ちと蔵短文3



紫陽花みたいなひと



千歳は、すぐ心変わりする。
付き合った女の子なんて何人いたかわからないし、セフレだってきっと山ほどいる。
こいつのせいで、何人の女の子が影で泣いているのだろう。
しかも本人に悪意はないから余計にタチが悪い。
来るもの拒まず、去るもの追わず。
まさにその言葉がぴったり当てはまる。

「白石、」

それでも俺は、少し荒い吐息混じりに名前を呼ぶこの声が好きだ。
こんな最低な男でも、その瞬間だけは真っ直ぐ俺だけを見ているとわかるから。
そして、貪るように掻き乱してくるこの行為もまた然り。
俺は本当にこの男が好きだった。

「あ、はぁ、ちと、せ…っ」

「白石ん中、よかとよ…」

「んっ、あ!」

男相手なんて初めてだったのに、今じゃもうすっかり気持ちよくなってしまった千歳とのセックス。
荒くて激しくて、あっという間に終わってしまう、女相手にできないような抱き方をされるけれど、別にそれは嫌いではなかった。
単純に、それは独占欲からだと思う。

「あ…っ、や、あっ」

「白石、好いとうよ…」

「んっ、おれ、も…、あッあッ」

何回キスしても、何回身体を重ねても、本当の意味での「好き」は手に入らないのに独占しようなんて馬鹿げている。
俺だけが違う抱き方をされるのが嬉しい、間違いなく身体がそう感じていることが悔しい。

「白石…なかで、よかと…?」

「ん…ええ、よ…っ、あ、あっ」

「…ッ」

「あ!あぁあっ!」

終わらないで、まだこうしていたい。
イッた瞬間、脳内の片隅でそう言うのが聴こえた。



「にしても白石はよく俺についてくるとね?俺なら無理たい」

「ああ…せやなあ…」

期待させて、落として、悪意のない傷つけ方をする千歳に、自分でもよくついていけるなと思う。
けれど、何人もの女の子を相手にしていても結局俺のところに戻ってきて、俺が付け入る隙を与えてくれているから。
今はそれでいい。
それだけで満足だ。
でも、もし、もしその隙が埋まってしまったら。

「……千歳が好き」

いやだ。
そんなのいやだ。
だからどうか、離れないで。
捨てないで。
心変わりしないで。
そんな意味を込めた俺の言葉を聞いた千歳は、ふふ、と笑うと頬を撫でてきた。
俺はその温かい手にすりよって、いつ離れるかもわからない体温を、身体に染み込ませるように感じていた。



――――――

千歳のことがすっごい好きな白石。
にしても私はどんだけ浮気性の千歳×救われない白石が好きなのか(笑)
すいませんめっちゃ好きですごめんね白石!笑
そのうちラブラブなちと蔵も書いてあげたいです。