Target 不二周助 03
「…分かった、地獄を見よう。」
「手塚!?」
「ンフ、流石部長やるべきことはよく分かってるぅそんな君に痺れる憧れるぅ!!が、感心しないことが一つ。地獄の内容を聞かずに頷いちゃうなんて愚か者がすることだよ?まぁ、前言撤回なんて認めないけど。」
「ねぇ、だったらアンタの言う地獄ってどんなものか教えてよ。」
「いいよ?でもクイズね!ヒントその1、河村隆にとってはそんなに苦ではない。
ヒントその2、これが原因で自殺しちゃう人がいる。
ヒントその3、………半分手塚がなりかかってるよぉ?さぁ!答えて答えて!!もう分かってるでしょう!?」
「俺が平気…で自殺、……!?もしかして、腕をッ!?」
「ザッツラァイト!!正解、イグザクトリー!!君達の腕をぶっ壊しまぁす!!」
「お前、バカじゃねーのか!?」
「アラララ、私の今の発言についてバカっていう事は不二の意思すらもバカって言ってるようなものだよぉ?だって地獄を見せてって望んだの、不二だもん。
ねぇ?こんなに不二が歪んでしまったのは誰のせい?それを償えれるなら腕の一本安いんじゃないかな?それに、これ一本であいつを堕とせる。脅しに怯えることもこの先無くなる。」
「ッ……。」
桃城は押し黙る。
「遠野、地獄は分かった。…俺の腕を壊せばいい。」
手塚が稀奈の目の前に自分の腕を晒す。
それを少しの間見た後、稀奈はその腕を掴んだ。
「……清い男は好きだよ?安心して?一瞬で終わらしてあげるから。」
「そうか……ッ!!!」
ポキンと音が鳴る。
ただ空しく、空洞に鳴り響いた音。
「はい、終了。お疲れ様。ちょっと早めの受験勉強でもすれば?」
「…あぁ、そうする。」
手塚は腕を押さえながら、稀奈から離れる。
「さて、他の人はどうする?」
「…だったら、俺が行くよ。部長にだけそんな思いはさせない。」
大石が決断して立ち上がった。
そしてゆっくりと稀奈に近づいて行く。
稀奈はそれを事務的に処理していく。
なんだかもう、此処にいるメンツはこれをしないといけない雰囲気になってしまった。
日本人にありがちな集団行動だ。
みーんなの腕を故障させて少々疲れ気味な稀奈。
「あー…ぁ、…そういえば私が物語に直接関与して物語の一ページの主役になったのは初めてだな。まぁ、不二の命令を受けて動いてる道具だから仕方ないか。
さぁ、これで君達は全てを終わらすことが出来る。コレ、あげるよ。有効活用するんだよ?」
「俺のお勧めとしては、今からでもそういうメディアの所に駆け込んだ方がええ。情報っちゅーんは生ものやからな。他のマスコミに先こされたら自分らの努力無駄になるで?」
「あ、明日。朝練には来て?ちゃんと不二も連れてくるから。お互い、誤解を解こうじゃない?」
そう言って二人は部室を出る。
残ったメンツは壊れた片腕を庇うようにして、ただ突っ立っている奴らだけ。
「白石も意味分かったでしょ?」
「おぉ…なんで気ぃ付かんかったんやろ。めっちゃ分りやすいやん。」
本当に恥ずかしそうに白石は顔を隠す。
「まーまー、これから気を付ければいいって。」
「しかし、ホンマ稀奈は怖いわ。何の躊躇いも無く人の腕をぶっ壊せるんやもん。一生とか…鬼や。」
「は?ちょっとちょっとちょっと、私だってそんなに鬼じゃないよ。確かに壊したけど、二年はリハビリして治療受ければ治る程度物だよ。」
「なんや…はったりかましたんか?」
「何を人聞きの悪い。私は選手生命を一生絶ったとは言ってないし、この先面白いテニスをする奴らを壊さないよ。ただ、その面白いテニスが誕生するのはかなり先に延びちゃったけどね。」
「稀奈はホンマに怖い。冗談抜きで、心の奥底から、怖い。」
「それって褒め言葉として受け取っておくわ。
嗚呼!やっと終わった下準備!!後は明日不二に躾をするだけ!…んー………稽古をつけるだけ?」
「本番なのにか?」
「んー………うん、本番中にも指摘は出来る。」
「その指摘を本番で受けるとか、恥ずかしい以外の何物でもないわ。」
「知ってる、分かってやる。でも私は全く恥ずかしくないからね!!」
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