2010.12拍手:謙光 連日、寒い日が続いていた。 吐いた息が白くなり、冬を象徴している。 もともと体温の低い俺は、手袋にコートにマフラーにカイロと、防寒装備は完璧にしていた。 「なー光、知っとる?」 学校帰り、隣で歩いている謙也さんが話かけてきた。 こっちは寒くて死にそうだっていうのに、相変わらず鬱陶しいくらいニコニコしている。 「人間ってな、寒いときに体温上げて、暑いときに体温下げるんやて」 「へー」 「せやから、光みたいに厚着しとると体温下げてしもて余計寒なるらしいで」 「でも寒いすもん」 謙也さんはマフラーだけで、よく寒くないなと思う。 見てて寒い。 第一、薄着だと風邪をひくってよく言われるし。 「せや、とりあえず手袋はずしたらええんやない?」 「いやや、寒い」 「ええから、ちょっとだけ」 しぶしぶ手袋をはずした瞬間、外気に触れて右手が一気にかじかんだ。 「さ、寒い…!」 薄着のほうが体温あがるとか嘘だろう。 寒さに耐えきれず、手袋をまたはめようとした。 しかし、手袋をしようとした瞬間、謙也さんは強引に俺の手を引き寄せ、制服のポケットに突っ込んだ。 「ちょ…!」 「これなら、ええ?」 俺と謙也さんの手が、ポケットの中で恋人繋ぎになった。 もしかして、これがしたかっただけなのか。 そのために、手袋をはずさせたわけか。 「素直に手繋ぎたいて言うたらええのに」 「はは…」 そう笑いながら、ポケットの中で俺の手を強く握る謙也さん。 温かい。 それは、ずっとこのままだったらいいのにと思ってしまうほど。 俺は視線をそらしながら、少しだけ握り返した。 ―――――― お互い素直じゃない謙光も萌えると思うんです。 謙也さんは照れくさくて言えない、光は恥ずかしくて言えないっていうのがいいです^^ |