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「あかん、終わらんわ…」

書類に目を通して、スケジュールに予定を書き込む。
部活中だというのに練習をせずに部長の仕事をしなければならないほど、俺は書類を溜め込んでしまっていた。
早く片付けて練習したい。

「無理やろ、この量…」

まだ何枚も紙の束がある。
もう明日にしようか、でも今やってしまいたい。
家でやるのもいいけれど、もうすぐテストだから勉強もしたい。
どうしようか。

「白石?」

突然名前を呼ばれて後ろを振り返る。

「千歳、いつの間に」

「さっきからずっとおったばい」

集中していたせいで、部室にこっそり入ってきた千歳に気づかなかった。
千歳は俺の後ろから机を覗き込んだ。

「部長さんは忙しかねぇ」

「なんや、冷やかしか」

「ううん、白石の顔がみたかっただけばい」

怒った顔でもみにきたのかと言いたくなってしまうほどのイラつく笑顔。
なんだこいつは。
俺の顔がみたいからサボって来るなど、先輩としてどうなんだ。

「あ、そ。みれて満足やろ。はよ練習戻りや」

「そげんこつ言われても…顔みにきたって、そういうすました顔みにきたわけじゃなかとね」

「はぁ?ならどういう顔みにきたん?」

「こういう顔」

「なに…、あ…っ」

嫌な笑みを浮かべたかと思えば、千歳は俺の耳に息を吹きかけてきた。
背筋がぞくぞくするのと同時に、肩がびくっと反応して持っていたシャーペンが床に落ちてしまった。

「な…っ、なんやねん」

「はは、白石はほなこついい反応するばいね」

「な…っ、」

「顔真っ赤ばい」

「や、やかましいわ。練習戻らんとメニュー追加するで」

シャーペンを落としてしまうほど反応してしまった自分が恥ずかしくて、俺は千歳と目線を合わせないよう回転式の椅子をくるりと回して机に向かった。
部室だというのにこんなことをされて、千歳の思い通りに反応を返してしまうのが悔しくて仕方ない。
早く出ていってほしい。

「も、はよ出てきや」

「えー…白石とやらしかこつしたかぁ」

「ふざけるなや、はよ出てけ言うとるやろ」

「……しょんなかね」

ふぅ、とため息をついた千歳は、シャーペンを拾って机の上に置いた。
何かされるのではないかと、俺の左後ろから伸びてくる手に怯えてしまう。
机の上にシャーペンを置いた左手がゆっくりと引いていってひと安心できたのは、一秒たったかたたないか、それくらいだった。
千歳の手が、俺の顎を持ち上げて椅子ごと反転してきたからだ。
それと同時に千歳の顔が目の前に現れ、唇同士が触れあった。

「ん…っ!?」

かぶりつくように唇全体を食べられて、一度離れる。
その直後また今度は舌が入り込んできて息ができなくなる。
千歳の唾液が喉に注がれて俺のと混じり合って、粘膜で千歳を感じてしまう。
力が抜けていく。
それでも、流されてはいけない。
千歳の唇から離れて、思いっきり突き放した。

「あかん…!やめえや!」

「…なして?」

「ここどこやと思っとるん…」

「部室?」

だからいけないと言っているのに、そんなのお構い無しに千歳は正面から俺にもたれるように被さってきた。

「ちょっ、部活中に何盛っとんねん!」

「俺はえっちな部長さんがみたか、触らして」

「あかん…っ、や、いやや…!」

千歳の身体を退かそうと思っても、どうにもならない力の差。
まるで猫を撫でるかのように顎の下をくすぐられ、悔しいけれどすでに開発された身体はそれに反応してしまう。

「はぁ、あ…や、やぁ…」

「やらしか顔…」

「や、ちが…ぁ…あ、」

やらしいのは千歳の手つきだ。
指先と固い爪がうなじをするすると這って、身体が痙攣してしまう。
更に息まで吹きかけられては、もう呼吸困難になりそうなほど息が上がってしまう。

「もうすぐ部活終わるけんね、上だけにしとくばい」

「あ、あか…ひゃ…っ、」

ユニフォームの上から確実に乳首を、親指と人差し指が摘まんでくる。
耳と首を弄られて敏感になった俺は、思わず高い声を出してしまった。

「あれ、乳首コリコリしちょるよ」

「いや、やぁ…あ、あ、」

布に擦れて痒いような痛いような感覚。
けれど、確実に快感だけは感じているかのように身体が震える。

「ちと、せ…や、あ…」

「なんね?」

「いや、や…、も…やめ…」

「ああ、直接がよかと?」

「や、ちがっ、ああ…っ」

滑り込むようにして、ユニフォームの下から温かい手が侵入してくる。
指がくにくに動いて弄ぶように乳首を攻め立てる。
そのせいで腰の力が抜けて、もうずるずると落ちていってしまう。

「ん、ぁあ…、あ、あっ」

「あーあ、やらしか部長さんばい…ちんちんも固くなっちょる」

「ひぁ、あ…あ、」

腿を擦り合わせて膨らんだ股間を隠しても、布に擦れた刺激で余計に膨らみを増してしまう。
恥ずかしい、こんなに反応しているなんて。

「ばってん、部活中やけん下はお預けね」

「…ぅ、あ…」

「辛か?」

「あ…、ややッ、あ…っいや、やぁ…!」

乳首を親指で強くぐりぐり触られてしまえば、正直もうつらくて仕方ない。
はち切れそうなほど膨らんでいるし、先走りが出ているのか下着が湿っぽくて気持ち悪い。
けれどここで頷けばこいつの思い通りだ。
精一杯首を振ってやれば、千歳はニヤリと笑ってシャツを上まで捲った。

「白石、声うるさか。くわえて」

「う、ぐ…っ」

シャツの端を無理やりくわえされられて、自ら上半身をさらけ出すという行為に興奮しているのか、股間が更に苦しくなってきた。

「ふ、ぅう…っ、うー…っ」

「むぞらしか…たくさん可愛がっちゃるばい」

「ん…っ!?う、んぅうーッ!」

千歳の大きい手なら片手で両方の乳首を触ることもできるらしく、左手の親指と薬指が交互に軽く押し付けてきて、くすぐったい。
なのに、ぞくぞくする。

「んん、ん…んぅ…っ」

「あれ、これ気持ちよさそうばいね」

「ん、ぅう、う…ん、うぅ…ッ」

もうくすぐったいのか気持ちいいのかわからない、もどかしい。
それがかえって興奮するらしく、身体が熱くなっていく。
下も触ってほしくて仕方ない。
意地悪に上ばかり攻められることがこんなにつらいことだとは思っていなかった。

「こげんぷっくりさせて…おいしそうばい」

「う、んん!ふ、うく、うぅ!」

さっきまでさんざん指で弄られていたそこに、今度はぬるぬるした感触。
千歳は右側を指で弄りながら左側に舌を這わせた。
舌先で焦れったくつつかれたかと思えば、舌全体でベロンと舐められる不規則な動きに、思考回路がついていけない。

「ん、…んん…っ、んん…!」

「たまには違うこつしちゃるね」

「なっ、ひあッ!?」

突然、身体がびくんと仰け反った。
ちりっとした痛みと同時に胸に刺激が走る。
何が起こったのかわからない。
ただ、驚いてシャツが口から離れてしまうほどの衝撃だったということはわかった。

「あ、これ弱か?」

「やっ、なに…っ」

「ちっと噛んでみたばい、こんな具合に」

「やぁッ!あ、や、っひ、ああ!」

また変な感覚がして身体がびくんびくんと仰け反る。
痛いはずなのに、身体がおかしくなってしまったのだろうか。

「乳首噛まれてよがって、白石はドMだったと?」

「ちが、あん…っ、あっ、あぁ…ッ」

「下もこんなして、」

「ぅあ…あ…っ、あぁあ…」

気持ちいい、強すぎる快感にただ声が漏れて、ここが部室でしかも部活中だということを忘れてしまう。
痛みの後でなんともいえない快感が理性を奪っていく。
したい、最後まで。
もう我慢できない。

「ちと、せぇ…」

「ん?下も触ってほしか?」

もう無意識的にこくこく頷いて千歳をじっとみる。
はやく、疼く下半身に触れてほしい。

「じゃあ、ここまでにしとくばい」

「え、なん…」

「もう部活終わる時間ばい、ほら」

そう言って千歳は、捲りあげられた俺のシャツをもとに戻した。
こんな中途半端な状態でお預けだなんて、ひどい。

「ちとせ…、」

「なんね?」

「いや、や…さわって…」

「ばってん、もう人来てしまうとよ」

「う…」

千歳だってこんなに勃起させているのに、あんまりだ。
こんな状態じゃ部活に戻れない。

「わかったばい、後で家おいで」

「後で…?」

「さっきよりたいぎゃ可愛がっちゃると」

後じゃなくて今してほしい。
俺がそう思ってるのをわかっているかのようにニヤニヤしている千歳は、さっさと部室を出ようとした。

「千歳…」

「なんね?」

とっさにジャージの袖を引っ張って引き止める。

「今、してや…」

まさか自分の口からそんな言葉が出るとは思っていなかった。
きっと俺がこう言うのを待っていたのだろう。
千歳は一瞬驚いた顔をしてニヤリと笑った。

「しょんなかね、ほらおいで」

部室の隅に座って両手を広げる千歳の腕の中に、俺は迷わず飛び込んだ。















――――――
2011.4.1
乳首攻めだけでここまで書けるとは思わなかったです…!
ちと蔵で書かせていただいたんですが大丈夫でしたでしょうか…。
ASさまリクエストありがとうございました!

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