Target 向日岳人 03
「向日様!!」
会長らしき人が岳人に近づく。
「会長…?」
「ご無事でしたか!?」
「あぁ、だけど…俺を庇ってくれたこいつが…。」
「なんで、なん…なんで岳人がみんなに嫌われなあかんのんッ!!姉ちゃんたちも岳人を虐めに来たんか!?」
「…遠山君……違うわ。私たちは皆向日様をお慕いしてるの。」
「なん?あのアホベっちゅーやつやないの?」
「それは…向日様に言われて表向きそうしてるだけよ。
……向日様ッ…向日様はまだ、このようなご自身が辛い環境に身を置かれるのですか?」
「俺は、俺があいつらに勘違いさせるようなことをしたんだ。全部俺のせいなんだ…だから、アイツらに真実を言った時のショックを軽減させたいから…タイミングを見てるんだ…。」
「ですが!!」
「そう、…俺も堪忍袋の緒が切れたって言ったら、いいのか?
俺以外にもこんな…遠山までをこんなにして…会長、俺に力を貸してくれるか?」
「ッ私たちはその言葉をお待ちしておりました。」
「俺はなんて残酷な奴なんだ。散々侑士達を躍らせて…タイミングを計ってるって真実を理解した時の傷を深く作る様にして…たった一人…この遠山が傷ついただけで俺は今までの俺の考えを捨てて復讐しようとしてる。」
「向日様は悪くありません!向日様は努力しておりました。私たちはちゃんとそのお姿をみております!」
「…あり、がとう…ッ。そんな俺の考えた復讐劇、付き合ってくれるか?」
「ええ、向日様をお慕いしております。その向日様が残酷だろうと、私たちはついていきますわ。
私たちの力、いえ…私たちの家の力を存分にお使いください。」
「ありがとう。」
向日はこれまでに見せたことのない笑顔を見せた。
会長その他諸々はその笑顔にノックアウトされながら屋上を去る。
それを確認した白石は再び上から降りてくる。
「自分…がファンクラブをしめとったんやな。」
「ま、な。
俺の部活からいじめを受け始めてからファンクラブの声援が今みたいにうるさくなったんだぜ?
ま、俺の少しのうっぷん晴らしだ。
その声援にうるさいと言いながら満更でもなさそうな顔を見るのが、楽しかったなぁ。
その声援すらも虚実だというのに、な!全く、アイツらはホント面白い駒だ。」
「ホント、私もこれが分ってから楽しすぎる生活を送らせてもらったよ。
あと、君が無実なのに虐められてる姿を見て、二度おいしい。」
「あー、結局は遠山が一番この中で得したのか。」
「フフッ私は自分に対する損得勘定なら誰にも負けない自信があるよ。」
「しっかし、遠山の怯える真似うめぇな。なんだ?お前もここに来る前…そうだなぁ……虐め、で遊んだな?」
「…イグザクトリー、そうだよ。遊んだ。白石とね?勿論復讐してここに来た。計画通りに進んじゃって面白くもあり面白くなかったなぁ。」
「ふーん、まぁ過去のことなんてどうでもいいか、その楽しさが断片的に覚えときゃそれで充分だろ。
じゃ、俺は帰って行動するから。」
「あら、行動が速い。もう少しその底辺を楽しめばいいのに…。」
「クソクソ!遠山、俺の体力が限界なこと知っててそれ言うか?」
「言うよ?まぁ、でも今は君の復讐劇の方が興味あるから…その公演が楽しみ。」
「俺の劇は高いぜ?」
「いくら?」
「お前の全部。俺お前のこと気に入ったんだ。」
「ふーん。私も岳人のことを気に入ったし…白石の全部をあげるわ。」
さらりと回避。
「なんで白石なんだよ!!」
「なんで俺やねん!!」
「岳人はお前のって言った、私のとは言ってない。
私は誰にも縛られない、縛られたくもない、…胸糞悪い。
岳人、調子に乗るのもいい加減にしてよね。私は我慢強いわけじゃないのよ?」
「……肝に銘じとく…。」
「フフフッいい子。
で?開演はいつ?演出・脚本家・監督、そして主演の向日岳人クン?」
「ククッ…レディース&ジェントルマーン…ってか?
公演は明日だ。明日の朝9:00開演。場所はここ。一回限りの素敵なショーだ。来てくれるか?特等席を作っといてやるよ。」
「ええ、勿論。
私が気に入るような物だったら私のお気に入りの中で一番、大切な玩具として遊んであげる。」
「それはそれは…名誉なこって。」
開演すると宣言された今日、テニス部レギュラーは屋上に居た。
観客で?
答えはNO。
助演キャスト、そしてキーマンとしてだ。
キーマン達は屋上にて憎むべきあいつを睨んでいる。
あいつと言うのは今回の劇の主演、向日岳人。
真っ向から対峙している。
岳人の方もみんなを睨みつけて対抗する。
そんな様子を白石と用意された特等席で眺めている稀奈。
ニヤリと微笑み、
ニタリと嗤う。
「さぁさ、開幕。」
「喜劇、悲劇、どちらに傾くんか。」
「「それはそれはキャストの心次第。」」
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