夢を見た。
恋人が、謙也がいなくなる夢。





現の君は、





「あ、おはよ」

目が覚めて一番に視界に入ってきたのは謙也だった。
あれ、謙也を家につれてきて一緒にベッドでごろごろして、それからどうしただろうか。
記憶がない、ということは。

「もしかして、寝とったと?」

「おん、爆睡しとったで」

しまった、と思う前に、俺は安堵のため息をついて謙也を抱きしめた。

「ち、千歳?」

「よかったばい、謙也…」

「は?」

うろたえる謙也を、ひたすらぎゅうぎゅう抱きしめた。
よかった、あれは夢だった。
これは夢じゃない。
本物の謙也はいなくなっていなかった。
つい感動して涙ぐんでしまいそうになるのを必死に抑える。

「どないしたん?」

「…謙也がおらんくなる夢、見とったばい」

「え!?」

「もうバイバイや、て言ってどっか行ってしまったと…」

「ええ…?」

謙也がそんなこと言うわけない。
けれどあり得ない話じゃない。
そんな中途半端にリアルな夢だったから、余計に心配になってしまった。

「俺は千歳から離れたりせんよ」

「うん、わかっとるばい…」

「よしよし…」

子どもをあやすみたいに頭を撫でてくれる謙也は、夢の中の冷たい目をした謙也とは正反対に優しかった。

「謙也、」

「ん?……ん…」

顔を上げて自然と目が合って、そのまま自然の流れでキスをした。
一度離れてまたキスをして、今度は舌を入れて深く絡める。
謙也の舌はそれに応えるように、ぎこちない動きをする。
それが可愛くて、もう呼吸をする暇も与えないほど長くキスしてしまう。

「んっ、ちょ、ちとせ…っ」

「んー…」

「息、させ、んん…」

謙也は鼻で息をする余裕がないみたいで、わずかな間を縫って浅い呼吸をする。
それでも拒んだりはせず、それどころか必死にしがみついて離さない。
可愛い、本当に可愛い。
可愛くて仕方がないんだ。

「謙也、我慢できなか…」

「へ?なに、が…、えっ」

下半身にあたる固いものに気づいたのか、一気に謙也の顔が真っ赤に染まる。
こんなにも可愛らしいところを見せられては、つい下半身が反応してしまうというものだ。
生理現象、というより可愛すぎる謙也が悪い。

「してもよか…?」

「う…、わ、わかった…好きに、してや」

視線が泳いで動揺しているのがわかったけれど、謙也の目を真っ直ぐ捉えて逃がさないようにすれば、あっさりと了承してくれた。
謙也は押しに弱いところがあるから。
俺はさっそくまたキスをしてシャツに手を入れた。





「っあ、や、ああ…っ」

ギシギシとベッドが悲鳴をあげる中、足を広げた状態の謙也と、下半身で繋がっている。

「謙也、キツか…?」

「だい、じょうぶ…、あっ!いっ、ひああ…っ!」

「無理はよくなかとよ…」

「むり、してな…っ、ひあっ」

男の身体は正直だ。
謙也の性器は少し萎えてきているから、それが嘘だというのはすぐにわかった。
いくら解したといっても、本来このような使い方をしないところだから、謙也にとっては相当な負担だと思う。
俺は謙也に無理させてまで気持ちよくなろうなどと思っていない。
どちらも気持ちよくなければ、こんな行為は無意味だから。

「ごめんね、苦しかったばいね…」

「だいじょうぶ、や…っ」

「謙也、」

「おれ、は…っ、ちとせが、よか、たら…それでええ…から…」

優しいな、謙也は。
謙也は我慢してばかりだから、もっとわがままになっていいと思う。
でもそれができないから、こうして無理をしないように導いてあげなければいけない。

「だーめ。一緒に気持ちよくならんと」

「あっ!やあ、あっ、ああ…!」

謙也の性器を軽く掴んで、上下に動かせば、気持ちよさそうな声が聞こえてきた。
本当に男の身体は正直で、だんだん固くなってくれば感じてくれているのがわかる。
それにほっとしつつ、動かす手と打ち付ける腰は止めない。

「謙也、気持ちよかと?」

「ふあっ、きもち、い…っ」

「それはよかったばい」

「ちと、せ、は…っ?」

「よかとよ…よすぎなぐらいばい」

「よか、た…、あっ、ああっ!」

中がキツくなってきて、謙也の限界が近いことがわかる。
そうなると、連動して俺も締め付けに射精してしまいそうになる。

「謙也…抜くばい…」

「ん…なか、で、ええよ…っ」

「えっ、ばってん中だとお腹…」

「ええから…っ、なか、でっ、ふあっ、ああっ」

「っあ…、けんや…!」

「あっ、あっああ…あぁああ…」

謙也が達した瞬間いきなり締め付けが強くなって、抜こうと思ったのに中に全部出してしまった。
慌てて引き抜いて、ティッシュでそこを拭き取る。

「す、すまんばい…っ」

「ええよ、」

「ばってん…」

「俺がええって言うたんやから、な」

笑って言ってくれるけど、ほんの少しだけ罪悪感が残る。
お腹を痛めてしまったらどうしよう。
俺のせいで辛そうにしている謙也なんて、可哀想で見ていられない。

「なして、あぎゃん珍しかこつ言ったと?」

そう聞けば、謙也は少しだけ考えて、うつむきながら照れた様子で答えた。

「離れたら、千歳がまた不安になるかもって思って…」

それから、とさらに顔を真っ赤にして付け足した。

「千歳と離れるの、イヤやったから…」

静かな部屋だから聞こえた、消え入りそうに小さな声。
俺はそれを一字一句聞き逃さなかった。
そんなことを言われたら、また鼻がつんとして泣きそうになってしまう。
夢の謙也は離れていってしまったけれど、現実の謙也はこうしてそばにいてくれる。
それが嬉しくてもう離したくなくなって、今度は優しく包み込むように謙也の身体を引き寄せた。















――――――
2011.5.11
久しぶりの甘エロ!
テーマはKMT(謙也マジ天使)です(笑)


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