■■ 汝は_蜥蜴なりや? 第14話
「それはそれは褒め言葉ですね。私の母と祖母はとても仲が良く、子の私が祖母に嫉妬してしまうほどですから。
富布里さんも哀れなのですね。仲の悪い姑と嫁の関係しか見てこられてない様にお見受けします。」
「梨子はぁ、ママとおばぁちゃんが仲が悪くてもいいのぉ。二人ともヒステリックにキーキーキャアキャア。梨子はパパがだぁい好きなんだもん。梨子の言う事なら何でも聞いてくれるんだからぁ。
雅ちゃんも心狭ぁい。仲が良いならそれでいいじゃあん。嫉妬するなんてサイテー。」
「私は人間ですから嫉妬ぐらいしますよ。反対に貴女はいたしませんの?聖人君子ですか?それとも人生を達観したおばば様ですか?
貴女の先ほどの発言、何でも言う事の聞く男性の方が好き、と聞こえまいたけれど、言うことのきかない人間の末路教えて下さいます?」
「梨子は愛されるべき人間なんだからぁ、言う事を聞かない人間なんて居ないからぁ。何言ってんのぉ?
って言うか雅ちゃん怖ぁい。梨子泣いちゃいそぅ。」
「あらあら、泣きそうならお泣きなさいな。子供の特権ですから。」
「子供っ…!?」
「愛されるべき人間ってそう言う意味でしょう?
子どもの権利条約。18歳未満の児童は無条件に守られるべき人間ですからねぇ。
私も少々恐れを抱きましたよ。」
その残念な思考と恐ろしく腹筋を的確に突いてくる発言にな。
「富、富布里…順番が回ってきたからさっさと頼、め。」
雅と富布里が大会を繰り広げている間に順番が回ってきたようだ。
跡部がこの空間から少しでも早く抜け出そうと富布里を急かした。
「景吾から話しかけてくるなんて梨子嬉しいぃ!景吾はぁ、どの味が食べたぃ?」
第三者から見たら立派なカップルだ。
「いや…俺は甘い物苦手だから要らねぇ。」
「えー嘘ぉ!景吾ってプディング好きじゃあん。甘いもの食べれるでしょお?」
あ、馬鹿だ。
「あ?ローストビーフヨークシャープディング添えは甘いものでも何でもないぞ。」
「あ、え…そ、そうなんだぁ。梨子間違えちゃった!」
おいおいおい、プディングと言う言葉だけでお菓子と決めつけんなよ!!どんな間違いだよ!!これどうやって庇えばいいの!?
「どうでもいい…さっさと頼みやがれ。」
「えっとぉ、ラブラブクレープのでお願いしまぁす。」
場の空気を誤魔化すために富布里は店員に注文を言った。
「お待たせしました。」
少しして店員が注文通りのクレープを出してきた。富布里はそれを受け取り列を外れる。
次は雅が注文する番。
「雅、何食べるの?」
「私はこの様な物には疎いので人気No.1とあるこれを注文したいと思います。」
すみません、人気No.1のものを下さい。と言い視線をメニュー表から店員にやったら店員の顔が見る見る赤くなっていった。
「アナタっ鏑木家の…ッ!?」
「…私をご存知で?」
「ご存知も何も!私はファンで!あああ握手して下さい!!」
「この様な私のファンになって下さってありがとうございます。」
なんとこの店員、雅のファンと言うではないか。まぁ、居てもおかしくはないか。だって太大衆演劇代表格鏑木家嫡男真女形鏑木雅なのだから。
鼻高々。雅はきっと内心、可愛い店員だなとか思っているだろう。今は女の格好だからナンパは自重である。
雅はファンサービスと称して握手を快く行った。
「はぁあああッありがとうございます!!あ、こちらクレープとなりますッ。お代は要りません!私からのプレゼントにさせて下さい!!」
そうしたらどうだろう。
なんと無料でクレープが手に入った。役得役得。
「良いのですか?ありがとうございます。」
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