汝は_蜥蜴なりや? | ナノ
汝は_蜥蜴なりや? 第06話
「……なぁ、富布里ってやつ…普通にしてたら可愛くね?黙ってたら。」

「アーン?雅の方が可愛いぜ。」

「黙れ、ご子息に言われてもなんか嬉しくねぇよ。
でもやっぱ喋ったらダメだな。俺、ああ言うぶりっ子的な仕草が嫌だわ。何?媚び売ってんじゃねーよ。」

「なぁ…雅、俺、あいつ怖い……。」

岳人が深刻そうに雅に訴えた。
そう思っているのは岳人だけではなさそうだ。
跡部も忍足も宍戸もジローも鳳も日吉も樺地も皆そう思っている様だ。心なしか顔色が悪い。

「はぁ?なんで、具体的にどう言うとこが?」

「なんか言う事を聞かなきゃダメ、みたいな……。聞きたくないのに、そうなっている…みたいな。」

「せやなぁ、なんや…言う事聞きたくないて心ん中では思っとるのに、言う事きかへんねん。」

「へぇ……。今は?」

「今はそんな感じしないCー。だから俺、富布里ってやつヤダー。」

「ふぅん…でも富布里は転校生なんだから、仲良くしねーと。仲間外れにするんですかー?ヤダー。」

それは面白い現象だと雅は認識しほくそ笑んだ。

確かに逆ハー、は効いていない。
詳しく言うなら逆ハーの根本的な作用、心を操り自分に魅了させ、ハーレムを作るというものが確立していない。
心を操るのではなく、体を操る。

つまりただの暴君である。


「しかしだ、雅…何故あの女をマネにすることを許可した。」

「え?だって面白そうだから。」

「…何?」

「だってそだろう。あんな楽しい子、俺が見放すわけないじゃん。いや…時期になったら見放すかもだけど。」

「けどなぁ、富布里サン…見るからにマネの仕事はしませんっちゅー外見しよるが…爪かて長ぉて雑用するような手ぇやなかったやん。」

「オッシー、君の好みじゃなかった?足の綺麗な子。富布里、トータルバランスよかっただろ。全体的にちっちゃいし。」

「なんで俺の好みバレとんや。」

「俺に掴み切れない情報は無ーい。主要人物のデータは把握済みだぜ。」

「怖ろしいことを軽々言ったなぁ。
まぁ、質問に答えると今は女作ることは考えとらんし。テニス一筋でやっていきたいんや。」

「へぇ、皆そう言うんだな。若いぜ。」

「若いんは雅もやろ。同い年やん。」

「まぁな、けど…人生経験的な?お前らよりは結構老けてるぜ。」

どうでもいい雑談を忍足と交わしていた雅。
そしてそこに質問がある、と宍戸が言い出した。

「あのよー。さっきから疑問に思っていること言っていいか?」

「はい、シッシーどうぞ。」

「お前、どうして俺らの前ではその…演技って言うのか?女のふりをするの止めてんだ?クラスでも、富布里の前でも女のふりをしてんだろ?」

確かに雅はテニス部の前では猫かぶりと言うか、女の演技をぱったり止め、口調も行動もすべて男としている。
外見と実にミスマッチだ。

「おぉー…鋭いねぇ、…宍戸君はこちらの私の方がお好きですか?」

「バッ、違ぇよ!!」

いきなり女らしく、しなっと穏やかな口調になる。
それに驚き、照れた宍戸は必死に否定をしているようである。

「カハハハハ、やっぱシッシーいいわぁ、その反応ツボだわ。」

「しかし、雅さん。あなたは外部の目があるときは演技をしないといけないでしょう。
俺の家の道場に通っていた時も女の演技をしていたはずです。」

「…ヒヨちゃんも黙ってればいいものを……。」

「その呼び方は止めてくださいと言っているでしょう。で、どうしてですか?」

「「「「……。」」」」

「まぁ、簡単な話、俺の本性…女の格好をしながら男の仕草をしてる姿って、とても貴重だぜ?それをお前らには特別に見せてやってる。そう、お詫び…みたいな?」

そう、お詫び。
ちょっと巻き込んでしまったお詫びである。
と言うことにしておく。実際にはここを学校で唯一本性を出せるところに決定しているからだ。男子テニス部レギュラーの前だけ。
本来ならずっと女の演技をしなければならないのだが、中学生と言うお年頃の多感な時期に強制的に行うことは反抗してしまうため、ある程度の息抜きを設けている。それがテリトリー的な。ちょっとした家からの配慮である。

「何故、俺達に詫びをしないといけないんですか。」

「…ふーん、んー……皆々様?女は、秘密を少しは持っていた方が魅力的でしょう。」

しかしばらすと言うことはしたくない為、誤魔化す。
誤魔化し方も一流の女形。勿体無いと言う表現に合う仕草、目の動きを披露する。

思わず見惚れるメンバーと跡部。

「「「っ………。」」」
「雅の言う通りだな、アーン?」

「…ご子息に同意されてもなんか嫌だな……。」

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