青春デストロイ!? | ナノ





サンドリヨン 08


「シンデレラー!朝だよー!!起きてー!!」

「起きろよー!昨日あった土産話話してやるからさぁ!!」

朝になってジローと岳人が扉を叩いて起こしに来た。
しかし、撫子は一向にベッドから起き上がることが出来ない。
昨日の事、結局は忘れることが出来なかったのだ。

「…ゴメン、姉さん達…体調が悪いから……ゴメン、一人にさせて?」

「Aー?シンデレラがそう言うって珍Cーね!」

「それだけ重症ってことなんだろ。じゃぁ俺ら行くからな、落ち着いたら降りてこいよー。」

「うん、ありがとう。」


撫子は足音が消え去ったことを確認して再び目を閉じる。

今も鮮明に思い出される跡部の瞳、声、囁き。
それから跡部の体温、
囁かれたときに耳にかかった吐息。

そんなことを思い出すと顔が熱くなる。
これは病気なのか?
こんな思いは初めてだ、どんなに違うことを考えても片時も跡部の顔が離れない。

「そうだ、これは…ケイゴが憎くて仕方がないんだ。憎くて憎くて忘れることが出来ないんだ。きっとそうだ。」

そう確信して声に出してみるとズキ、とした刺激が心を抉った。
もう、意味が分からないこの気持ち。

そうだ、あれは夢での出来事だったんだ。
現実じゃないんだ。
ただのいつも私が見ている夢、なんだ。遠い夢。

「もう終わる、今日で終わらせるから…それまで、もう一回寝よう。」

撫子が寝て起きてそうしたら午後10時。
舞踏会へ行った次の日でもあるし、家族はもう寝ている時間だ。

仕事に行く前に一度だけ姉達の顔を眺めて頬にキスをおとして行って来ますの挨拶代り。

「………ターゲットはケイゴ王子、期限は今日の23時59分59秒。失敗した代償は――…。」

それから撫子は日吉の命を奪う時に着ていたドレスを身に纏い仕事モードに変わろうとしてる時、扉が開けられた。

「なんや、これからどこに行くんや?シンデレラ。」

扉から入って来たのは忍足で何となく怒っている雰囲気だ。

「!?…母、さん……。なんで起きてるの?もう寝ていると思ったのに、」

「何処に行くんや?シンデレラ。」

「……や、やだなぁ。いつもの掃除だよ。」

「そんなきれいなドレスを着てか?そんなにおめかしして掃除なんて出来んやろ。」

「お城でだよ?ほら、掃除屋にもドレスコードみたいなのが…ね?」

「そんなん嘘やろ。伊達に舞踏会行って奥様らとお話ししとるんやないで。
シンデレラ、今まで黙っとったけど…何をやっとるんや?」

「…ッ。」

嗚呼、バレた。
殺し屋だってばれたのか、
もうさようならをしなけれなばらないと覚悟を決める。

「黙んまりか。いつもいつもどっから小金が出て来よるかと思ったら、こういう事か。俺はそんなことまでして金が欲しい思っとらんのやで?
穢らわしい…この………………………売女。」

が、次の瞬間肩すかしを食らった。
まさかこんな勘違いをしているなんて思いもしなかった。

「ハ、ハハハハハハハハハハハハ!!!」

こんな素敵な勘違い。
神様、初めて感謝します。

「なんや、図星か!!」

「…………ッ母さん、そうだよ!!その辺の小金持ちに売ってんだよ!!一体どこからお金が湧いて出てたと思ってたの?アハハハ!!!
折角こんなに色のある体に生まれたんだ、それを利用しない手なんて無いでしょう!?常識的に考えてよ!!」

「ッそんな常識も持ってない自分が常識ぶんなや!!出て行け!出て行けや!!」

「ッ…アハハハハハハハ!!その、言葉…待ってたよ!!この数年間!
やっと言ってくれたね!!…これで後腐れなく出てッ行ける!!今までお世話になって差し上げました!…今後……二度と私の目の前に現れないで100年後孫やひ孫に囲まれてのたれ死んでください!!ッばいばーい!!!」

撫子は暴言を吐いて家から飛び出した。
行って来ますなんて言わない。言えない。
勿論二度と、ただいまっていう事も無いんだろう。



そしてただ一人、撫子の部屋に残された忍足。

「…ちゃうねん、出て行ってほしいとちゃうねん…もうそんなことしてほしくないだけや……すまん、すまんッ俺らがちゃんと生活出来たらシンデレラはそんなことせんでええのに…辛い事ばっか押し付けて…帰って来てやぁ…シンデレラァっ!!」





―――
――――――

「なぁ、カバジ…今日もシンデレラは来てくれるようだぜ?」

「…そう、ですか。」

跡部が自室のベッドで横になりながら樺地に声をかける。
自分の部屋の窓はステンドグラスを模していて、月の光が入り込み幻想的な空間と化しているところ。

そしてその月の光は部屋の壁にも届いており壁に貼られている撫子の姿が描かれているにもかかる。
まるで色取り取りのベールをかけているように見えた。

「嗚呼、愛おしい。サンドリヨン、こうやってベールを被って俺様の伴侶になってくれねぇかなぁ。…無理なんだろうけどな。」

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