Target 向日岳人 04
氷帝テニス部と岳人の対立。
散々睨み合って、先に表情を崩したのは岳人。
稀奈の正体を知った時の様に笑い狂う。
「ハハッハハハハハはあアハハハハハハアハハハハ!!!」
「「「!?」」」
「どうもどうも、どうも…この度は俺の喜劇に参加してくれて心からお礼をいうよ。アリガトウ!」
ワザとらしく、深く頭を下げる。
「誰…だ?テメー…。」
跡部が信じられない物を見ているように言う。
「誰?…誰!!誰って聞くか?跡部ぇ、俺は俺、向日岳人だ。」
「バカ言ってんじゃねー!!岳人がそんな…お前みたいなやつな訳ねーだろ!!」
「俺みたいなやつじゃない?じゃぁ、俺は誰なんだ?言ってみろよ。」
「ッ……!!」
「なぁ、自分……次俺の前に現れたら死なすって…言ったよなぁ?」
「クククッ言ったなぁ、で…どうするんだ?」
「死なすっちゅーんは嘘ついたわ…俺かて自分の様な最低な人種にはなりたくない、やから…俺の暴力大人しく食らっときぃ。」
忍足は地面を蹴って一気に岳人に詰め寄る。
いつもなら岳人は目を瞑ってしゃがんで、その暴力に耐えるだけ。
だけど今回はもう違う。
「もう…疲れたから、殴られてやんねー!!」
岳人は自身の身軽さをいかし、忍足の拳を避けた。
殴る標的を失い、バランスを崩す。
その隙に、岳人が忍足を全身を使って拘束し、さらに腕関節を締め上げる。
「イッ!?」
「俺がいつまでも大人しく殴られるだけの存在だと思ったら、大間違いだぜ?侑士ぃ。
俺は今までお前らの拳をなんで耐えてきたか分かるか?」
「ん、なもんッ分かるか!!離せド阿呆!!」
「ド阿呆?阿呆だなんて大阪人に馬鹿って言うくらいの禁句なんだぜ?関東の人にとってはな。馬鹿だなぁ…侑士は、」
キリィと閉める力を強める。
「あ゛あ゛ぁ゛ ああ !!!」
「痛かったかぁ?ワリィなぁ、久々に技かけたから力加減が分かんねぇんだよ……腕、壊しちまったら…ゴメンなぁ?」
「ッ!?」
「忍足を放せよ!!」
「放せ?なんで俺がお前らなんかに命令されねぇとなんねぇの?
お前ら、立場…分かってんのか?」
「……分かってねぇのは…テメェじゃねーのか?アーン?」
「それは…なんでだ?」
「俺様はお前より権限を持ってる。
そしてお前は今やこの学校の問題児だ。他人を虐めた…最低な奴だ。そんなやつをこの学校から追い出すことって簡単だと思わねぇのか?」
格好つけて、言い放つ。
少し前なら表情、仕草、すべてにおいて完璧なキングに見えていたのだろうけど…今は、
ただの愚かな民にしか見えない。
「!?……ククククククク…ハハハ、アハハハハハハ!!!
跡部、お前最ッ高!!」
「ッ!?何がおかしい!!」
「だってお前ッ、自分のこと最低ってッッハハハ!!」
「どういうことだ!!」
「ククッここまで言っても分からないんじゃぁ、跡部のインサイトも落ちたもんだな。見てみろよ…絶景だぜぇ?」
クイッと顎で運動場をさし、見るように促す。
「?…………!?どういう…事だ?」
そこに広がる光景は、全校生徒がこちらを向いていた。
跡部達、テニス部を今すぐ射殺さんとするような目だ。
岳人は忍足を放り、自身もフェンスへと近づいて行った。
そして運動場を覗き見る。
片手をふってニコリと笑う。
その瞬間運動場が湧きだす。
黄色い声援、久しぶりに岳人に向かってされるもの。
ファンたちも久しぶりってことで、いつにも増して、五月蠅い。ま、これもご愛嬌。
「こういうことだ。俺は誰も虐めてねぇし、悪いこともしてねぇ。
むしろ、俺はお前らより…崇拝されてるぜ?盲目的に…な?」
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