ポジション はっきり言おう。 俺、仁王雅治はまだ椿崎撫子の事が好きです。 あの時、どうも思っとらんって言ったが…本当は今も好いとる。 「ペテンさーん!!」 撫子が仁王を呼ぶ。 今、仁王と撫子はコスイベントに『うみねこのなく頃に』の『戦人』と『ベアトリーチェ』の衣装で参加している。 「……プリ。」 「意味わかんねぇよ!!それよりもなんで戦人に色気がある。 戦人は元気っ子の色気ナッシングなのよ!!」 「褒め言葉として受け取っておくぜよ。 比べて椿崎は色気無いのぉ。」 嘘じゃ、ベアトリーチェよりも色気があると言っても過言じゃなか。 褒めたい。 綺麗で、妖艶で、その瞳に射抜かれたいぜよ。 「色気の無いことは把握しているからもっと罵ってもいいのよ。」 「嘘じゃ、完璧なベアトリーチェぜよ。」 「…褒めても嫌味にしか聞こえねーよ!! 誰もペテンさんに勝てるだなんて思ってねーよ!!」 …本当のこと何じゃがな。 「あ!!柳生君、今日もお世話になります!!」 柳生もカメラマンとして参加している。 「はい、こちらこそ。」 三人は適当に良い場所を見つけ写真を撮る。 今回は戦人とベアトリーチェの為、雰囲気はいつもよりも色気増。 そして撫子が仁王を見つめる目線はどこか儚げに、叶わぬ恋をしているかのよう。 対して仁王は不可能を可能にしようとする強固な瞳、 仁王は戦人を演じながらも撫子の演技に吸い込まれていた。 まずい……、戦人の仮面がはがれそうじゃ。 椿崎が俺を愛しいものとして見てくれとる。 いや違う、俺が演じとるバトラに向けとるんじゃ。 惑わさせるな、俺。 本心を出すな、俺。 自分には向けられとらん視線でも、偽りの視線でも何でもええ。 俺が椿崎の視界に入っていられとる。 椿崎が俺の視界に入っとる。 演技で俺に触れとっても構わん。 俺が椿崎に触れられて、 椿崎は俺に触れられて。 それだけでも俺の心は高鳴っとる。 「ねぇ、ペテンさん?」 「何じゃ?」 「どした?さっきから上の空だけど…ちゃんと色気を写真の向こう側に伝えるように気張っていけよ!!」 「…すまんの。」 ペテンさん、ペテンさん。 俺のコスネーム。 こんなにも煩わしいと思ったことはない。 椿崎は俺とコスをする環境においては仁王とは呼ばん。 ペテンと呼ぶ。 椿崎なりのけじめかもしれんが、壁を感じる。 そんな壁ぶっ壊したいぜよ。 ぶっ壊して椿崎の元に行って本心を言うんじゃ、「好いとうよ。」ってな。 「付き合ってほしい。」とな、 もし断られたら俺は椿崎を閉じこめてしまうかもしれん。 おっと、厨2的発想が出てきたな。 でも本心じゃ。 でも嘘じゃ、 この関係が気に入っとる。 あの時と変わらずに接してくれとる椿崎の気遣いに感謝しとる。 感謝して、利用して、 今までにないくらいの幸せを感じ取る。 どんなに偽りの表情だろうと、仕草だろうと、 それは俺だけに向けられとるもの。 柳生にも渡さん。 誰にも渡さん。 俺だけのもんじゃ。 「……ベアトリーチェ…。」 戦人として話しかける。 「何だ?」 「俺はお前の存在を認め、ゲームを降り、対面でなく、隣に寄り添いたいって言ったらどうする?」 「…それを青の真実で言えるか?」 「あぁ、勿論だ。」 「嬉しいぞ、戦人。」 微笑む撫子。 それはベアトリーチェとして戦人に向けられたもの。 でも、 俺は、俺に向けられたもんじゃ…と思っとくぜよ。 「なぁ、撫子?」 「んあ?今度は何さ?」 「――好いとう。」 「ん?何聞こえない。」 「…何でもなか。」 聞こえさせるつもりはなかったから、別にええ。 俺の本心は誰にも教えん。 俺は詐欺師じゃき、好きな相手を騙してでもこのポジションは誰にも渡さん。 このポジションは俺だけのもんじゃ。 ――――――――――――― 50000hit企画第六弾 アリス様リクエストの『仁王がまだ主のことが好きだったら?』でした。 仁王さんがまだ好きでいてるなら絶対今の関係は男として見てくれていなくて辛いものですよね?多分。 というか若干ヤンデ…レ? いや仕方ないよね。ずっと好きな相手が男女隔てなく関わっているとこ見たら嫉妬ってしますよね? しかもあえてのうみねこのコス……ようはあれです。いつもコスしているとき、仁王はこんなこと思いながらやってるんだよーってう…。 本編(リカバリー)よりも先に書いてしましまして…。 本編の過去話…ということにしておいて下さい。← [mokuji] |