*荒東というより福←荒東→巻です。





くだらない遊びをしよう





最初は、ただの戯れだった。

「まき、ちゃ…」

大好きな巻ちゃんのことを考えながら、自分を押し倒すやつの頬に触れる。
これが巻ちゃんだったなら、どんなに幸せだっただろうか。
けれど、現実は残酷だ。
こいつは巻ちゃんには少しも似ていないうえ、こいつもオレと同じことを考えているのだから。

「福ちゃん…」

荒北が吐息交じりの声で俺を見つめながらフクの名前を呼ぶ。
荒北も、オレのことはフクだと思っている。
まったくおかしな話だ。
オレだってフクに似ている部分なんて何もないのに。
それでも荒北はオレにフクを重ねて何度も抱く。
本当はフクとこういうことをしたくてたまらないのだと思う。
オレもそうだ。
巻ちゃんに抱きつきたいし、キスしたいし、セックスしたい。

「ん、…まき、ちゃん…」

荒北の舌が口の中に入ってくる。
息と舌が熱くて、それだけでたまらない気分にさせられるのに、ねっとりと絡みついては、唾液を全部吸いとられるのではと思う程しつこくしてくる。
こういうキスはフクは嫌がりそうだ、とぼんやり考えながら、でも巻ちゃんはこういうキスしてきそうだななんて想像した。
すると、途端に気持ちよくなってくるから、不思議なものだ。

「っ、は、…っ」

やっと解放されて、一息つく暇もなく、突然、抱きしめられた。
潰れそうなほどに強く、強く。

「福ちゃん…福ちゃん…」

消え入りそうな、なんとも虚しい声。
けれど、荒北がフクのことをどれだけ想っているのか、感じる。
そしてそれは、決して届かないからこそなのか、とても重く、切実に聞こえた。

「荒北…」

フクは、新開のものだ。
そして巻ちゃんは、小野田を選んだ。
だから、もう、オレ達の想いは死んだのだ。
伝えることもできない。
こうして、互いを別の相手に置き換えることでしか発散できない。

「…おい、『巻ちゃん』だろうが」

「…すまん」

荒北の舌打ちが聞こえて、またキスされた。
今度は、優しく、愛しそうに。
さっきのいやらしいキスが嘘のように柔らかいキスだった。

(巻ちゃん…すきだ…)

ふわふわとした頭の中で、巻ちゃんのことだけを考える。
巻ちゃん、巻ちゃん。
オレ達は、いつまでこんなことを続けたらいいのだろうか。
あと何回繰り返せば、このくだらない遊びをやめられるのだろう。
巻ちゃん、巻ちゃん。
教えてくれないだろうか。





――――――
2013.10.30
最初クズの本懐パロやろうとしたけど上手くいかなかったので書き直した残骸です(笑)
私が書くとこんなシリアス荒東はなんか違う気もするので次は高校生らしくセクロス三昧な荒東が書きたい。

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