青春デストロイ!? | ナノ





青春デストロイ!? 第237話


舞台上、「おめでとう」と言いながら拍手をして何分経っただろう。
もう王子が登場してもいい時間にはなっているのに、一向に姿を現さない。

「どうしたんだ?弦一郎…まさか他校生だからと言って怯んでいるのか?」

柳がボソッと呟いた。

「…どう言う事っすか?」

「この後シンデレラと王子はキスをするんだ。」

「な!?聞いてないっすよ、そんなの!!」

舞台を壊さない様にと、とりあえず小さな声で反論。

「言ったらやらなかっただろう。
大丈夫だ。フリをするだけだ。」

「この台本考えたの誰!?」

「俺だが?」

「アンタか!!」

「この年頃は禁忌に手を出したくなるものだ。殺人も禁忌だが、それよりもこっちの方がより身近だろ?」

「そう言うこと言ってんじゃねーよ糸目。」

リョーマがフリと聞いても顔を青くすることは止めず、少しずつ逃げようとしていた。

「おーっと、逃がさんぜよ。」

そうはさせまいとディフェンスをかます仁王他。

「チッ!!」

リョーマは盛大に舌打ち。
逃げ場など無い。

「嗚呼!!シンデレラ!この日をどれだけ待ち望んだか!!」

舞台袖からついに王子が登場。
やっと物語が動く。

「王子、連れて参りました。シンデレラで、す…?」

柳が順調に台詞を言っていたが、何かに驚き言葉がたどたどしくなった。
さらには開眼。

同じくして柳以外も目を見開いている。
何故か?
それは王子が撫子になっているからだ。

「ちょっ、椿崎おまん!?
やぁぎゅ、なんで椿崎が王子になっとん?真田と違うんか?」

「私に聞かれても…。」

そんなコソコソとしたやり取りを聞いた撫子は、してやったり的な笑みを浮かべた。
そして何事もなかったかのように劇を続ける。


「貴女が、あの時私と踊って下さった…。
シンデレラ、…私は一目見たときから貴女の虜になってしまった。
どうか私と結婚して下さらないか?」

「え、ちょ撫子さ――!?」

「ちょっとリョーマ!マイクが声拾っちゃうでしょ!?」

撫子が慌ててリョーマの口を手で塞ぐ。
幸いにも舞台に設置してあるマイクは床に置いてある物で、リョーマの声は拾っていなかった。

「シンデレラ…卑怯な私を許してくれ。
結婚を申し出た私だが、断られる事も勿論視野には入れていたのだが、愛する者から拒絶される言葉は聞きたくない。
どうか、私の妻に――。」

椿崎は塞いでいた手を外し、リョーマに顔を近づけていく。

「椿崎、さん、待ッ。」

「大丈夫、ちゃんと寸止めするから。」

目を閉じて、
近づいて、
互いの存在を知って、
そして、

「―――――ックゥ…。」

「え、ちょ、ま、シンデレラァア!?」

周りからキスしていると思わせる距離にならない所でリョーマの意識がログアウト。
キャパオーバーだったらしい。

『こうして王子様のフェロモンにやられたシンデレラはお城に住み、王子様ゾッコンラブになりながら幸せに暮らしましたとさ。』

おしまい。
幕が降りる。観客席からは拍手喝采。
どうやら演劇は成功に終わったらしい。

「ハッ!?俺はいったい…?」

すぐに目を覚ましたリョーマ。

「あ!リョーマ、気が付いた?劇終わったよー。」

「劇……!!俺、着替えてきます!!」

リョーマは撫子の元から一目散に離れ、着替えてくると。
すれ違いに幸村が登場。

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