Belly black 第09話
「……傍、観…?」
ゆっくりと上半身を上げる。
「そう、傍観ー。物語の顛末をずっっと見てるだけ、登場人物に関わったらダメだよ?登場人物がどんなに辛い目に遇っていても、
目を背けたくなる光景も目を逸らさずに見るんだよ。
傍観ってさ、チートなんだよ。第三者のくせに事の顛末を登場人物より詳しいんだ。他の視点から見るってことが作用してるんだろうけどね。
最後の最後で傍観者は登場人物になることを許される。
そこで悪い方を正論を言いまくって精神的に罵る。『なんでこんなことも分からなかったんだ』と、
でも反論される。『気づいていたなら教えろよ』と、
で傍観者はこう言い放つ。『君たちの問題だろ』と、
そこでまた悪い奴らは顔を歪ませるんだ。
なんて愉快。
物語の序章から良い奴が苦しむ姿を見れて、最終章では悪い奴らが苦しむさまを見れる。なんて美味しいんだ。
他人の不幸は蜜の味ってね。」
こんなにも楽しそうな役目、光に譲るよ。
と笑顔で言った。
「……悪い方っていうのは…?」
状況が上手く掴めない。
「んー誰だろうねぇ?白石かな?ほら、腹黒ってこと隠してるし。」
「んなアホな。悪い奴らは謙也らや。
俺、被害者であって決して加害者やないもん。俺、一回も手ぇ上げたこと無いで?」
「だ、そうだ。
こんな質問にもならないような質問をしてきて稀奈ちゃんビックリー。」
「…じゃぁ、俺は――。」
だんだん分かってきた。財前は、
「うん、さっきまでつるんでた謙也とかその他諸々の敵になるんだ。」
最後の最後、謙也たちを罵る役目。
「っ―――。」
「あーでも君って謙也よりの奴だったんだっけ?
だったら辛いよねぇ、そいつらを罵るって、辞めたい?」
「辞めt「ダァメ、辞めさせねーよ?」
辞めたい、やりたくない。
そう言いたかった。
一緒につるんでいたのに、仲良くしていたのに、先輩を罵るなんてできない。
って思ったのに、
「ねぇ、今何考えた?仲良くしていた先輩を罵ることはできない。
そう思った?」
「っ。」
「……思ったんだね?君は矛盾の塊だなぁ。
そんな持論を持つ君はなんで白石のことをこんなにすることが出来たのかな?
白石だって先輩でしょ?
白石とだって仲良くしてたんじゃないの?
それなのに白石には暴力ふるって暴言を吐けたの?
ウフフフッおっかしー。」
ケタケタと財前の愚弄な行為を嗤う。
財前はもう一度泣きたくなった。
そんな中稀奈の笑いを止めるよう白石から言われる。
「稀奈、もうその辺にしとき。」
「………はーい。」
つまらなそうにその辺りの椅子に座る。
「なぁ、財前?意地悪して…ごめんな。」
白石が椅子から立ち上がり財前の横へと座る。
そしてゴメンな、と
「…え?」
俯いていた顔を上げた。
「意地悪して、ゴメンな?
稀奈も悪気があったわけやない。元々あんな性格なんや、俺から謝っとくゴメン。
そんでありがとう、俺の味方になろうとしてくれて。俺めっちゃ嬉しかった。」
「部長…っ。」
「これから、俺はみんなの誤解を解いていく。
解いて、また仲良うなったる。
それまで辛いやろうけど、な。」
白石は苦笑する。
「頑張ってくだ…っ!?」
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