恋人はプレゼント





今日はクリスマス・イブ。
兄貴と義姉さんは、甥っ子にプレゼントをあげるべくサンタにならなあかん日や。

「寝た?」

「寝たんとちゃう?」

廊下でそんなやりとりしとる二人は、なんやおもろかった。
親って大変やなー、なんて思いながら、俺は自分の部屋に戻った。
明日はクリスマスやけど、部活あって朝早いし、もう寝なあかん。
たぶん明日の朝、喜ぶ甥っ子の声で起こされると思うけど。
子供って、ええなぁ。
サンタさんが来るて信じて夢見て、それでプレゼントもらえるんやから。
もう中学生の俺にはサンタなんかこおへんし、プレゼントだってない。
ええなぁ。
俺にも、サンタさんこおへんかなぁ。
そんなことを思いながら、部屋の電気を消してベッドに入った。





コンコン…

どこからか、窓を叩く音が聴こえる。
やかましいな。
夢にしちゃ、やけにリアルや。

コンコン…

もしかして、夢やない?
意識がハッキリしてきてもまだ聴こえる。
音は、ベッドのすぐ横の窓から聴こえる。
ベッドの中で寝返って窓の方をみると、カーテンの隙間から誰かおるのがみえた。
え、まさか、泥棒?
いやでも泥棒がわざわざノックするんか?
随分と礼儀正しい泥棒やな。
手を伸ばして、少しだけカーテンを開けると、その人と目が合った。

「よ!ひかる!」

軽く手をあげながらにこやかに挨拶してきた人物にびっくりして、思わずカーテンを閉めた。
嘘や、こんなん夢や。
あの人がこんなとこにおるなんて、ありえん。
え、なんでこんな夢見たん。
俺はもう一回カーテンを開けた。

「おい無視すんなや!」

やっぱりおる。
見覚えのあるテニス部の先輩が、窓の向こうのベランダに。
間違いない、金髪のアホな先輩や。

「謙也さん…?」

「おう、光!開けてくれん?」

なんでおるんや。
こんなとこまでどうやって。
わけわからん、まだ夢ん中におるんか。
とりあえず少しだけ窓を開ける。
隙間から冷たい風が入ってきて、部屋の温度が下がったのがわかった。
やっぱり、夢やない?
寒いとか、夢やったら思わんよな。
一体どっちなんや。

「中入れてや、むっちゃ寒い!」

「あ、はい」

謙也さんは窓から部屋に入ってきた。
ほんまに、本物の謙也さんや。
謙也さんそっくりの泥棒には見えへん。
どっからどうみても謙也さんや。

「なんなんすか、ほんまびっくりしましたよ」

「すまんなぁ、」

「あ、もしかして不法侵入のうえ物取りにきたんですか」

「光が部屋に入れてくれたんやから不法侵入やないやろ!」

「凍死されたらいろいろ困るから入れただけっすわ。あとうるさいんで声のボリューム下げてもらえます?」

「ひ、ひどい…」

この反応、やけにリアルや。
やっぱ夢やないんかな。
ベッドに二人、座ったとかろで、俺は謙也さんに問い詰める。

「謙也さん、もしかして、そこの木登ってベランダに来ました?」

「おん」

ってことはいつ泥棒に入られてもおかしくないっちゅーことやん、危な。
にしてもほんまこの人泥棒みたいやな、通報したろか。

「で、あんたこんな時間に何しにきたんですか」

「あんな、光にプレゼント届けに来たんや」

「プレゼント?」

「せや!プレゼントは謙也さんや!」

「………へぇ」

恋人はサンタクロースやなくて、恋人はプレゼントってか。
くだらん、むっちゃ謙也さんがやりそうなことや。

「ちょっ!なんやその反応!」

「え、普通の反応やと思いますけど。てか通報してええですか?」

「ひどいひどい!」

恐ろしいくらい通常運転な謙也さんや。
間違いなく夢やないな。
夢やったらきっともっとカッコええ謙也さんが出てくると思うし。

「…そういえば、夜ってあんま会ったことないなぁ」

「ああ、そうですね。こんな時間に会うの、初めてやないですか」

言われてみれば、そうかもしれへん。
いつも部活休みの日に会っても、夕飯食べに行く金もないから七時には帰っとる。
なんか、新鮮やな。

「光、」

「はい?」

名前を呼ばれて謙也さんの方を向くと、顔が近くにあって目が合う。
静まり返った部屋でそうなったら、することは一つ。
目を瞑ると、謙也さんと唇同士が繋がった。
軽くキスして、またもう一回キスする。
深くキスしようと舌を出したら、謙也さんは俺の肩を掴んできた。

「なんですか、」

「いや、ちょっとこれ以上は…うん…はは」

むっちゃ目が泳いどる。
なんやろと思って下半身に目をやったら、それはもう立派にできあがっとって、謙也さんの言いたいことを理解した。

「……まさか、したくなりました?」

「いやぁ、うーん……、はい」

とんだエロサンタやな。
どのタイミングで盛ったんや。
いまだに謙也さんの性欲スイッチ入るタイミングはよおわからんわ。

「あんた、ほんまに何しにきたんすか…」

「すんません…」

性欲旺盛にもほどがあるやろ。
最後にしたのって、確かそんな前やなかった気がするんやけど。
でもこうなったら、生殺しにするんも可哀想やし。

「はぁ…まあしゃあないっすね」

「へ?」

「……ええですよ、しましょ」

「ええの!?」

「やから声大きい」

「あ、すまん」

バレたら言い訳でけへんのやから静かにしてもらわな。
ってことは、俺も声出したらあかんっちゅーことやな。
そういうの、いかにも謙也さん好きそうや。

「ひかる…」

「…ん…」

キスされて、ベッドに押し倒される。
時間を気にしとるんか、謙也さんは上も触らず直接下に手を入れてきた。

「け、けんやさん…」

「…あ、ごめん…早いよな」

「や、そんなことないですけど……っん、」

ふと時計を見ると、三時半すぎを指しとった。
やばい、もうすぐ四時になってまう。
ゆっくりしとる場合やないと思って自分から下を脱ぐと、謙也さんは珍しいもんみた顔をした。

「光もスイッチ入ったん?」

「はよしんと朝になってまうから…」

「あ、ほんまや」

お互い時計を見る。
謙也さんはちょっと急ぎ気味で俺のを触り始めた。

「っん…、ッ、っ」

「光の、ちゃんと勃ってきたで」

「んぅ…っ、ッぅ」

声を出せない状態に、身体が強ばって震える。
何しとるんかよくみえへんけど、とりあえず触られて下半身が反応しとるのはわかる。
それにつられて、やらしい気分になってきとるのも。

「はっ、ぁ…」

謙也さんの唾液がつけられたんか、くちゃくちゃって卑猥な音と、俺の息と小さい喘ぎ声が部屋の温度を高めてく。
こんな時間に親のおるとこでイケナイことしとるなんて。
みつかったらどないしよ。
隠れても、この熱気に満ちた部屋はどう言い訳すれば。
とにかく、はよせなあかん。

「謙也さん…、も…いれて…」

「えっ、ええん?まだ指も入れてへんのに」

「大丈夫ですよ。この間したばっかやから、そんなキツくないと思います」

そ、そっか…て言いながら、謙也さんも服を脱いだ。
遠慮しながらもやる気十分って感じやな。

「ほんまに、ええん?」

「時間、なくなりますよ」

「せ、せやな…」

足を折り畳んで誘うように今から結合する部分をみせると、謙也さんが生唾を飲み込んだ。
普段、こんな恥ずかしいことせぇへんけど、今日は真っ暗で恥ずかしくないから特別や。

「いくで…」

「…っん、う!っ、は、」

謙也さんのが押し込むように入ってくる。
さすがに慣らしてへんそこはキツくて、ぎちぎち悲鳴あげとる。
ちょっとずつ入って、時間をかけながら全部埋まってく。

「ひかる、大丈夫か?」

「は、い…、いっ…、ぅ」

「ごめんな…痛いよな…」

「だっ、大丈夫です…っ」

ぎゅっと腕を掴んで、謙也さんのに慣れるまで少し待つ。
しばらくして痛いのがやわらいだとこで謙也さんのをきゅっと締めつければ、それを合図に足を持ち上げられた。

「動いてええ?」

無言で頷くと、謙也さんは俺のでこにキスして動き始めた。

「ひぅ…っ、あ、あッ」

「声、あかんて…」

「ぁっ、…ッ、ぅ、」

さっきまで謙也さんに声うるさいて言うてたのに、すっかり逆転してしもた。
声、我慢するのって結構辛いんやな。
息もあがってくるし。

「っはぁ、ぁ、っ、ふぁ、」

「光…むっちゃええ…」

「ん、ぅぅ…、ん、ん…」

謙也さんが覆い被さってきて肌がぴったりくっつくと、深くキスをする。
舌を動かすどころか息をするのもやっとの状態やけど、あったかい。
俺は謙也さんの首に思いっきり抱きついた。

「ひか、」

「けんやさん…すき…」

そう言うたら、一回だけ、謙也さんが鼻を啜る音が聴こえて、強く抱きしめられた。

「けんやさん…?…あ!や、ああッ!ああぁあ…ッ!」

いきなり、その体勢のまま腰が浮いてまうほど揺さぶられたら、思いっきり大きい声が出てしもた。
一回声出してしもたら、また我慢しようと思っても無理で、結局いつもどおりされるがまま喘いでまう。
あかん、こんなんされたら気持ちよすぎてやばい。

「や、ややっ、けんやさ、ああ…ッ!こ、こえ…っ、あっああ!」

「っ、しゃあないなぁ…バレたらどないしよ…」

「ん、ぅ、ふああ!あ、ひっ、んあ、あぁッ」

なら止めてくれたらええのに止められへんのは、気持ちいいからやろな。
俺も謙也さんがいつもより近くてむっちゃ気持ちいい。
こないに密着しながらするの、たぶん初めてやと思う。
謙也さんの息づかいとか、鼓動とか、いっぱい謙也さんを感じる。
あったかくて、きもちよくて。

「けんや、さん…っ、い、…っく…も、イッちゃう…ああっ」

「ん、イッてええよ…俺も、中でイクな」

「ふあ、あぁん、ッ、あっ」

謙也さんはベッドの近くにあったティッシュを数枚とると、俺のに被せてきた。
それから、空いた手で俺の肩をぎゅっと掴んだ。

「けんやさぁ…っ!あか、イク!イッちゃうぅ…っ」

「ん…っ、俺もっ、…あっ、」

「イク…っ、い、ぁあ…っ、あッああぁ……!」

掠れた声で喘ぎながら絶頂に達し、謙也さんのも中に出されて満たされる。

「むっちゃよかった…」

謙也さんのが抜かれると、体の距離が遠くなる。
さっきまで密着しとったせいか寒いし、寂しい。

「けんやさん…」

「ん?わっ」

ティッシュをゴミ箱に投げた謙也さんの腕を引き腕枕してもらう。
向かい合わせなら、さっきと同じくらい近くにおれる。
息を整えながら謙也さんに頭を撫でられると妙に落ち着いて、つい甘えたくなった俺は謙也さんの肩に擦りよった。

「なんや今日は甘えたやなぁ」

「…そう、ですか…?」

息を整え終わると同時に、疲れて眠気が襲いかかってきた。

「光、好きや」

「…うん、知っとる…」

「はは、そか…でも言わせてや。…好きや」

眠る直前に聞いたのはそんな言葉やった。
俺も、むっちゃ好き。
直接声にして返せず、夢と現実の間で思った。
ほんまはクリスマス一緒に過ごせて、嬉しかった。
こうやって二人でクリスマスを迎えることができて、ほんまによかった。
大好きや。
きっと、謙也さんもさっき同じこと思ったんとちゃうやろか。
ちょっとだけ、俺も泣きそうになった。





次の日。

「サンタさんきたー!」

甥っ子のカン高い声が廊下から聞こえてきて、目が覚めた。
どうやら兄貴たちはサンタの使命を果たしたらしい。
ほんま毎年ごくろうさんや。
ふと時計をみると、そろそろ部活行く用意せなあかん時間やった。
謙也さんも起こさなあかんな。
そう思って隣をみると、

「謙也さん…?」

つい数時間前まで隣で一緒寝とった謙也さんがおらん。
しかも裸で寝たはずの俺は、下着どころかスウェットまで着とるのに気づいた。
ああ、結局夢やったんか。
ハッキリ覚えとる夢なんて久しぶりにみたな。
ってことは窓も閉まっとるかな。
手を伸ばして窓の端に触れる。

「あれ、」

開いた。
閉めて寝たはずやのに、窓の鍵が開いとる。
じゃあやっぱり、あれは夢やなかったんか?
でも服着た覚えないし。

「…っ!?」

体を起こすと、下半身に痛みが走る。
股関節も痛いし、おまけに寝違えたんか首も痛い。
どういうことやろ。

「ひかるー!サンタさんがこれくれたー!」

考えとると、甥っ子がおもちゃを見せびらかしに俺の部屋に飛び込んできた。
ええやろーって、戦隊ものの変身ベルトをもって自慢気にニコニコしとる。

「なーなー、ひかるんとこにはサンタさんきたん?」

サンタさん?
ああ、きたな。
とんだエロサンタやったけど。

「おん、きたで」

「ほんま!?ひかるはなにもらったん?」

「ん?ないしょや」

「ええー!?」

今年のクリスマスプレゼントは、謙也さんやった。
サンタも謙也さんやった。
その謙也さんに、今から会いに行く。
きっと眠そうにあくびしまくっとる謙也さんに。
ちゃんと現実の謙也さんに「好きや」って言うために。










――――――
2011.12.25
去年保存失敗してデータなくなって書き直して、それもデータなくなってまた書き直してようやくアップできました。
1年越しですが、アップできてよかったです^^笑


表紙