よし、とりあえず千歳の煎餅をいただいたろか。

「千歳、その煎餅をよこせ!」

「へ?」

「あ、間違えた。トリックオアトリートや!」

「…ああ…そういえば去年もらったとね。はい、あげる」

一瞬きょとんとして、千歳はあっさり煎餅を二袋くれた。
やった。まずは千歳から回収完了や。
にしてもあっさりやったな。
こんなことなら去年、11月1日にもらえばよかったわ。

「ところで謙也はなんも持ってきとらんと?」

「え…っ」

「トリックオアトリートばい」

にっこり笑うと千歳は、煎餅を食べとる俺に手を差し出してきた。

「そんなんあるわけないやろ、去年あげたのに何ももらっとらんのやから」

「ふぅん…なんもなかと?」

「なんもないで」

「……なら、イタズラされても文句言えなか」

「へ?」

「ちょっとおいで」

ぐいっと手を引かれて、なにがなんだかよおわからんうちに部室裏に連れてこられた。
人気のないここは日当たりも悪くて暗い。

「なんやねん、こんなとこつれてきて」

「なにって、イタズラ?」

「はぁ?」

「部室だと人来るばい。やけんお外でごめんね」

言っとる意味がわからん。
外で申し訳ない理由も、人が来たらマズイ理由も、なんでそれがだめなんや。

「ハロウィンって仮装とかするとね?」

「うん、まあ…」

「なら俺は今から吸血鬼ばい」

「へっ?あ!ちょ、なん…っ」

いきなり首筋に噛みつかれたかと思えば、ぺろって舐められた。
鼻息も少しかかって、くすぐったいのとはちょっと違う感覚が背骨に走った。

「…ふ、あ…っ、」

「むぞらしかねー」

「や…っ、いき…、が…っ」

「ああ、これがよかと?」

「ひあ!?っあ、あ…、」

フーッと耳穴に息が思いっきりかかる。
気持ち悪い、はずなのに、なんでこんな声が出たんや。
そんな自分のことがわからん。

「も…っ、やめえや!それは仮装とは言わん!やなくて、な、何しとるんや自分!」

「なにって、イタズラばい」

「は?なんで俺がそんなことされなあかんのや」

「だって謙也、お菓子持ってきとらんばい」

「そうやけど去年あげたやん!」

「はいはい、気にしない気にしない」

「気にす…っ、あ!ひゃうぅ…ッ」

今度は耳に噛みつかれて、肩がびくびくした。
顔が熱くなってくのがわかってますます恥ずかしくなって、俺はもう目をぎゅっと閉じててまいそうになったところで、千歳はさらに追い討ちをかけてきた。

「謙也のここ、反応しとると」

「っ、な、あ、」

「やーらし」

確認せざるを得ないことを言われて撫でられたそこを見ると、不思議なことにしっかり膨らんどった。
うそやろ、こんなんなんかの間違いや。
千歳に耳噛まれたくらいで反応して、俺の身体やないみたいや。

「ちゃーんと抜いてあげんとね」

「や、やめ、」

抵抗したいのに、いつのまにか俺は壁に追い詰められとって逃げ場もない。
ちゅーか、今のコイツから逃げられる気がせえへん。
ベルトが外されて、チャックが下ろされる。
ずるずるズボンを下ろされれば、俺のが出されて、思わず目を逸らした。
千歳はそんな俺をニヤニヤ見ながら下半身に視線を落としていって、まじまじとそれを見とる。

「や、見んな…っ」

「あれ、合宿で何回か見たことあるとよ?」

「あるけど…っ、こんなとこで…」

「ああ、外ではなかね」

それだけやなくて、勃っとるのなんて他の人に見られるのは初めてで、恥ずかしくて死んでしまいそうやった。
おまけに部室に誰か来たんか、話し声が聞こえる。
見つかったらどうしよう。
もういやや、泣きそう。

「涙ぐんで、ほなこつむぞらしかねー。じゃあ気持ちよくさせたげるね」

「えっ、あ!いやや!やっ、なにする気や!」

「なにって、気持ちいいこと」

「や、なに…っ、あ、あっ、や、あ」

信じられんことに、千歳は俺のを握って扱きだした。
くちゃくちゃって音が聞こえてきて、我慢汁がいっぱい出とるのが嫌でもわかる。
耳を塞ぎたいけど、俺と体格差のある千歳の体をどかすことに精一杯でそんなことまで出来るほど余力もあらへんかった。

「や、やだっ!やめてやぁ…」

「嫌がられると興奮すっと…」

「〜〜ッ!や、あぁッ、ん、やや…ぁ…」

じゃあどうすればええねん。
そんなツッコミは千歳に届かず、されるがまま千歳の手に扱かれる。
せめて嫌やって口にすることしかでけへんのに、それすら興奮するなんて言われて。

「俺のも一緒にしてよか?」

「ふぇ…?」

「我慢できんばい」

千歳は自分のを取り出すと、俺のにぴったり合わせてきた。
勃っとるのなんて初めて見たけど、比較対称が俺のって理由を抜きにしてもでかい。
なんだか自分のが粗末に見えて恥ずかしくて目を逸らした。

「どげんしたと?」

「っなんでも、ない…」

「…ふーん、びっくりした?」

「べつに、ぁ、や…っ」

二本一緒にされると、俺のと千歳のが擦れあっとるのが気持ちいような恥ずかしいようなやらしい感じがして、そのうちなんも考えられんようになった。
くちゃくちゃ、部室裏にやらしい音が響く。
俺の後ろでは壁一枚を隔てて部員の声。
こんなん、恥ずかしいし嫌や。
でも身体は正直で、どっかで気持ちいいと思っとるんやろか、だんだん込み上げてくる射精感がそれを実感させる。

「あ、やっ、ちょ、まってや…っ」

「なんね、出そう?」

「ひ、あ…っ、や、やめ、」

「もうちょっと我慢してね」

少し動きをゆっくりにされたら、波が引いて、ちょっと強くされてまた出そうになったらゆっくりされる。
そっから、それの繰り返しやった。
じれったいのが苦しくて、涙がぼろぼろ零れる。
そのうちゆっくりされてもイキそうになったところで、俺はもうイキたくて志方なくなって千歳に身を委ねることにした。

「も、むり…っ」

「俺も、もう無理かもしれんばい」

「あ、いや、や、あ…ッ」

こいつに弄られてイクのが恥ずかしいとかちょっとはあるけど、そんなことより早く出したい。
中途半端な状態で部活に出る方がよっぽど辛い。
イキたい、出したい、もう早く。

「ちと…せ…っ、あ、も、イク…っ」

「ん、よかとよ、」

「ふあ、あ…っあぁ…!」

やっとの思いで射精すると、千歳も一緒にイッて、千歳の手やら地面やらが二人分の白い液体でどろどろになった。
余韻が終わって荒い息を整えると、すぐにやらかしたっちゅー後悔と恥ずかしさがやってきた。

「もー…なんやねん、お前…」

「はー気持ちよかったばい」

「…やなくて!なんでこんなこと…」

「なんでって、なんでだったけ?」

(こいつ…!)

なんでって、俺がお菓子持ってこんかったからやけど、それでなんでこんなことになったのかは俺もわからん。
とりあえずわかったんは、来年からこいつにハロウィンのお菓子を要求してはいけないっちゅーことやった。















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2011.10.31
恥ずかしくて泣いちゃう、な通常運転千歳ルートでした!
ちなみに誰にお菓子くれって言っても謙也さんはこうなるんですけど(笑)


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