Belly black U 第08話
女の様な甲高い声がイヤホンから響いてくる。
柳を始めとする三人はその声に恐怖を抱く、
抱いて身構える。
稀奈は近くに居ないと言うのに。
「……誰だ?」
『えー?それ聞いちゃうのぉ?分かったって何にも面白くないじゃーん。柳ぃ、君の思考にはプラスな存在にならないのが、私だよぉ?』
「俺の思考にプラスになるかならないかは俺が自分で決める。そちでの勝手な判断をするな。」
『親切心で教えてあげるって言うのにぃ、ざぁんねん。
でも君が良いなら教えてあげる。何?何が聞きたい?なぁんでも答えてあげるよぉ?』
「…君は、誰だ?」
『遠野稀奈だよぉ?』
「偽名の確率88%。」
『何故?』
「そんな名前の生徒この学校には存在しない。」
『でも遠野稀奈というモノは存在してる。私の存在を否定するな柳蓮二。
偽名でも何でもいいじゃない、君が私の正体を突き止めればいい話でしょ?』
「…そうだな。」
「待って下さいっすよ。柳先輩。俺、こいつに聞きたいことがあるんすけど。」
赤也が柳に突っかかる。
「焦るな赤也。俺も聞きたいことはまだある。」
『何かなぁ?君たちの声は皆聞こえてるから勝手に喋っちゃってぇ。』
「何故お前はこいつの味方をしている?」
『わぁお、もうそんな核心突いたこと聞いちゃう?えっとねー、幸村クンは私の玩具だからぁ!』
「玩具…だと?」
『そうそう玩具ぁ!!君たちが捨てた玩具を私は拾って私の所有物にしたってことぉ!』
「ッ!?人を物の様に扱うとは――」
『たるんどる!!ってかぁ?』
「「「ッ!?」」」
『キャハハハ!!思わず声を失ったぁ?そうだよねぇ、君たちは私の事をひっとつも知らないのに、私が一方的に君たちのこと知ってるんだもんねぇ!
でも柳ぃ、君がいつもしてることだよねぇ!!』
「なぁお前、俺らをバカにすんのもいい加減にしろよ!!出てこいこの野郎!!部長なんかの味方をしてる気ちがい野郎が!!」
稀奈の態度に痺れを切らした赤也が噛み付いてくる。
『…ハァ?お前ら私にそんな口のきき方してんじゃねーよ。お前らの今後は私の手に平にあんだよ。分かってねーならそのままでいいよ。理解しないならそのままでいいさ。
けどな、納得してなくてもお前らの最後はサイテーなモノしか約束されてねぇんだよ。』
「何様のつもりだ!!」
『稀奈様だよ。
いいか?今回幸村クンに言わせた台詞は私からの宣戦布告だ。
柳は私の正体を暴くところから始めればいいよ!!その後に真実でも調べてみれば?』
「真実だと?」
『そう真実!真実なんて誰でも分りきることだけど、此処の人達は誰も分かって無いらしい!!
バッッカじゃないの!?キャハハハハハハハハ――グシャッ
柳が持っていたイヤホンを握りつぶした。
「…すまない、思わず手がかりを潰してしまった。」
「しょうがないっすよ。俺たちをバカにした笑いを聞いて平気な方がおかしいっす。」
「ふむ…俺たちをあれだけバカにしたんだ。少し本気を出さしてもらうか。」
「蓮二が本気を出すか…だったらもう俺が手を下すまでも無いだろう。」
「わー!柳先輩怖ッ!!」
「赤也が怖がらなくてもいいだろう。
精市、ソイツに会うのなら言っておけ、お前の味方をしたのが運のつきだと。」
「…………。」
幸村はこの場から離れる絶好の機会だと思って立ち上がる。
「ちょっと待って下さいっすよ。さっきの奴の腹いせに殴らせてくれねぇっすかね?」
赤也は幸村を逃がすわけがなく、去り際の幸村の腹部に拳をぶつけた。
幸村はやっぱりか、と言う感じて甘んじて受けた。
幸村自身は全く悪くないのにね。
グシャ―――
「……あーぁ、壊されちゃった。高かったのになぁ…。」
「……あー、笑うた。もうあっちの音声聞けへんのか?」
「まさか、壊されたのはこっちの音声があっちに聞こえる音声だけ。あっちの声を拾う機械は壊されてないよ。」
「用意周到と言うべきか、なんと言うべきか。流石やなぁ稀奈。」
「ま、ね。今のところの一番のお気に入りの玩具は幸村だからね。扱いは最高級だよ!!」
「………ふーん。」
『――イツに会うのなら言っておけ、お前の味方をしたのが運のつきだと。』
「…クスクスクス、はぁい!心得ましたでございまぁす。
お前らもいじめって言う愚かな行為をしたことを後悔すればいいよ!!そして私がそれを遊びと認定したことが運のつきだったよ。
さぁ、最後まで敵としていてくれよ?」
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