結局、あの後も三発ほど堪能して、気づいたら空がほんのり明るくなるような時間になってしまった。
今日も午後から仕事のため、Wは衣服を整えて一旦ハートランドに帰る準備をしている。
一方、凌牙はまだ帰る気がないのか裸のままベッドでうつ伏せに寝転がっていた。

「あー…腰いてえ…ねみい…」

なんだかんだで楽しんでいたくせによく言う。
最後のほうなど、奥にくれだの中に出せだの激しくしろだの注文して煽ったのは凌牙だ。
自業自得だろう。

「後でフロントに言っておく。寝てていいぞ」

「……なんだよ、変なモンでも食ったか?」

「…どういう意味だ」

別に優しくしたつもりはない。
ただ朝帰りというには早い中途半端な時間に出歩くと、こんなフェロモンだだ漏れの気だるい顔をしていては連れ去られてもおかしくないと思っただけだ。
いくら凌牙が淫売だとしても、わけのわからない男に犯されてしまったりしたら、追い出した方も後味が悪いだろう。それだけだ。

「なら、今日は休みだし夕方までいてもいいか?」

「随分長居するな」

「夜まで暇なんだよ」

夜になったら暇でなくなる、ということはもう次の夜の相手がいるということか。
次は誰だ。ネットで知り合ったとかいう男か、学校の奴か、それともバリアンの誰かか。

「…今夜は、誰のところに行くんだよ」

「さあな。カイトはしばらくいいし、アリトかベクターじゃねえか」

まさかあのベクターにも手を出しているとは初耳だった。
ベクターが凌牙を抱くなど、想像したくもないが信じられない。
犬猿の仲だったはずなのに、ベクターもよく凌牙の誘いに乗ったものだ。
いや、むしろ日頃の恨みを晴らすいい機会だと思って聞きつけてベクターの方から誘ったのかもしれない。
しかし、散々抱いてやってさすがに三連続はないと思ったのだが、凌牙の性欲は底なしなのか。

「凌牙、お前いい加減にしたらどうだ」

「あ?」

「誰彼構わず寝て楽しいかよ」

「チッ…何回かヤッただけで彼氏面かよ。イラッとくるぜ」

今のは機嫌を悪くさせたようで、凌牙はボソリと吐き捨てた。
決して凌牙と交際したくて言った訳ではない。
そうなったらなったで面白そうだとは思うが、今さら恋人関係など無理だと思うし、お互い誰かに縛られる性質でないことは分かりきっている。
それに、相手が何人もいるのをわかったうえで愛するなど、気が狂ってしまうだろう。
だから、とっくに諦めている。
一方通行のままならば、いっそ恋愛対象としてみない方が気が楽だ。

「楽しいぜ。色んなヤツとヤるの」

だからなんだとでも言いたげに、凌牙は無表情でそう言ってDゲイザーをいじり始めた。
嘘だと、すぐにわかった。
本当は誰でもよくないはずだ。
Wは凌牙以外の誰かに重ねたことなどなかったが、凌牙は違う。
抱いている間、時折遠い目でW以外の誰かを見ていると感じることがあった。
恐らく、その先にいるのは、

「…遊馬のところには行かねえのかよ」

「…あいつのとこは………ないな」

一瞬、凌牙の顔が曇ったのを、Wは見逃さなかった。
凌牙が遊馬のことをどう思っているのか、本当のところはわからない。
だが、少なからず意識していることは明白だった。
遊馬を見るときの凌牙は、穏やかで、しかしふとした瞬間泣きそうな、そんなどうしようもない顔をしていたからだ。
眩しくて近寄れないか、寧ろ近づいてはいけないと自ら距離をとっているのだろう。
どうしてこうも歪んでしまったのだろうか。
まるで、深い海でもがき苦しんで溺れているようだ。

「…また連絡する」

「ああ」

こちらを見向きもしない凌牙を見てWは溜め息を吐くと、上着を羽織り、ホテルを後にした。



――――――
2015.5.1
ラブラブなW凌も好きなんですけど、一先ず暗い話を書いておきました。
反動でイチャラブなW凌書きたくなりますな…。

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