ケンカの後には、





自分で言うのもあれやけど、謙也は俺のことが大好きや。
ナルシストとちゃうで、ほんまのことやもん。
せやからちょっと自意識過剰かもしれへんけど、謙也がひとりえっちするときはきっと俺をオカズにしとるんやろなってそう思っとった。
なのに、これはどういうこっちゃ。

「いや、あんな、誤解や!」

「何がどう誤解なんや!謙也のアホ!スケベ!変態!」

「いたっ、ちょ、痛い!」

謙也にクッションを思いっきり投げつけたった。
事の始まりは、謙也がトイレにいっとる間、暇やったから謙也の部屋を物色したことやった。
まさか知らん間に隠し撮りした俺の写真出てきたりして、なんて思いながらベッドの下を覗いたら、

「なんやねんこの『イケない診療所〜欲望に濡れたナース〜』っちゅーのは!」

普通にAVが出てきよって、プツッといってまった。
怒ると血圧上がるし健康に悪いてわかっとるのに、これはさすがに我慢でけへんかったから仕方ないわ。
ちゅーか医者の息子が医療モノって絶対アカンやろ。
さては医者になってナースにこないなことする気やな。

「ちゃうねん、これはその!」

「言い訳するなんて最低や!もう謙也なんか嫌いや!」

「ご、ごめんて!…しらいし〜…」

ベッドの上で膝を抱えてそっぽを向けば、謙也は情けない声で俺を呼ぶ。
そんな声出したって、振り向いてやらんし。
AVくらいでめんどくさいヤツやって思うとるんやろうけど、謙也が悪いんやで。
俺に言わんと隠して、しかもこれで抜くなん許せえへん。

「なあ、誤解なんやて…これ、ユウジが勝手に置いてっただけなんやて…」

「でも観たやろ?」

「う…」

「ほらやっぱり。それ観て抜いたんやろ?」

「う、うぅ…せ、せやけど…」

まだ言い訳するなん見苦しいでほんま。
俺よりAVのがオカズになるて言うたらええのに。
どうせ、俺より胸がおっきいお姉さんが好きなんやろ。
謙也は俺なんかより女のほうがええんやろ。
どうせ俺は女みたいに胸ないし、ええ匂いもせんし、声高ないし。
…なんか泣けてきた。

「しらいし…?」

「…謙也は俺より女がええん…?」

「ちゃう!男とか女とか関係なしに、俺は白石が一番好きや!」

「…じゃあ、これなんなん…?」

「それな、ほんまにユウジが勝手に置いてったんや。で、アイツどんな趣味やねんて思て観た」

「で、抜いたん?俺じゃオカズにならへんの…?」

「……あんな、白石。言うとくけど、付き合うてから白石オカズにして抜いたことなんてあらへんよ」

謙也は呆れたみたいにため息つきながらそう言うた。
ひどい、やっぱり俺じゃオカズにならへんのや。
AVがオカズっちゅーのは健全な男子やったら当たり前のことかもしれへんけど、俺らは健全とちゃうし、せやのに。
もう鼻がぐずぐずしてきた。

「白石と付き合う前は白石とえっちする妄想で抜いてたけど、今は妄想せんでも白石とえっちできるやんか、せやから…」

「他の女で抜くん?せめて俺に変換したりせえへんの?」

ひとりえっちは生理現象みたいなもんやからしゃあない。
オカズがないと勃たへんのもわかる(俺はひとりえっちとか滅多にせえへんからよおわからへんけど)。
でも恋人っちゅーオカズがあるにも関わらず他の女でもっとエロイ妄想して抜くとかありえへんし。
俺のこと好きやったら、なんで他のモンに興奮するん。
そう言うたら、また謙也は大きくため息ついた。

「…あのな、白石でエロい妄想するとかえらい罪悪感っちゅーか、申し訳ないかんじするんや」

「申し訳ない…?」

「せや。そのAVみたいに身体中真っ白になるくらいいろんな人にぶっかけられて中出しされてっちゅーのとか、めっちゃ興奮するしはっきり言うて勃つ」

「……へぇ」

「でも、これを白石で妄想変換したら申し訳ないっちゅーか可哀想やろ」

確かにそれは俺も嫌や。
謙也が俺にそないなヒドイことするの妄想変換して抜くとか、ちょっとキモい。
ちゅーかそんな妄想で抜けたら、そのうち俺もそのAV女優みたいにされてまうのか身の危険を感じるわ。

「妄想やけど白石を汚したない。オカズにでけへんくらい白石のことが好きなんや、わかる?」

「…うん」

わかるようなわからんような、上手く誤魔化されとるような気いすんねんけど。
俺のことが好きすぎてオカズにでけへんのやったら、ほんまにしゃあないんかなあ。
やってそれだけ俺が大切にされとるっちゅーことやろ。

「なあ、こっち向いてや…」

謙也が俺の隣に座ってきた。
ちらって向いたら、じっと見てきたからドキッとしてつい目線反らしてもうた。

「ごめんな…これ、ちゃんとユウジに返すから」

「…うん、」

「ほら、ちゃんとこっち向き。泣いとるやんか…」

謙也は俺の肩を引き寄せて強引に振り向かせた。
目尻にキスしながら、溜まった涙を吸いとる。
金髪が頬をかすってくすぐったいけど、気のせいかいつもより真剣な目を向けられてドキドキした。
AVオカズにひとりえっちしとるようなアホやけど、やっぱ、かっこええ。

「俺は白石のことが一番好きやし大切やから、な?」

「うん…」

「俺が悪かったから…仲直りしよ」

「ん…」

ちゅっ、て仲直りのキスをして、また目が合った。
俺以外のモノに欲情したっちゅーのは許せへんし許すつもりもあらへんけど、ちゃんと反省しとるみたいやしなあ。
なーんか理不尽な気いすんねんけど、そこまで必死に俺が一番好きやとか大切やとか言われたら、ここで許さへん俺が悪もんみたいやんか。
それにクッション投げたりとか痛いことしてしもて、ちょっとは俺も悪かったと思うし。
って俺、謙也に甘いんかな。

「ほんま、白石ほど興奮するもんなんてあらへんのやで」

「ほんまに…?」

「うん、ほら俺のここ、もうこんなんなっとるし」

手を引き寄せられて謙也の股間を触ったら、固い膨らみができとるのがわかった。
よかった、ちゃんと俺に興奮してくれとる。
すくなくとも、ひとりえっちやないときは俺に欲情するんやな。
それが嬉しくて、ほっとした。

「ほんまや…安心した…」

「そか…ほら、口開けて」

「ん、ん…」

謙也の舌が俺の口の中に捩じ込まれ、ねっとりやらしく舌を絡めとられる。
唾液が混ざるような感覚に、下半身がドクドク脈打つのを感じた。
気持ちええキスっちゅーのは、こういうのをいうんやろな。

「白石も興奮しとるん…?」

「ん、あ…っ」

股間を撫でられて、つい反応してまった。
今楽にしたるから、て言いながら四つんばいにさせられて、ベルトを緩められる。
謙也は後ろに回りこんで、ズルズルと俺のズボンと下着を下ろしていってた。

「ん、ここ、よくしてほしいんやろ?」

「えっ、や、ぁ!ひっ!あッあッ!」

ペロッてアナルを軽く舐められただけやのに、身体がびくんびくん反応した。
こんなの、いつもと同じことされとるだけやのに。
まるで、下半身が別の生き物みたいに敏感になっとる。

「あっ、あぁあ…あ、あん、あん…っ」

「なんか白石、いつもより敏感とちゃう?」

「そないな、こ、とっ、あぁああッ!」

舌先でツンツンされただけで、両腕の力が抜けてまう。
足も崩れそうになってなんとか膝で支えて耐えたけど、尻だけ突き出した情けないカッコになってしもうた。

「な、なんかケンカした後のえっちって燃えるかも…白石むっちゃエロい…」

「ちが、そないなことあらへん…!」

「いやいや、ほんまやで」

「っあ!や、そんな、いき、なり…!」

唾液でしっかり濡らされた尻の穴から、いきなり指が入ってきた。
舐められたせいで、指が出し入れされる度にやらしい音がここまで聴こえてくる。

「あっあっあ…ッ!や、あ…ぐちゅぐちゅいうてる…っ」

「すご…ほら、トロトロやで?」

「ひああ!!あん!あああんッ!」

指を増やしてさらに掻き混ぜられる。
きっと三本くらい入っとる。
それでも全然痛ないし、たぶんもっと太いの入れられても余裕。
それより、はよ謙也のが欲しい。
なんでか、さっきから尻の穴がきゅんきゅんすんねん。

「け、ん…ぁあ…ちんちん…っ、いれてぇ…」

「はいはい、」

中が疼いて仕方なくて、不本意やけど俺から誘ったった。
この恥ずかしい体勢のまま、尻に謙也のちんちんが挿し込まれてく。

「ん…ッあ…すご、い…ッ…ふあ、はいってくる…あっ、あ…」

やっぱり、固く勃起した謙也のちんちん入れても余裕やった。
ひとまず先っちょが中にぐりぐり押し込まれて、後はそのまま全部入ってくる。
これもいつもどおりのされとることやのに、これだけでイってまいそうなくらい気持ちええ。

「あぅ、あ、あぁ、あッ!」

「…っ、ヤバイめっちゃ気持ちええ…動くで…っ」

「あァ、あぁああん!あか、あ!」

「ちょ、急に締めんなや…!」

「ああああ!そこ、あああ!!や、ああ、はあ、ふあ!」

締めんなとか言うてむっちゃ突いてくるし。
ギリギリまで引き抜いて、突き刺すみたいに一気に奥まで入れてくるのとか、衝撃が強すぎる。
なんやいつもより激しい。
こないに揺さぶられたら壊れてまう。

「け、やあぁ…はげ、し、ひ、あ!ふああ、あぁ!」

「ごめ、加減、きかへん…っ」

「ああああ!!あ、あ、っひ、ぅあ、ああん!あ、あんっ」

いつもこんなに激しくせえへんのにめっちゃ突いてくると思ったら、やっぱ加減してへんかった。
せやけど、激しくて辛いはずやのに気持ちええと思ってる自分もおかしい。
抜き差しされて当たるとこ全部が気持ちよくてしゃあなくて、前なんか触っとらんのにもう射精してまいそうや。
これって、ケンカした後やもんでかな。

「白石…ごめん、な…」

「あ、あ、ぇ、えよ…っひあ!ああ!」

「…っ、白石、好きや…」

「んぁあ!!あ、はぁ、あん、あぁ…」

「好きや、白石…っ」

「ふあ、ぁ、ひぅ…ッ、んっ、あ…っ」

腰をがっつり掴んでガンガン突いてくるもんやから、俺も好き、て言われへん。
喘ぐだけでいっぱいいっぱいな俺は、心の中で言うしかない。
俺も、謙也のことが好きやって。

「ぁあッあ、は、ふ、ぅ…っあ、ああんッ」

「んっ、イク…ッ、出すで…」

「ひあああ!あぅ、あ、あぁあ―…」

謙也がイクて言うてからむっちゃ激しくされて、数秒後に腹の中が熱くなった。
俺も、シーツにだらだら精液を零しながらイッた。






「は―…今日めっちゃ気持ちよかったわ」

「…ちゃんとユウジに返すんやろな?」

「返すから睨まんといて!」

まったく、ユウジにもよう言うたらなあかんわ。
謙也に変なもん押し付けんといてほしいわ、まったくもう。

『身体中真っ白になるくらいいろんな人にぶっかけられて中出しされて…』

ふと、謙也が言うとったAVの内容を思い出した。
実はそれ、むっちゃ内容気になっとる。
ほら、これユウジのやけど謙也が興奮するっちゅーことは、少なくともお気に入りのシーンみたいなのがあるんやろ。
それに謙也がどんなプレイ好きなんやろとかさ、やっぱ恋人の好みくらいは知りたいやん。
あと、俺に妄想変換でけへんくらいエロイってどんなやねんっちゅー興味。

「…謙也、やっぱそのAV貸して」

「え、なんで」

「内容、チェックしたるわ」

「は?チェックて…別にええけど…チェックして何すんねん」

「なんでもええやろ。よし、ほな借りてくわ」

ちょお強引やったけど、謙也(ちゅーかユウジ)からAV奪って次の日こっそり一人で鑑賞した。
人生初のAV鑑賞やったけど、感想としては正直、謙也趣味悪すぎってカンジ。
でもまあ、これを俺やと思って一人でするのはさすがに引くっちゅーくらいにはエロかった。
うん、俺もこのAV男優を謙也やって思って一人ででけへんもん。
せやからまあ、いろんな男にぶっかけられるの妄想して抜いたちゅーのは、謙也にはナイショ。















――――――
2011.1.13
やきもちやきでちょっとワガママな白石も好きです^^
謙蔵のケンカした後のえっちは燃えるらしいです。
そしてなんだかんだで中学生な二人www


表紙