Belly black | ナノ




Belly black 第15話


横一列に並ぶ。
いったいこれから何をするんだろう。

予想はついている。
これから頭を下げるんだろ?
謝罪をして許して貰いたいんだろ?

そんなことはさせないよ?

「白石…金ちゃん……ホンマ――」

「「「「すま―「ぃゃ…や、っいややぁあぁああ…」

言い終える前に稀奈が叫ぶ。
一応他の病室には迷惑をかけないようにと一室に響くぐらいの大きさで。

だってこの声に看護師さんたちが気づいて来たら面白くないじゃないか。

「いややぁっ白石、白石白石、あっあ、ワイはっ…ワイはぁっっ。」

椅子から乱暴に立ち、白石が寝ているベッドのすぐ横でしゃがみ込む。

「もう、もういやや、白石と一緒に逃げれたって終わったって思ったのに…っ
もう、殴らんといてっ、もう痛いんはいややぁっぁあぁ。」

「金ちゃん。落着き…。ほら、おいで。」

声をかけられた稀奈は顔を上げ、白石のベッドに腰を下ろし上半身を白石の体にもたれさせた。
不安そうに白石の服の裾を握っている。

「白石白石ぃっぅっふ、ぇ…。」

顔を白石の胸に押し当て声を殺しながら泣く。

「大丈夫や、大丈夫。俺が守ったる。」

「うんっ。」

ポンポンと背中を叩いてやる。

「ほら眠り?今日は検査ばっかで疲れたやろ?」

「うん…っ―――――――スゥッ…。」

眠ったようだ。

「で、謙也何の用や。謙也だけやない。お前ら全員や、何しにここに来たん。」

先ほどの稀奈に向けていた慈愛に満ちた表情は何処に行ったことやら、
今の顔は睨みつけるよな、そんな感じ。

そんな表情に圧倒されながらも謙也達は自分たちの目的を伝えようと言葉を紡ぐ。

「俺らは――「分かっとる。謝りに来たんやろ?」

「…せやからホンマ――「今、謝らんといてくれる?」

二度も台詞を遮り白石はより目の鋭さを増していく。

「っ!?」

「今謝れても俺はお前らを絶対に許せへん。
許せる訳がないやろ。
俺らは自殺して、やっと自分らから解放されたと思ったのに、目の前にいけしゃあしゃあ出て来よって。
こっちの身にもなってみぃ。」

「っ……。」

「出てけ、早よ…出て行き。」


スッ――っと入り口を静かに指差す。

謙也達は大人しく出て行った。
最後に出て行ったのは財前。
出ていく間際、財前は病室内に振り返った。

白石と目が合う。
そして白石が口パクで伝える。

『一人でもっぺん来てな?』

「っ!?」

ニィッと口角を上げた。

足早に財前が出て行った。


そして静寂。
稀奈が上体を起こし座っていた椅子へと戻った。

「最っ高、とってもいい気分!!」

「せやなぁ!!謙也ら最高で最上な顔しとったな!!」

「フフッ長いこと耐えてきたかいがあった。」

「ホンマこの時のために、俺らは耐えたんやもんな。」

「そうだよ。
…つかなんで白石は取り乱さなかった!!私だけとか恥ずかしかったじゃない。」

「ええ演技やったで?
それに俺はちゃんと謙也らは拒否してたからええやろ。結果的には同じや。」

「そうだけど…フフッ君のセリフの遮り具合素敵だったよ。しかも二回。」

「お褒めにあずかり光栄やん。
自分も一発目ので謝罪遮ってしもうて俺吹き出すかと思ったわ。」

「んふ…あそこで謝らしたらこの物語終わるじゃない。」



「……失礼します。」

言われた通り一人で戻ってきた財前。

「さて、傍観者…どうでした?楽しかったかな?」

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