Target 一氏ユウジ 03
「ひっとうじー!!って…どうしたの?昨日よりかなり顔色が悪いよ?」
一氏は心ここに非ずな状態だったのに、勝手に足が稀奈が居る公園へと動いていた。
本能だったのだろうか…。
「遠野…ッ白石…聞いてくれるか?」
「うん、聞いてあげる。」
「小春に…俺は嫌われとった…もう、何もかもがいやや。
遠野、自分は俺の支えになってくれるって言うた。確かに救われたわ…やけどッ小春に嫌われたら俺は、もう生きとる意味がない!!」
膝を抱えて泣き出す一氏。
その姿をは稀奈見て、白石と目配せ。
そして思いっきり息を吸い込み、
「…………生言ってんじゃねーよガキがぁ!!
金色小春に嫌われてた?当たり前じゃねーか!始めから虐められてる人を助けようなんて奴、そんな偽善者この世の何処にも居ねーんだよ!居たとしてもそいつは自分にメリットがある奴なんだよ!無償で他人助ける奴なんて居ねぇんだよ!!何かしらで利益を得てるに決まってんじゃねーか!!
この世は自分の損得で動いてんだ、そんなむしのいい話があってたまるか!!
白石が無実の罪で虐められてても動こうとしなかった奴だぞ!?そいつに希望を持ってんじゃねーよ!
金色小春に嫌われたら生きてる意味がない?そんなこと言ってんじゃねーよ!!そいつがお前を嫌っただけでお前の世界は終わるのか!?お前の世界はそいつだけで構成してんのか!?この世界にあいつだけしかいないことなんてあってたまるか!!
もっと周りを見ろ!今お前が死んだら悲しむ奴がいるんだ!!そんなことも分かんねーのか!!だからお前は生贄にされてんだよ!!」
「ッそんなこと!!……って遠野?」
筋が通ってる話を聞かされそれでも反論しようと一氏が顔をあげた。
しかしその視線の先には稀奈の姿が無い。
何処に行ったんだ?と周りを見てみれば白石の後ろから赤毛がヒョコンと見え隠れ。
どうやら白石の後ろに隠れているらしい。
「稀奈…何今更恥ずかしがっとんねん。」
「…白石、どういう事なんや?」
「んー…さっき稀奈が言いよったろ?ユウジが死んでしもうたら悲しむ奴が居るって、その代表が稀奈っちゅー話や。」
「ッ!?」
「ッ白石!そんなことわざわざ言わなくてもッ!!
……………………ッ、もう!一氏!!手当てするよ!脱いで!!」
白石の影から出てきた稀奈の顔はほっぺたを膨らまして奥歯を噛みしめて耳まで真っ赤にしている。
「お、おん…。」
そんなぎこちない顔をしながら稀奈は手当を続ける。
「……綺麗…。」
稀奈はポソリと呟いた。
「なん?」
「や、あのね…ものすごく不謹慎なんだけど、これだけ傷だらけの体なのに…一氏の体…綺麗だなって、白い肌に目立ついろんな色の痣、が…綺麗だなって思っちゃって……ゴメンっこんなこと言って。」
「いや…そう言われるやなんて思わんかったから…なんや複雑やけど、嬉しいわ。」
「うん…だって、昨日は赤かっただけなのに今は紫になっててそれに被せる様にまた新しい色。…自分の痣を見ても綺麗だとは思わなかったのに、一氏の見たらなんかそんな風に思っちゃって。」
「…明日、も…手当てしてくれるか?」
「君が来てくれたら毎日でもしてあげるよ。」
「そうか、ありがとな遠野。」
「―――って――んで…。」
「ん?」
「稀奈って…呼んで……!」
またもやほっぺたを膨らませる稀奈。
「…稀奈、また明日な。」
一氏はその表情を愛おしそうに見てからこの場を去った。
「うん、バイバイ。」
一氏を見送ってまた二人だけ。
「稀奈、また昨日と同じ顔んなっとるで?」
「…………だって…今日の私の演技、とってもアカデミー賞じゃな、い?」
「何言っとるんや、奥歯噛みしめてもニヤケが我慢しきれんで俺の背中に隠れたくせに。」
「息も止めてものすごく、頑張ったんだよッ顔真っ赤にしたことであっちは勘違いしてくれたし、フ…フゥッハハハッハハハハハハァ!!やっぱ無理!我慢できない!!
なんでこの私がとっても乙女になってんの!?なんで気づかないんだろう!一氏は!!私はそんな愛情に満ち溢れる性質してないっつーの!」
「…そう仕向けとるんが稀奈やろ。」
「ま、ね。でも玩具としては愛してるよぉ?
君だって一氏が堕ちる姿を見たいと思ってるんでしょう?だったらもっと喜ぶべきじゃないの?」
「稀奈のデレを少し俺にもくれたらええねん。」
「私のデレには裏があるけど?それでもいいなら、白石も可愛がってあげるよ。」
「見るだけで満足しとくわ。」
「そう言ってくれて私は満足だよ。私は君を壊したくなきからね。
フフフッさぁて、一氏は私を満足さしてくれるかな?」
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