りを見回していると、宮村は身体を起こし、うっとりした表情で口元を拭った。

「ん…いい…山田の味がする…」

「も、もしかして、飲んじまったのか…?」

「うん。うまかったぜ」

「…マジかよ…」

信じられん、あんな臭くて不味そうなもんよく飲めたな。
虜の能力はここまで人を狂わせるのか。
まさか宮村がここまで変態になってしまうとは、恐ろしすぎる能力だ。
しかし朝から何やってんだ、と近くにあったタオルで宮村の唾液まみれの顔を拭いながらふと宮村に目をやると、股間の膨らみはまだ治まっていないようだった。

「み、宮村はいいのかよ…」

「ん?俺はいいよ。時間もねえし、後でトイレ行っとく」

可愛い声も聴けたし、と宮村はご機嫌な様子で笑っていた。
そんなわけないだろ。この状態が辛いのはよくわかる。
けど俺はどうすることもできないし、なんだかこれはこれで悪いことをしたような気分だ。

「それともなんだ。してくれるのか?」

「いや、しねえよ!ただ、すまんかったなとか、ちょっとは、気にするっつーか…」

「優しいんだな…山田マジかわいい…」

「うわあああ!抱きつくな!」

「やまだあ〜だいすきだ〜」

宮村は満足そうな顔してまた抱きついてきた。
けど、なんでかさっきよりは嫌じゃなくかった気がした。
いや、でも宮村だぞ。男だぞ。しかも虜の能力のせいで俺に惚れてるだけだ。
きっと慣れ始めて抵抗するのが面倒になったから大人しく抱きつかれてやってるだけで、本当は嫌でしょうがないんだ。
俺は自分に言い聞かせながらも、今日の補修はいつも以上に頭に入ってこないなと、もんもんと悩んだ。



――――――
2014.5.30
アニメ朝チュン宮山カットとか絶許。
宮山も山宮も可愛いですね!大好物!
これの続きを書きたいのですが山宮で書くべきか宮山で書くべきかすごく悩むなあ。
いっそ両方書きました。

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