2011.2拍手:蔵謙 暦の上では春、二月。 ぽかぽか陽気に包まれて、ペン回ししとったはずの俺は、ついうとうと授業中に居眠りしてしもた。 目が覚めてすぐにしまったと思ったのは、授業が終わっとったことよりも机に涎の水溜まりができとったことやった。 間一髪のところで教科書にかからんかったのは不幸中の幸いや。 「謙也、さっき思いっきり寝とったやろ」 制服の袖で隠すように拭こうとしたら、蔵が話かけてきた。 「何やっとるん?」 「や、よ、涎たれてしもたから…」 「授業中やのに熟睡しとったもんなあ…。俺の席から寝顔が丸見えやったで」 そう言いながらも、蔵はティッシュを差し出してくれた。 ありがたく受け取って拭いとると、何やら視線を感じて見上げる。 「なんや…?」 「いや、そんな無防備に寝顔晒しとるなんて、のんきやなぁて」 「へ?」 「キスしてしまいそうやった」 冗談に聞こえへんくらい優しく言われて、ドキッとした。 ちゅーか、目が本気や。 「あ、アホか!ここ教室やで。そないな軽口は二人だけのときにしてや」 「うん、せやけど関係あらへんわ」 「は?」 「俺以外にかわええ寝顔みせとる謙也があかんのやで」 「な…っ、そんなん…、…はい、すんません…」 俺の涎垂らしとるマヌケな寝顔がかわええと思うのは蔵だけやから大丈夫やで、って言おうとしたけど、ほんまにキスされかねんからやめとこう。 これから気をつけます、はい。 ―――――― ちょっと束縛の激しい白石が最近好き。 |