青春デストロイ!? 第213話 「私達もぉ、撫子さんのファンやから☆ なぁ、ユウ君!」 「べっ、別に俺はそんなこと無いで!小春がどうしても撫子さんの撮影を見たい言うから着いてきたんや!!」 頬を赤く染め撫子から少し視線を逸らしながら言った。 「ッリアルツンデレあざぁす!! ……で、滝様は多分周助君か精市君経由で情報が回った、と…。」 「よく分かったね、撫子にしてはやるねー。」 「アハハハハ…ハァ。 よし、財前くーん始めようk――「ちょい待ち!俺はスルーか!!」 いざ始めようと主催に声をかけたら忍足が撫子のセリフを途中で遮った。 「スルーしたいわ!!どうせお前ハァ、ハァ、足…ッ!!……とか言うんだろ!?」 「よう分かったな!! 最高やんその衣装!!ヒャッホー!!」 「黙れ!!衣装のことについては触れるな!!話を振るな!! やっと恥ずかしさから慣れたと思ったのに…ッ恥ずかしさがぶり返してきたじゃないか!!」 「は?なんでや?撫子今まで露出の高いキャラしてきたやん?」 ごもっともな意見を忍足のくせに突きつけてきた。 「…だって、コスプレはキャラになりきれるから私であって、私じゃないじゃん? この衣装はチョコさんが私をイメージして作ったやつだから私は私のままで、私自身はこんな際どい露出の服着ないんだよ!!」 「その心理がまるで分からん!!」 「分からん上等!!誰もレイヤーでないアンタに分かってもらいたいとは思ってないわ!! あああああ!!恥ずかしい!人の目が多い!穴があったら入りたいぃいい!!」 恥ずかしさは更衣室に置いてきたから大丈夫だと思っていたのに、忍足が撫子の羞恥心を引きずり出した。 なんともいらないことをする男子よ。 「撫子さん、その感情消し去ってやるわ。」 「…うじうじさん?」 このメンツの中で撫子との関わりが一番薄く、今初めてまともに話しているうじうじこと一氏ユウジ。 「ええか?俺もしくは笑顔動画でしか撫子さんと関わったことの無い奴は、撫子さんを椿崎撫子ではなく撫子さんとして見とるんや。」 「…うん。」 「椿崎撫子は腐女子で自重せぇへん猪突猛進、元気がええかと思ったら寝起きはめっちゃ悪い。 やけどな、笑顔動画の撫子さんはそんなイメージとちゃうねん。気高くて、クールで多彩な才能の持ち主、凛とした雰囲気だけかと思うたら声はロリからショタ、妖艶系両声類。上げたらキリがないんや、一言で言うなら神や。 やから全くちゃうねん。」 「うじうじさん…ッ。」 撫子は一氏から何かを受け取ったようで先程までの焦りは感じられない。 周りで見ていたギャラリーは訳が分からない。 「ほー…一氏とかいう奴やるのー。」 仁王が一人納得した。 「え?どういうことなん?」 「じゃから一氏っつーやつは椿崎に撫子っちゅーキャラになれ言うたんじゃ。」 「…どうなるんや?」 「…忍足おまん理解力無いのー。 さっき椿崎も言っとったじゃろ。自分であって自分でない、この状況を無理矢理作ったんじゃ。」 「あぁ、そう言うことか。」 ようやく納得。 そして財前が撫子の雰囲気ががらりと変わったことを合図に声をかけた。 「…撫子さん、準備はええですか? さっきも言ったように三回、通して踊ってもらいます。間に休憩入れましょうか?」 「結構。」 「じゃ、三回連続で踊ってもらいます。始めますか?」 「……。」 口調が変わった。 もちろん纏う雰囲気も、 財前の作った曲に合わせるように。勉強に挑む姿よりとても真剣である。 柳生も不二もカメラを構え思い思いの場所で撮影開始。 財前が曲を流した。 先程収録したばかりのものだ。 財前が編集したこともあっていつもより撫子の歌声に艶がある。 撫子は恥ずかしそうな表情を見せず、むしろその出来映えに笑みを満足そうにこぼす。 そして舞う。 手塚に考えてもらい、アレンジを加え踊る。 一つ一つの動作に、 指先までに気を向けて、 繊細に、 大胆に、 溌剌と、 妖艶に、 披露する。 ………………………………。 息をのむギャラリー。 言葉を発しない、発せない。 撫子の動きに圧巻された。 [mark] [mokuji] |