Belly black | ナノ




Target 向日岳人 05


「さて、どうしよう。
…お前らは俺を嫌ってるし、俺もお前らが大っ嫌いだ。
だから俺は、復讐を決めた。」

「復讐…やて?」

情報の整理がついに追いつかなくなったのか、たどたどしい言葉を紡ぐ忍足。

「そう、でもなー、お前ら金持ちだし、俺だけの力じゃどうしようもねぇかと思ったけど、俺の駒の力を使えば簡単だった。
これから少しずつ蝕んでいかれるから…覚悟、しとけよ?」

「俺様の家が、お前ら…如きに。」

「ハハッ跡部ぇ自分を高く評価しすぎじゃねーのか?おまえん家ほどの企業は他に無いかもしれねーが、ワンランク下がれば、ごまんと居んだよ。それが集まればひとたまりもねぇだろ?
それに…お前の親父、証券会社なんだろ?だったらその会社の株を買い占めて、お前の会社を乗っ取ったら、お前…落ちるだろ。」

「!?」

「自分を誇示しすぎるのも後が大変だよなぁ、自分を誇りに思うって素敵だよなぁ!誰にも縋れない、媚びれない、そんな状況の中でお前は息、出来るのか?」

「ッバカにしてんじゃねぇえ!!」

跡部が咄嗟に岳人に殴りかかる。
今回岳人はこの拳を避けることはしなかった。

「クックククク…跡部ぇ…終わったなぁ。俺をこんな大勢の前で殴って、虐められないと思ったら大間違いだからな?
きっと明日の靴箱にはたくさんのラブレターが入ってるんだろうなぁ、剃刀付きの。
きっと跡部の席にはたくさんのプレゼントが置かれるんだろうなぁ、刺激臭のするゴミが包まれて、
先生たちは一生懸命情報を外に漏らさないようにしてくれるだろうねぇ、だってお前いい金づるだもんな。
学校以上に情報が閉鎖的なとこは無い!!
お前の親は日々蝕まれていく会社の処理に追われてお前の話なんか歯牙にもかけないんだろうなぁ、 ド ン マ イ☆」

ニコッと笑って、無表情。
無機物を見るようにメンツを見据える。

「……ッ。」

「さぁさ、これにて終焉だ!!俺の舞台に付き合ってくれた屑に大きな罵声を!!」

岳人が始めと同じように、大きな動作でお辞儀をする。
そして聞こえてくるは、大きな拍手と、嘲笑う声。

「キャハハハハハ!!岳人お疲れ様ぁ。」
「自分、やるなぁ。稀奈に負けへんとちゃうんか?」

「おー!レディース&ジェントルマーン…基、稀奈に白石。
どうだった?俺の劇。」

「最高、主演もだけど、助演共のオーソドックスな反応にお腹を抱えて笑わしてもらったわ。
岳人、喜びなさい?私の一番のお気に入りの玩具にしてあげる。」

「ありがたき幸せ…ってか?」


「自分ら…なんなん、なんで……岳人が、そんな楽しいそうな…俺、は…、」

「あー!岳人に死ねばええっ言うた忍足やないか!!どしたん?そんな目ぇが飛び出そうなほど目ぇ見開いて、そのまま穿り出したろうか?」

「稀奈ー、金ちゃんになりきれてへんでー。」

「テヘペロ、わざとだよ。」

「だろうな。ま、いいさ、これから俺は物語から身を引くぜ。今度の主演はさっき俺を殴ってくれた跡部だ。
俺は稀奈達と観客になるぜ。」

「おいでー、ま、岳人ほど面白い脚本は用意されてないかもだけど、暇つぶしに傍観するのにはもってこいの最低限のものにはなるんじゃないかな?」

「期待しすぎない方が、身のためや。」

「んなの分かってるぜ。俺以上の考えを持ってるなんて…稀奈位だろ。」

「ま、ね。君には脱帽するよ。人生経験もそこらの奴らと変わんないだろうに、」

「俺は今を精一杯楽しむために、培ってきた才能だぜ?人生経験なんて関係ねぇ。」

「確かにね。じゃ、カーテンコールといきますか?」

「何も反応せーへん助演を見てても楽しゅーは無いが、最後まで見といてやるわ。」

「じゃー、俺は主役だけど、こいつらを紹介するために司会に回まわるぜ。
跡部景吾、次の主役だ、適当に期待してるぜ?
宍戸亮、幼馴染の癖に俺を殴ってきた愚者。
滝萩之介、大人ぶって周りの意見に流された人形。
芥川慈郎、現実から目を背けて自分の殻から出ることすらできなかった愚禽。
鳳長太郎、後輩の癖に力いっぱい殴ってくれたウドの大木。
樺地宗弘、わざわざ格闘家のコピーをしてまで俺を殴りたかったのか?哀人。
日吉若、暴言を吐いてくれてありがとう、おかげで俺の語彙力も上がったかもな!

そして最後、忍足侑士…俺は、お前をずっと……信じてたんだ。俺、が虐められ始めた時はまだ…助けてくれた……だから!!」


岳人が忍足の所だけ感情を露わにした。
悲しそうに、でも純粋に笑おうとしてる。
そんな光景を見た忍足は、許されるのかと期待を胸に静かに秘めた。

「…岳、人……。」

「だからッ……………――

絶対に許さねぇ、この裏切り者。」




一気に岳人の感情が氷点下まで下がった。

「ッ!?」

「お前、許されると思って期待した?
誰が許すかよバーカ。途中で裏切られるぐらいなら始めから居ない方が良いんだよ。そんな簡単なことも分かんねぇの?侑士は本当にバッカだな。
心を閉ざしてばっかで常識が見えてないのかな?テニスでそんな技を作る前に一般の人の気持ちを理解しやがれ、裏切り者が。」

「あ…あ、ぁ……ッ。」

岳人は怯えた忍足の表情を秒間見つめ、満足したろうですっきりとした表情で稀奈達が立っているところまでかけて行った。


「さ、次の公演までゆっくりしようぜ。」

「そうだね!次作までに今作の内容を整理しとかなきゃ。」

「やったら、カメラで撮ったやつを見ればええやん?」

「当たり前じゃん、見るよ。DVDが焼切れるぐらいまでね。」

「でもそればっかじゃ飽きるぜ?俺、飽き性だしよ。」

「大丈夫、私も飽き性だから、それに飽きたら…主人公を一人にするんじゃなくて、二人、三人に増やせばいいのよ。」

「稀奈、頭いいな、それ!」

「怖いなぁ、自分ら。」

「フフッそれは君もでしょ。次作ではしっかり傍観するんだよ?」

「精進するわ。」


「じゃキャスト陣、次作期待してるってことでー。よろしく。
あぁ、俺の作品に泥を塗るようなものにしてみろ。その時はこの三人で――」


「「「テコ入れするよ。存分に、たとえ嫌がっても、」」」

「引っ掻き回されたくなかったら、私たちを楽しませてね?跡部クン?」



――――
2012,02,09〜2012,02,23

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