2011.3拍手:ちと光 ぽかぽかと暖かい陽射しの中、千歳先輩は猫みたいに布団で寝とる。 今日はあったかいから一緒にごろごろしようって言われて千歳先輩ん家来て布団に入ったのはええけど、千歳先輩はさっさと寝てしもた。 ほったらかしにされた俺はそんな千歳先輩の寝顔を見とるだけ。 「せんぱーい」 小声で呼んでもすやすや寝息たてて、熟睡って感じや。 ちゅーか、恋人が家に来とるのに一緒に寝るってどうなん。 同じベッドにおるのに、やらしいこと一つせんなんて。 大体、せっかくの二人の時間を寝て過ごすとか勿体ないやんか。 「せーんぱーい…」 「ん…」 「わ…っ、」 千歳先輩の腕が俺の身体を包み込んだ。 鼓動が聴こえる。寝息が髪にかかってくすぐったい。千歳先輩のにおいがする。 こんなん近い、近すぎる。 あかん、近すぎて恥ずかしくてなんやドキドキする。 「ん、光くん…?」 「あ、先輩…起きたんですか?」 「うん…」 よっしゃ、ええタイミングで起きてくれた。 せめてケータイを鞄から取ろうと布団から出ようとしたら、千歳先輩はちょっと寝ぼけた顔で笑って俺の体を引き寄せた。 「な、なんすか」 「光くん、せからしか…」 「え、何がですか?」 「心臓の音」 「え…」 「目が覚めてしもたばい」 そんなにうるさかったんや。 目が覚めるほどってどんだけやねん…! ますます恥ずかしくなって、俺は千歳先輩の腕から離れた。 「光くん?なして離れると?」 「ちょ…!なんなんすか!」 せっかく離れたのにまた抱きしめてきた。 うわ、顔が赤くなる感覚がわかる。 さっきよりドキドキしてきてしもたんとちゃうか 「光くん、まだドキドキしちょるよ?なして?」 「な、なんでもええやないですか」 「なんでもよくなか、教えて?」 「う、うるさいっすわ!!」 「うるさいのは光くんのドキドキばい」 「〜〜〜ッ!!」 「はは、顔真っ赤ばい。むぞらしかね…いたっ!」 調子に乗った千歳先輩にイラッてきたから、モジャ毛頭を叩いてやった。 なんでこんななっとるかなんて、わかるやろ。 「光くんひどかぁ〜…」 「千歳先輩のアホ!」 やっと構ってもらえて嬉しいとか、先輩の腕の中が心地ええとか、もっと触ってほしくなったとか、そんなん口が裂けても言えへん。 けど俺の彼氏やったらそれくらいわかれや! そう思ったら、またさらにドキドキは悪化したのやった。 ―――――― 意外と光より一枚上手な千歳先輩が好きです。 で、そんな千歳先輩に振り回されて胸キュンしてる光も好き。 |