2010.11拍手:光謙






「さーむーいー」

学校の帰り道、謙也さんはさっきからそればっかり連呼しとった。
まあ確かにここ最近寒いけど、そんなに何回も言われたら誘っとるようにしか聞こえへん。
あったかくなることをしてほしいんやろか、なーんて。
抱きしめたり、一緒の毛布にくるまったり、やらしいことしたりしたなるわ。

「さっきから寒い寒いて、俺を誘っとるんですか?」

「へ?」

謙也さんは首を傾げた。
この人天然だし鈍感やから、俺の言うたことわかっとらんのかな。

「やから、寒いから身体あったまることしたいんとちゃいますの?」

「あったまること?ああ、一緒に走るか!」

「………はあー…」

「ちゃうんか!うーん…なんや…」

大きくため息をついた俺を見て、謙也さんはおどおどしながら真剣に考え出した。
これほんまにわかっとらんのやな。
こんなん考えるほどのもんでもないと思うんやけど。
思春期中学生のやらしい脳なら、俺が言うたことすぐわかると思ったんやけど。

「あ、わかった!もしかして、おしくらまん…」

「ちゃいます」

「はやっ」

「なんでわからへんの…」

「……光、俺わからへんから教えてや…」

しょんぼりして上目遣いに俺を見てくる謙也さん、めっちゃかわええんやけど。
マジ盛るわ。
はよ家つれてって、あんなことやこんなことしたい。

「…ま、しゃあないっすね…やから、俺らがベッドですることなんか1つしかないやろ」

かわええ謙也さんに免じて大ヒントや。
これだけ言えばわかるやろて思ったけど、まだ謙也さんは目をぱちくりさせとる。
まだわからんのかい。
だんだん恥ずかしくなってきた。
謙也さんの天然で鈍感なとこ好きやけどちょっとアレや、問題や。
もう答え言うしかないな。
あー恥ずかしい。

「エロいこと」

「…え、」

「したら、あったまるんちゃいます?」

下向きながら言うたけど、あかん、俺めっちゃ顔赤いかも。
なんや、ボケをわかってもらえへんくて解説する惨めな芸人みたいや。
めっちゃイタイわ。

「し、したいん…?」

「……はい」

俺は頷いて小さく返事した。
ちら、と見上げたら謙也さんも顔赤くなっとった。
俺の方が恥ずかしいのに、なんであんたまで顔赤くなっとんねん。

「わ、わかった」

「もう、はよ俺ん家行きましょ」

「え、ちょっ」

ほんま鈍感、天然、アホ。
でもそれが可愛くもあり問題でもあるわけで。
ああもう、今日は絶対泣かせたる。
加減なんてしてやらんから覚悟しとけ。
謙也さんの手を引っ張って、俺らは家まで走った。





――――――

謙也さんはイライラするくらい天然だといいな!