Belly black | ナノ




Target 向日岳人 02


あれ?この感じ…。

白石は気が付いた。
これは過去の自分とデジャブする。話の流れが自分と同じ…。
いや、これは偶然か?
違う、必然だ。
ということは岳人は稀奈の本性を知ったうえで金ちゃんと話していることになる。
だって稀奈が金ちゃんのまま「架空」とか「因縁」なんてアホな金ちゃんが使わなそうな言葉使ったんやもん。
けど、向日はその言動をスルーしとる。

白石の中で謎が解けた。
稀奈がなんでこんなに傍観を楽しんでいたのか、がってんがいった。

「やけど…本当に死にたかったんか?あの眼鏡野郎に指示された通りに死んでやろうと思ぅたんか?
それはないやろ、やって岳人…私と同じにおいがするんだもん。」

途中から素の話し方に戻った稀奈。
それをすると普通は財前のように驚くのだが、岳人はその稀奈の様子を見ても動揺しなかった。
動揺するどころか、笑っている。
お腹を抱えて大笑いだ。

「ハハ…アハハハハッ、ハハハハハハハアハハハハハハハハハははあハハハハハ!!!!!!
やっぱりか遠山!!お前もこっちの人種だったか!!
お前の方から俺に近づいてくれるなんて光栄の極みだぜ!!」

「光栄だなんてね。私も君みたいな人に会えるとはここに来るまでは思ってなかったよ。
東京まで来たかいがあったってもんだね。」

「クククッ、お前、ほんっと面白いな、俺がもう一人居るみてぇだ。」

「それは…前記のことを合わせたら自画自賛と受け取るけど?」

「あぁ、こいつはわりぃな。
でも、自画自賛として受けとってくれても構わねぇぜ。」

「君は、どうしてそうなった?私は、前世の名残だけど…。」

「ぁあ?俺には前世なんてねぇよ。あっても覚えてねぇなぁ…俺は、俺だ。それ以外の何者でもねぇ。
…オイ、白石蔵之介お前もそこに居るんだろ?出てこいよ。同族。」

岳人が白石を呼ぶ。
白石も同族では隠れる意味は無いと思って、すんなりと登場。

「自分、えらい変わりようやなぁ。」

「ククッお前、俺の本性に今の今まで気づいて無かっただろ。」

ニヤァと白石の失態を笑う岳人。

まさかあの岳人がこんな風に笑うだなんて、と白石は後ろに少し後退する。

「おいおい、今更俺にひいてんじゃねーよ。まぁ?その顔が見たくて俺は今までお前らにも隠してたっつーのがあるんだけどな。
遠山が始めから俺の正体を知ってたんだよな、つまんね。」

「私が君と言う存在に気が付かないとでも思ったの?甘いねぇ。」

アハハハ、と岳人がわらう。
クスクス、と稀奈がわらう。

「白石ぃ、おまえもさ、私みたいに傍観も楽しめばよかったんだよ。」

「…次からそうすることにするわ。」

「そうしろよ、次から俺も混ざるけどな。」

「だよ、さっさとこの茶番も終わらしてよ。」

「そうするよ、遠山…お前泣きそうな演技できるか?」

「…楽勝。
んー…この場合、白石は邪魔かなぁ……ちょっとまた隠れてて?」

「ハァ?なんでそないおもろ無さそうなことを。」

「白石、お前はバカだなぁ。あ、大阪人にバカは禁句かゴメーン、私、バカなもんで!
でもなぁ、私は私のことを優先したいしねぇ。」

「そうそう、お前ちょっと邪魔なんだわ。それに…この足音聞こえるか?」

岳人にそう促され白石は耳を澄ます。
聞こえるのはたくさんの足音、それが屋上に向かってくる。

「ふぇっ…ッ!」

稀奈が泣いている演技を始める。
岳人もそれを慰めるように演技を始める。

「おい、白石此処に何もできないお前が居たら、お前は俺の敵であるって判断されるぜ?
大人しく遠山と俺に従っとけよ。なに、損はさせねぇぜ?」

白石もここまで言われてひかないバカではない。
率先して引いてやる。
ここで自分が居たら濡れ衣を着せられる確率が高い。
現に白石がここを動かない様子を見て稀奈がニヤリと笑っているから。

そして白石が身を隠して程なくたくさんの人が来た。
それらは全員、女子生徒。
もっと詳しく言うならテニス部ファンクラブ会員の幹部たち。

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