青春デストロイ!? | ナノ





青春デストロイ!? 第305話


そして数分してから滝が戻ってきた。

「席を外して申し訳ありませんでした。撫子は粗相などしていませんでしたか?」

「いやいや、とてもニコニコと礼儀正しい女性だったよ。」

どうやら悪い印象は抱かれていないらしい。
心した滝は撫子に視線をやった。

「それは何よりで……撫子、なんでそんなに顔赤いの?」

視線をやった撫子の顔は今までになく赤い。とりあえずさっきよりは各段に赤い。

「んー?フフフフフー、えー?私、顔赤いー?」

言葉も今まで以上にふわふわしている。

「…お酒、飲んだ?」

「えー?ウエイターさんがくれたの飲んだよー?」

「それお酒だよ。こんなパーティーでジュースをウエイターが持ってるわけ無いでしょ。
今までお酒飲んだこと無かったの?」

「無いよー。身長を伸ばすに当たって体に悪い物はやってないよー、勿論煙草もー!
あ、でも過去に一回だけ父さんに一口ビール貰った事あるよー。」

「あーもう、予想外だよ。
すみません皆様方。僕の連れがお酒に酔ってしまったので退室させていただきます。」

「お酒に弱い女性だったとは失念していたよ。すまなかった。」

「いえ、こちらの落ち度ですので、しかし皆様方も中学生にお酒は今後進めないで下さい。」

撫子を誘導するように滝はその場を去っていった。
去り際に放った撫子が中学生と言う事実に大人達は硬直していたがそれをケアするつもりはない。

滝は跡部の姿を見つけ事の顛末を説明し、ホテルの一室を借りた。
それから借りた部屋まで撫子を誘導。
部屋に入りは撫子をベッドへ投げた。

「プゲッ。」

「ハァ…全く、君はバカだね。お酒とジュースを間違えるなんて。」

「ごめーん、だってアルコールの味分かんないんだもーん。ビールみたいに苦くなかったしー。」

「苦いのはビールだけだよ…。でも一杯だけで…あぁ、空腹だったからアルコールのまわりが強いのか。」

「んふふふふふふ、滝が頭を抱えるなんて珍しい光景だぁ。写メ欲しー。」

「誰のせいだよ誰の。
でも、一杯だけなら急性アル中の心配はないか。」

「私のせいかなぁ?ふふふぅ。
そうだ、頭抱えるっていったらねー私今日の発表会でこんな誘いを貰ったんだぁ。前々から予想はしていたことなんだけどね。」

「へー、それはどんな誘いだったんだい?」

「あのね――――――――――――――――。」


「………そんな誘いを受けるなんて凄いじゃないか。撫子はどうしたいの?」

「受けよっかなぁって、豊かな人生経験はこの先必要でしょー?」

「そうなんだ。撫子がしたいようにすれば良いと思うよ。」

「そうだねぇ、…………。」

言葉を紡いでいた撫子は途中で紡ぐのを止めて無言になった。

「…撫子?」

「グウ……。」

「…いきなり寝ないでよ。」

滝は撫子が睡眠に入ったことを確認して部屋を出ていった。
跡部に撫子が寝てしまったことを伝えて、跡部は明日の朝起こすように従業員に命令した。


「――様、椿崎様。」

「は、はぃいい!?」

撫子は知らない女性の声で朝、覚醒した。
よく見るとこのホテルの制服を着ており従業員なのだと確信。

「朝でございます。この時間に椿崎様を起こすようにと景吾様から仰せつかっておりました。」

「あ、ハァ…。
あれ、私なんでこんなとこに居るのでしょうか、ね?」

「詳しくは存じ上げませんが昨日のパーティーで誤ってお酒を飲んでしまい酔ってこちらまで運んだようです。」

「えー…あー……なんかそんな事だったような?」

「服はこちらで準備致しました。この服でよろしいですか?」

「え、あ、ありがとうございます。十分すぎるほどそれでいいです!」

服を受け取って、

「…ん?この箱なんですか?」

服の上には綺麗にラッピングされた箱が置かれてあった。

「服と共にお出しするように言われていただけなので…。」

「あ、そうなんですか。聞いて申し訳ないです。」

「いえ、こちらこそお力になれず…失礼いたします。」

従業員は早々に出て行った。
それから撫子は服を着替える前にその謎な箱を開封することにした。

「……爆弾、じゃないよね?」

耳を箱に近づけてみたが音などは聞き取れない。
恐る恐る包装紙を取って、中身を出していく。
そしてそこに有ったのは、

「懐中時計…?」

しかもどこか見覚えのある。

「む、手紙…?」

手紙も箱の中に入っていたので見て見ることにした。


『おはようって言っとくよ。あ、滝だよー。びっくりした?爆弾かと思った?フフフ、そこまで僕の性格は歪んでないよ。
で、本題だ。この懐中時計は僕のクラスが文化祭でショップをやってた時のものなんだけど、覚えてるかな?撫子は僕の話を聞きながらこの懐中時計をガン見してたでしょ?』

「ああ!通りで見たことのある懐中時計だと思った!」

どうやらその懐中時計は文化祭の時に撫子が滝の居なくなったときに買いに行こうと思ってすっかり忘れていたやつである。

『一応、お礼かな?無理やり入部してマネをやらせちゃったけど、それなりに撫子は頑張ってくれたからね。ご褒美だよ。有り難く受け取りなよ。』

「ッ滝様、カリスマ力有りすぎます!!惚れます!惚れてしまいますよ!!」

撫子は思いもしなかったプレゼントにはしゃぐ。

「サンタは居ったんや!」

とまぁ、テンションのあがりすぎで訳の分からないことを言ってみたりだな。
とりあえずは楽しいクリスマスにはなったのではないか?

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