Belly black | ナノ




Target 手塚国光 03


「………………。」
「……………………………。」
「……。」

終始無言。
このまま何も進展なしか?
しかし、ここは待ってなんぼ。
そのためなら無理やりでも気を長く持ってやる。

「…―――。」

「ん?手塚クン、何か言った?」

手塚がとても小さな声で何かを言った。
不意打ち過ぎて聞き取れはしなかったが、糸口は見つけた。

「俺は、間違っていたのだろうか…?」

「言って?私に、君の思いを聞かせて?」

今だけは聖母の様に、手塚を包み込む。

「俺は、大和部長から託されたこの部活を全校大会まで導いて優勝することを使命としてきた。
そのはずなのだが…何故、こんなことになってしまったのだろうか、
俺は俺の犠牲だけであいつらの抱える闇を俺が背負えば部活の雰囲気も前の様に戻ると思っていた。なのに…何故俺はここでこんなにも傷を負っているのだろうか、
何故、テニス部でない奴らから暴力を受けて俺は我慢してるのだろうか。
もう…何もかもが分らない。
俺は失格なのか?部長としても人間としても、俺の存在価値とはなんだ?
俺は、何も………無い。
あぁ…そうか、無くなってしまえば良んだ。
無くなってしまえばこんな痛い思いをしなくて済む、我慢しなくて済む、何も感じなくて済む。
なぁ…遠野、俺はどうしたらいい?」

「………よく頑張った。
誰にも頼らず、先輩の意思をここまでよく受け継いだ。
君はすごい、誰よりもすごい、誇りに思うべきだ。
でも一つ感心しない。君は部長と言ってもまだ中学三年生なんだ。まだまだ子供なんだ。子供がそんなに他人の闇までを背置くことが出来るはずないじゃない。
人生経験だって未熟なのに、自分自身の闇を抱えるだけで精一杯なんだよ。君は、君だけに限った話じゃないあいつら全員も同じこと。
一人で抱えることの出来ない愚民どもだったから、手塚クンに押し付けてきたんじゃないか。君は誰よりも尊くべき存在なんだ。」

「そんな大層なものではない。俺は、出来損ないの…人間だ。」

「出来損ない?そんなわけがない。君は完成された、いや全知全能の神から愛された存在さ、君は他者よりもあらゆる面で逸脱している。他人との距離感を計りかねていると言った方が正しいかな?
君は他者が自分とは違う存在だと感じているはずだ。疎外感を持ってしまったはずだ。それは君が出来損ないだからではない。周りの奴らが出来損ないだから、そう感じてしまうわけだ。
没個性。それは日本を表すうえで的確な表現だ。特に学校ではね。君はその没個性の為に躍進してきたと言っても間違いではないよ。……話がそれてしまったな戻そうか。
んー…君だって暴力を受けて平気な訳じゃないのにね、だって人間だもの。サイボーグじゃないから人並みに痛みはあるって言うのにね。ただ表現能力がその他の人よりも難しいってだけで、
君の歪んだ顔が見たくてテニス部は全校に広めたと言うじゃない。君は、全く何も悪くないのに、
君はまた多くの闇と接することになってしまった。数は…私だけでは受け止めきれない。君が受けている半分も私は受け止めれないかもしれない。
けど、一人だけは確実に受け止めたいと思ってる。
それはね、手塚クン…君の心だ。
私では君の闇を受け止めて支えることしかできない、けど…私はそれを糧にこの学校に革命を起こすことが出来る。
だから、手塚クン。私の手を取ってはくれないだろうか?」

「………俺は、……俺は言葉に甘えてもいいのか?俺の心を支えてくれるのか?」

「もちろん。
私に甘えなさい。他者に甘えることが出来ないならその分、私にしっかりと甘えなさい。私は君の全てを受け止めるよ。」

「ありが、とう…ございます……ッ。」

思わず顔を痛みに耐える様な曇った顔を浮かべてしまう手塚。

「あぁ、そんな顔しないで。
もし嬉しいなら私に君の笑顔、見せてくれないかな?でも無理しなくていいんだ。君が心から嬉しいと思ったときに私のその笑みを向けておくれ?」

「…承知した。」

「さぁ、手塚クンこの扉から出たら君はもう一人ぼっちじゃない、私…私達が君を支えてあげる。今日はもうお帰り?部活には出なくてもいい、私が許す。」

「…あぁ。」

手塚は痛む体を庇いながら教室から出て行った。
すれ違いに白石が入ってくる。

白石を見る手塚の表情はいつにもまして穏やかだったように見える。












「…成功したんやな。」

「ええ、万事に抜かりないわ。全て順調、順風満帆よ。」

「……なんや、その喋り方。ちょっと寒気がするわ。」

「…あぁ、ごめんねぇ?さっきまで手塚を甘やかしてたからイメージとしては聖母マリア様ぁ?
結構いい線いってたぜ?私の手塚を包み込むさま、初めて人を優しく受け止めたにしてはねぇ。」

「……大層なこと、したんやな。手塚クン…クワバラクワバラ。」

「なぁに言ってんの。私は人を諭すのは得意だよぉ。だっていつも諭してあげてるんだもん。」

「それは地獄に陥れる入れるための手段やろ。今回はその真逆やったやんけ。」

「フフフッ私に不可能は無ぁい!!私は全てに愛されてると自負してる!だからこそ転生も出来た!!だからこんな素敵な物語に参加できる!!
それって私が神々に愛されてないと実現しないでしょう?」

「…確かにな。」

「キャハハハ!もう青学なんてどうでもいいや!!素敵な玩具を手に入れることが出来た!だからこの学校、要らない。
白石、いい?」

「稀奈の仰せのままに。」

「ンフ、ありがとう。」


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