Target 向日岳人 01
天気がいい。
二人は屋上へ続く屋根の上でゴロゴロと転がってだらけて、リラックスしていた。
どの学校の屋上か、
その屋上は氷帝学園の屋上。
稀奈と白石は氷帝学園に転校し、そこで平和な日常を過ごしていた。
普通にテニス部に入って、楽しい楽しい時間を過ごしていた。
二人にとっては平和な日常だったろう。
しかし、その裏では虐めがあった。
向日岳人、そいつが虐められている。
二人は傍観を決め込んで、その出来事には首を突っ込まなかった。
稀奈は傍観を出来ると言うことで十分楽しめたが、
白石は傍観を楽しむという発想は持っていなかったので、あまり面白くなかったらしい。
「なぁ、稀奈ー…おもんないわぁ。
俺は首ツッコんでかき回して、最悪な展開を見たいんやけどなぁ…。」
「そーかねー…白石、君は…なにも見えてないんだねぇ。」
「…なにを、見ればええんや?」
「光に私が言ったこと覚えてる?」
「……残念ながら、覚えとらんわ。」
「残念な脳味噌だねぇ…蟹味噌に変える?」
「すまんなぁ、俺の脳味噌は過去の完結した物語の断片は思い出さんのんや。やって、覚えとるだけ無駄やろ?新しいこと、覚えな。」
「ふーん、君はそのパターンか…。
じゃ、教えてあげるよ。『第三者のくせに事の顛末を登場人物より詳しい』ってね?」
「あぁ、そんなんも言いよった気ぃするわ。それで…それがどしたん?」
「それが、今から分かると思うよ?」
「ハァ?いm――」
「シィ…。」
稀奈が人差し指を立て、白石の唇に当てる。
そして、間もなくして扉の開く音が聞こえた。
二人の言い争っている声が聞こえる。
「ちょ、侑士!なんで!?」
「自分しつこいで?」
「俺はッなにも――!!」
岳人が何かを言いかけた時に忍足は岳人の胸ぐらを掴み上げた。
「岳人ぉ、自分がそんな奴やとは思わんかったわ。この先、金輪際…俺に近づかんといてくれな?」
「な…侑士っ、俺は!何もしてないって!!信じてくれよ!!」
「すまんなぁ…あ、こんなやつに謝らんでもええんか。
俺はな、自分の目で見たもんを信じおうと思うて、自分の味方にも跡部達の肩入れもせーへんかったけど…自分のあれを見てもーたら、自分の味方になんてなれへんわ。」
「俺、俺はッ…。」
「なぁ、居なくなってくれへん?俺がお前とダブルスくんどったことが黒歴史になりそうや。俺の人生の汚点や。
やから…居なくなってくれへんか?」
両手で胸ぐらを掴み直し、そのままフェンスの近くへと移動する。
「やめっ…!!」
「なぁ、怖いか?生と死の狭間で俺に命を握られとるんやで?」
「やだッやだ侑、士!やめろ!!」
「ホンマ自分は自分勝手やなぁ、自分が同じことして、例の子は助け求めたんやろ?なのに、自分はやめへんかった。最後まで実行したんよなぁ?」
「だから、俺はッなにも!!」
「その台詞、聞き飽きたわ。」
忍足はその言葉を吐き捨て、フェンスに岳人を投げつけた。
「グッェ!!」
「自分、死んでくれへんか?もう、目障りやねん。ホラ、消えぇ?そこから飛び降りたら簡単や。
今度俺の前に姿現したら、死なすで?」
その言葉を最後に忍足は屋上から去って行った。
一人残された岳人。
静かにフェンスの向こう側を見つめる。
そして、手をかける。
その光景を見ていた稀奈と白石。
「な、コレ止めんと玩具が減るで?」
「うん、止める。白石はここに居てね?」
稀奈は白石に向け笑顔を放ち、屋根から飛び降りた。
「遠山…。」
「なぁ、岳人ーなんでそんなとこに手ぇかけとん?」
「お前も…俺のこと殴りに来たのか?」
「そんなことせんよ!!やって岳人は悪ぅないやん。」
「は、なんで?今の侑士の言葉聞いたんだろ?だったら――」
「ワイは分かるんや、やって岳人からはそんな悪い雰囲気感じんのや。架空の因縁を付けられたのが妥当なんやろ?」
「クソクソ、お前卑怯だな。
俺が悪くないって知ってて、今まで俺を笑ってたのかよ…ふざけんな!!
なんで助けてくれなかった!!」
[ 57/77 ]
[*prev] [next#]
[目次]
[しおり]