青春パラレル!?? | ナノ


青春語


私、椿崎撫子は吸血鬼である。

厳密に言えば、吸血鬼もどきなのだが、パンピから見れば同じことだろう。
端的な話、私は化け物なのだ。

これは岡山。
東京から見てしまえば田舎の学校に居た時、私は仁王と言う名の吸血鬼を助け、化け物になってしまったのだ。
助けたことは後悔してないし、これからもそのような感情を抱くことは無いだろう。
しかし、仁王とは良好な関係を築くことは不可能だろう。
何故なら私は仁王を殺し続けているから。
それに至った経緯についての説明は省くが、つまり私と仁王は切っても切れない関係を築いたのだ。

「…仁王。」

私がこう呟けば外見年齢10歳程度の仁王は私の影から出てくる。
私から仁王を呼ぶのは大体仁王に私の血を与えるとき。
仁王は私の首筋に噛み付いて、血を少しだけ与える。
与え過ぎない程度に加減をして。

少しして仁王は私の首筋から牙を離す。
私は仁王に付けられた牙の後を隠すためにポニーテールに括ってある髪をほどいた。

「……にしてもお前様よ…俺はそろそろ寝んといけん時間なんじゃがなぁ。
それよりも…なにシリアスな雰囲気を漂わせとるんじゃ。お前様はぶっ飛んだ奴で、何が殺し続けとるじゃ。ただ単に自分が俺のこの格好を気に入ってこんなんにしとるだけじゃろう。」

「黙れ!私はショタコンだよ!!お前は18歳の姿よりもそのちんちくりんな10歳ぐらいの外見の方がホイホイだこの野郎!!」

初めて会った仁王は身も凍るような美しい容姿をしていたものだ。
外見年齢は18歳で、腰よりも長い銀髪を後ろで一つにくくっており、切れ長の鋭い瞳ですべてのモノを虜にさせる。
そんな誰もが美しいと形容した18歳仁王の姿は今は無く、
今の仁王はクリっとした目で可愛らしい姿となっている。

「俺はこんな姿やじゃぁあ!!手足が短けぇし、何よりお前様に見下ろされるんが何よりもいやじゃ!!」

「私はこの姿が良いんだ!!それ以上文句言うんならBLの妄想をしてやろうか?ぁあ!?
一心同体のこの現状でお前の思考が無事でいられると思うなよ!?」

「ああああああああ!!それだけは勘弁じゃ!!それは俺が眠っとるときにしてくんしゃいッ!」

「じゃー、文句言ってんじゃねーよ!吸血鬼擬きが!!」

「……お前様、立場を見失っとるじゃろ。」

「何にも聞こえないぞー?どうしたのかなぁ?んー?あっれ?最近物忘れ激しいからなぁ。そう言えば仁王が起きてる時にBL妄想するべきなんだっけ?」

「すまんかった!俺が悪かったぜよ!!俺は寝るけん、お前様は勉強を頑張りんしゃい!!おやすみじゃ!!」

「さっさと寝てまえ、私はこれから授業だっていうのに…あーぁ。妄想にふけようかなぁ…。」

私は仁王への食事を済ませて自分の席へと座る。
退屈な授業なのだが、先生にはいい顔をしていた方が後から便利である。
具体的に言うならば一週間程度無断休みをしてしまっても体調が悪いと言えばすべて片付いてしまう。
勿論、一週間も休んでしまうのは私としても心苦しいものがあるのだが、仕方のないときだってあるのだ。

「おはよう撫子さん。今日は髪の毛結んでいないのだな。」

クラスに行くと、マスターが声をかけてきた。
マスターと言うのは私が勝手に呼ばしてもらっているのだが、そろそろ柳君と改めるべきなのだろうか。
いや、でもマスターはマスターであってマスター以外の何物でもないからマスターなのだ。あれ、ゲシュタルト崩壊してきた。
いいや、今までと同じようにマスターで。

「うん、今日は仁王に血ぃやったからね。流石に吸血鬼に吸われました的な傷は見せらんねぇからね。」

「あぁ、今日はその日だったか。毎回毎回ご苦労だな。で、その仁王は今何をしているんだ?」

マスターは仁王の存在を知っている数少ない人間の一人だ。
因みに仁王の存在を知っている人数は、6人だ

「え?寝てるよ。夜更かししてるからだよ全く…思春期の男子かよ。」

「撫子さん、吸血鬼は基本夜行性だ。」

「…マスターはなんでも知ってるね。」

「何でもは知らない。知っていることだけだ。」

「いや、マスターが知らないことは私ごときは知らないから何でも知っていると言う定義には当てはまると思うよ…。」


学校が終わって、私はあるところへ向かう。
別にあるところと表記をぼかさなくてもいいのだが、ここは雰囲気をもってそう言わせていただこう。
そこのあるところへ向かっていると白い帽子がトレードマークのリョーマの後姿を確認した。
勿論私は?自他ともに認めるショタコンだし?抱き着いてもいいのだが、いやいやここは公道だし、常識ある私はリョーマに突進して抱き着いて、抱きしめて、hshsしたいだなんて思っていないんだ。
いや、思っているが、行動に移さない、移さない。
しかし、リョーマは私以外見えな…マスターには見えてしまうがそんなことスルーしてくれるぜ!!だってマスターは私の味方だかr

「げふっ!?」

どうやら私はリョーマに対してどのような行動を取ろうかと思いにふけっていたらタックルを食らい無様にすっ転んだようだ。
いやはや、公道で大転倒だなんて恥ずかしい。
これはクチコミの四コマネタにいけるかな?

「撫子さん!お久しぶりです!!
どうしたんですか!後ろから俺に抱き着いてもよかったんすよ!俺が嫌がるわけないじゃないっすか!勿論大歓迎っす!!
さぁ、今からでも遅くないっす!」

「リョ、リョーマ…成長したな。私は嬉しいよ。
しかし私は抱きしめられるより抱きしめたいのだ。私からタックルさせてくれよぅ!!」

「撫子さんこそ、そう思ってるならそう来て下さいっす!
俺が撫子さんに気が付く前に!!」

「おお!本人から許可が出た!!次からそうする!!」

「でも俺、撫子さんが俺の半径150m以内に居たら察知するんで!!」

「無理!!」

流石に150mとか無理ですよリョーマェ…。
私吸血鬼って言っても擬きですから、ここ重要。
しかしリョーマは永遠のショタだ。実に俺得である。

私はリョーマとの戯れを堪能してある所を再び目指す。
別に急ぐ用ではないのでゆっくり歩いて向かう。

すると後ろから規則的にタッタッタッタッタッと走ってくる音がする。
走ってくる奴は誰だと知っているので振り返って両手を広げて通せんぼ。

「!?…あぁ、撫子さんか、こんにちはや。」

「はいはい、こんにちは蔵さん。今日は何を収穫しに行くのですか!?」

蔵さんと言うのは私の友達であり、ソウルメイトである。
左腕には包帯を巻いていて、ただの厨2だと言ってしまえば強制終了なのだが、蔵さんはれっきとした理由がある。
理由と言うのは創を隠すわけでも傷を隠すわけでもなく、変色してしまった腕を隠す為。
変色してしまった理由は蔵さんのプライバシーの引っかかるから説明は省こう。

「今日はBL本の新刊が3冊発売されて季刊誌の発売日なんや!」

「なん…だと!?例の季刊誌は今日が発売日だったのかッ、欲すぃ!私も蔵さんと一緒に買いに行きたい!!でも今日は予定がッ!!」

「あー…今日は忍足さんとこ行かんといけんのか。」

「うん、別に行かなくてもいいんだけど…行かないと……。」

「どっちなんや。
せや、行けれんのんなら俺が今日二冊買って明日朝一で渡そうか?」

「蔵さん!あなたが神か!!」

「神は撫子さんの方やで。あんな小説どうやったら書けるんや。その上笑顔動画で活動中とかもう人間と言うカテゴリを飛び越えとるんやないか?」

「馬鹿言うなぁ、私以外に神なんて五万と居るぜ!!
さぁ!蔵さん!!書店にBダッシュです!売り切れちゃうぜ!!」

「そやった!俺急いどるんやったわ!!撫子さん、また明日!
忍足さんによろしく言っといてやー!!」

「りょーかい!んで、楽しみにしとくー!!」

私は再び走り出す蔵さんを見送った。
しかし、いい走りだ。

そうだ、もうここで言ってしまおう。
私が目指しているあるところと言うのは忍足の所である。
忍足は胡散臭い伊達丸眼鏡の同世代くらいの男子なのだが、これがまた変な能力を持っていたりした。
私はそいつの親族に助けられたのだが、私が上京するにあたって「東京に行くんやったら俺の従弟の手伝いをしてくれたら嬉しいわ」と言われ私は恩を感じているので従った。
謙也君には私は返しきれない恩がある。
私を吸血鬼から微妙に救ってくれて、仁王とのこんな関係を勧めてくれて、
それに…いいネタになったわぁ……。安定の右、いいわ…。

おっと話がそれてしまった。
忍足との関係はそれほど親密ではないのだが、話が合うと言う面でプライベートでも仲良くしている。
忍足は祈祷師と言うべきか、ゴーストバスターと言うべきか、とりあえず怪異に対する策を立てる専門家である。
こいつには私の友達を助けてもらった。マスターも、リョーマも、蔵さんも、光君も、―――も、そう思えば助けられてばっかりだが…まぁ、相手が忍足だからいいか。

忍足が居る場所を目指しゴールまであと少しの頃。
光君が居た。
学ランを着て、こっちを見てる。
学ラン…萌えッ!!

「ひっかるクーン!!元気?」

「あ!撫子さん!!勿論元気ですわ!!」

「もう呪いになんてかかっちゃダメよ!告白されたらどうすべきかな?」

「はい!告白されたら気持ちは嬉しいけど、まずはお友達からって言って、幻滅するような行動をとるっすわ!!」

「いや、最後の分は要らないよ。
そんなことしたら本当の友達も無くしちゃうぞ!」

「撫子さん以外の友達なんて入りません!
もし俺が新世界の神になったら撫子さんと俺の二人っきりの世界を作るっすわ!!」

「愛が重い!!
で、光君はこんなところで何をしてるんだい?」

「撫子さんを待ち伏せしてました!」

「ワァオ!正直!!
でも今日は遊べないんだ、ゴメンねー。」

「知ってますわ、今日は忍足さんとこに行くんでしょう。」

「流石光君分かってらっしゃる!
具体的には明日遊ぼーね!!」

「はい!俺の家で遊びましょう!!それ以外の選択肢は無いっすから!」

「アハハ、リョーカイ。また明日。」

光君はとても可愛い。
犬っぽくて、…いや、いい意味だよ。
学校は違うけど、頻繁に私に会いに来てくれる。
あの子、学校に友達はいないのだろうか。…ボッチ?
いや、そんなわけないか。告白を受ける位だし、
告白か…青春ですなぁ。

私はやっと目的地に着いた。
色んな人に会いすぎてもうお腹いっぱいなのだが、また満腹感溢れるキャラに会いに行かなければならないのか…。

「忍足ー、生きてるー?」

私は今日の為に買っておいた食糧諸々を鞄から取り出し、いつもの場所に置いた。
忍足は、世間的にはニートである。ニートであり、ホームレスである。
まぁ、この二つは大した問題でないので放っておこう。

「おー、撫子か。生きとるでー、どや?調子は。」

いつもの様に伊達丸眼鏡の胡散臭い雰囲気を醸し出している忍足。
へらへらとした笑みを浮かべており咄嗟に眼鏡を叩き割りたい気持ちを抱かせる。
いや…叩き割りたい。
だって無い方が絶対イケメンじゃね?

「ボチボチでんなぁ。
今日、仁王に血あげたけどすこぶる調子がいいよ。完璧な吸血鬼になるのは勘弁だけど、擬きはいいねぇ。」

「あっけらんとしとるなぁ。」

「こんな性格じゃないと仁王との共存は出来ないよ。だって思考回路さえも共有してんだぜ?」

「俺なら一日で勘弁やわ。」

「だろ?
そうだ、俺の嫁は?」

「あぁ、撫子の彼氏か…今日お金持って来てくれるんやっけ?まだ来とらへんで。」

「そっか、まだか。じゃぁ、ここで待っていていいかね?」

「構わへんでー。
と言うのは建前で、俺も今日自分に話しておきたいことがあんねん。」

へらへらとした笑みはいつの間にか引っ込んでおり、今は結構真剣な目を私に向けてきた。
離れたところに居た忍足は私の所へと一歩一歩、詰め寄る様に迫ってくる。

「自分は、いつまでそんな生活を続けるんや?
謙也は人間にも怪異にも優しいから、撫子と仁王をそんな関係に押し込めて、ハッピーエンドや言うたんかもしれへんけど。その関係やとどっちも幸せになれへんで?」

「……。」

「撫子は吸血鬼よりの人間に、仁王は人間よりの吸血鬼になって、どない?
撫子は中途半端な生き物になって、どや?自分は人よりも頑丈やからって怪異に関わって、ええことあったか?頑丈言うても痛みはあるやろ。
自分は自分の力だけでは助けれん奴にまで関わって、不都合が出来たら俺を頼って。
勿論今はええわ。俺がここに居るからな。やけど…俺がこっから居らんくなったらどうするつもりや?
仁王だってこんなんになるまでは怪異の世界では名を馳せとった最上階級の怪異やったんやで?
仁王の気持ちは聞いたことあるんか?満足しとる言ったか?
撫子、自分が今しとることはただの自己満足の独りよがりや。」

私の肩に触れ、私の耳元で残酷な言葉を吐き捨てた。
確かに私のしてることは自己満足で、独りよがりかもしれない。
しかし、そんなこと改めて言われるほど私は馬鹿ではない。
そんなこと、忍足に言われなくても知っているし理解だってしてる。

「……知ってんだよ、メガネがぁ!!叩き割るぞコルァ!!」

物凄く腹が立ったので、私は私の肩に触れていた手をねじって、そのまま忍足を投げ飛ばした。

「ゴフッ!」

「一々一々ねっとりした声で耳元でささやきやがって、なんなのバカかなの死ぬの!?ボケ!!
ちゃんと謙也君から説明されましたー!ハッピーエンドではないってね!その時も謙也君泣きそうな顔をしてたから物凄く萌えたけどよ!
納得して、仁王と共存してますぅ!!じゃねーと仁王は今はショタの外見してても力は私より上だ!嫌なら私を殺していつでも仁王も死ねる!!いいんだよ!こんな関係で、
自己満足で何が悪い!!この世は所詮それぞれの自己満足で回ってんだよ、ニートが説教垂れてんじゃねーよ!!
お前が居なくなったらどうするだぁ?んなの知るか!!そん時になればどうにかなるわ!!決められてる世界なんて有ってたまるか、お前が居なかったらお前の代わりを探すだけだよ。居なかったら私が吸血鬼の力を使って力任せにぶっ潰す!!」

「…そう言うと思ったわ。
やっぱ口から聞かんと安心できんわ。」

「……安心させるために私はキレたんじゃねーけどな。」

「自分にそんな固い意志があるんならええわ。
今後もその歪んだ関係を続ければええ。俺は地味に応援しとくから。
ホレ、もう行きや。さっきから撫子の彼氏さん来とるで?」

忍足にそう指摘されて振り返るとそこには俺の嫁が居た。
助けてもらった代金を茶封筒に入れていたらしく、それを私が食糧諸々を置いていた場所へ置く。
私は目的の人が来たので、忍足にさいならと挨拶をしてこの場を去ることにした。

おっと、最後に言い忘れたことがあったよ。
私は再び忍足の方に向いて言った。

「後悔は何もしてないよ。
吸血鬼擬きになって、マイナス面だって有る。それは仕方ないって割り切ってる。具体的には年齢、ね。
けど、メリットの方が多かったよ。マスターだって、蔵さんだってリョーマだって光君だって、それから忍足だって私が吸血鬼擬きにならなかったら仲良くなれなかったからね。
それに、なによりも大切な人だって出来たんだもの。」

私は言い忘れたことを言って大切な人と忍足の生活スペースから出て行った。
確かにこれからも不安はいっぱいある。この寿命はどうなるのかとか、仁王の謀反とか、
拭いきれない不安は多い。
けれども、今がこんなに充実しているのなら、これでいい。

それでいい。






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500000hit企画第47弾
雪兎様リクエスト「青春シリーズで「化物語パロ」」でした。

一人称で話を進めると文字が多くなる←
主は阿良々木さん指定でしたので、こんな感じです。

阿良々木→主
羽川→柳
八九寺→リョーマ
神原→白石
千石→財前
忍野→忍足
戦場ヶ原→??

でした。
ひたぎさんは主とカップルになってしまうので、キャラを当てはめることが出来ませんでした。ひたぎさん役のキャラは補完よろしくお願いします^^;

[ 10/13 ]

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[mokuji]