楽しんでるのはどっち
四天宝寺から転校して稀奈が言う通り東京の学校に行くことになって稀奈と俺と、二人だけで上京したんや。
親らは来とらん。わざわざ猫かぶりを家の中でするんも疲れてきた頃やし、のびのびしたかったしな。
俺と稀奈が二人で暮らすことで親らを説得した。
そんで今日は、どんな晩御飯を作ろうかな。
「なぁ稀奈ー、今日の晩御飯何がええ?」
「何でもいいー。」
「何でもいいっちゅー返信が一番困るんやけど、」
「だってなんでもいいんだもーん。」
「ハァ…しゃーないなぁ、オムライスでええか?」
「えー?オムライスゥ?」
稀奈がとっても不服そうな顔をしながら俺を見た。
「なんでもええんとちゃうんか。」
「あー、もうそれでいいよ。それで!」
「………。」
料理を作るのは俺の仕事や。
「しーらーいーしー、ジュース零しちゃったー。」
稀奈に呼ばれてリビングに行ってみるとカーペットが無残にもジュースを吸い込んでビタビタになってしもうて…。
「あー…タオル持ってくるわ。」
ジュースの汚れって何でとればシミんならんかったっけ。
「ついでにこの部屋掃除しといてー。」
「おー。」
掃除も俺の仕事や。
「稀奈ー、服は裏返して洗濯機ん中入れといてやー。」
「えー?面倒くさいなぁ。」
「変に色落ちしたモン着るんかー?」
「あー、もうはいはい。裏返せばいいんでしょう、裏返せば!」
洗濯も俺の仕事や。
家事したら一日があっという間に終わる。
家事するんも疲れるわ。
親が一緒にこっち来たらこんなんせんでもええかったんか…。
いや、けど来たら別の意味で疲れるんよな。
やけど、この生活は嫌いやない。
あ、もう22時や。もう寝んといけんな。
「ハァ…八方塞、四面楚歌やな……疲れた疲れた。」
俺はワザとらしく呟いて、ベッドに入り込む。
壁の方に背中を向けて、寝る体勢をとる。
目を閉じて十数分。
俺の部屋のドアが開いた。
それでも俺は、目を閉じたまま反応しない。
「白石、寝た?」
「…………………。」
稀奈がぼそぼそとした声で俺に話しかけてきた。
やけど、俺は寝た、寝た。
「寝た?寝た?」
「…………………。」
俺がシカトを決め込んで後から怒られるって?
んなわけないやん。
やって…、
稀奈は一人で寝れんらしいからなぁああ!!!
俺が寝ていることをしこたま確認して、こっそりと俺のベットん中に入ってくるんやで!?
しかも俺がこっち向いて寝とるから俺の腕の中に自分から入ってくるんやで!?
起こさんようにってめちゃめちゃ優しい手つきで俺の腕を動かすんやで!?
めっっっちゃ可愛いやんか!!可愛いと思うやろ!?可愛いやろ!?可愛いんや!!
稀奈ー― !!!めっちゃ癒されるわぁあああああああ!!
自分のわがまま通っとんはこのデレがあるからやで!?
俺は一日の疲れはここで吹っ飛ばしとるんや。
ほんま…ええわ……。
普段あんな悪態つかれとるけど、こんな小動物みたいな稀奈は何て言うんやろ…可愛いを通り越してもっと別の形容の仕方の…ま、そんなんはどうでもええわ。
あんな真っ黒な事を言う稀奈なのん、こうやって夜一人は寝れんとか…俺、知った日はめっちゃ驚いたと同時にめっちゃ癒されたんや…。
―――――
―――
次の日の朝俺が起きたらいつも稀奈は居らんのんやけど、
俺が起きたらもうリビングの方に居るんや。
「…おはようさん稀奈。」
「おはよー、さっさと朝ごはん作って!」
「あー…トーストと目玉焼きでええか?」
「半熟でよろしく!」
「了解や。」
俺は起きて直ぐ朝ごはんを作りにかかるんやけど。
「なぁ、稀奈?」
「なに?」
「よう眠れたか?」
「……普通に寝れたよ。それが、なに?」
「ならええわ。」
当分は寝たふりをさせてもらうわ。
んで、いつ寝たふりでしたってばらそうか。
そん時は稀奈かてめっちゃ真っ赤な顔して怒るんかなぁ?
あー、ホンマ稀奈はかわええわぁ。
―――――――――
500000hit企画第33弾
香織様リクエスト「BellyBlack番外/金ちゃんと白石が大阪から二人で上京して同棲?しながら学校に通う。普段は白石をこきつかう金ちゃんだけど、一人じゃ寝れなくて白石が寝たのをみはからっておなじベッドへ。でも、実は白石は起きててそんな金ちゃんがかわいくて更にベッタリになる話」でした。
上手く金ちゃんの愛らしさが表現できたのか?と聞かれたら、出来た!と目を泳がせながら答えます←
でも金ちゃん主自身、家事は自分でできると思います。
だって転生主だから!
ワザと、白石に甘えているのです。
しかし、視点を変えたら面倒くさくて何もしていないダメ主ですね。すみませんorz
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