青春トリップ!!?  | ナノ


第05話


「撫子、テツヤを連れて行ってくれ。」

「おk、よし黒子っち行くよー。」

「………。」

黒子が熱中症な症状を呈してしまい、撫子は黒子の付き添いで保健室までやってきた。
勿論、撫子が黒子をおんぶしてだ。どちらのプライドが傷ついたかと言えば…まぁ、ドローだろう。
黒子をベッドに寝かせ、氷枕など冷やすものを大量に準備する撫子。
それから大きな血管が近いところに冷やすものを宛がう。

「…時に筋肉女子代表椿崎さん、質問してもいいですか?」

「なんだね?貧弱男子代表黒子っち。気分悪いことは無いかね?」

「あ、はい。大丈夫です。今起き上がれと言われたら全力でNOですが。」

「正直でよろしい。で、質問とは?」

「はい、マネージャーの仕事は楽しいですか?」

「…は?どしたの突然。」

突然の質問。場を繋ぎ止めるためだけにしては結構重いものだろう。
撫子は一瞬だが思考が止まった。

「いえ、深い意味はないですよ。ただ毎日サポートだけの生活って楽しいのかなと思いまして。それにさっきの出来事だって椿崎さんに非は無―――。」

「楽しいわけないじゃん。マネなんてただのパシリもいいところだよ全く。」

「は…?」

楽しいよ、とでも返ってのかと思ったのだろう。それかもっとオブラートに包んでくるか。
だからこそ今度は黒子が驚いた様子を見せた。

「身体は思いっきり動かせないし、皆が楽しそうに動いてるのに自分は動けないとかマジ蛇の生殺しだし。
真夏はタオルを干すのは苦痛でしかないし水仕事だから手は荒れるし、監督が居たら監督の機嫌取りもしなきゃだし、雑用を片付けなきゃいけないから学校生活なんて勉強してないよ。常になんかマネの仕事してるよ。
君らもイケメンだしさぁ、女子生徒からの妬みは怖すぎ。もっとクールにいこうぜ。イジメよくない、カッコ悪いだよ。まったく…。これが楽しいとか思ったらドMな人だね。」

言えば言うほど愚痴が出てくる。
マネの立ち位置とか仕事とかよく考えれば面倒くさいの一言で済むようなものである。

「デメリットばかりですね…では、何故椿崎さんはマネの仕事を?」

「ぶっちゃけ逆らえない命令だから。」

「何て身も蓋もない…。」

「まぁ…でも、やりがいはあるよね。」

「…と言いますと?」

「だって君が『僕は影だ』って言う様にマネージャーも影なんだよ。
マネージャーって目立たないでしょ。存在感をアピールしなかったらいつの間にかタオルがそこにあって、ドリンクがそこにあって、ってなるでしょう。
でも居なかったら君達困るよ?君みたいに脱水から熱中症を起こしたり、タオルが無かったら下手に体が冷えて体調を崩す。
なんだろう。上手く例えれないんだけど、マネージャーって言う影が居なきゃ選手って言う光と言いますか何と言いますか彼らは幽霊になっちゃう、みたいな?
それを思ったら私が居なきゃなーって、助けなきゃなーって思ってやりがいはある。うん。」

「……………。」

「や、やっだー。熱く語っちゃったよ。恥ずかしい。こんな語ったのマスターと蔵さんとか忍足意外とだと君が初めてだぉ!」

「…例えるの下手ですね。」

「畜生、テメェこの野郎。」


「よし、言質とった。」

入り口の方から声が聞こえてきたと思って振りかえるとそこには黒い物質を持った赤司がそこに立っていた。

「「赤司君(様)!?」」

「やぁ、その語りは録らせてもらったよ。滝君に対価として頼まれてたんだよね。」

もう色々と察するよ。
きっと撫子はずっとマネージャーをやらされるだろう。黒歴史である。

「赤司君、ミスディレクションをするのは僕の特権です。」

黒子は気づかなかったことでちょっと悔しかったらしい。
ブスッとした表情がこれまた…。

「フフフ、すまないね。
まぁ、この事は終わった。テツヤ、体調の方は大丈夫か?」

ベットに横になっている黒子の下に赤司は歩いて行った。
それからヒタっと手を黒子の額に当てて体温の確認。

「熱はもう籠ってないみたいだね。」

「みたいですね。」

「しかし大事をとって今日の練習はでなくていい。勿論、自主練なんかせずに帰るんだよ。」

黒子は体力とか全くないくせに、バスケは誰よりも好きだからあんな激しい練習をした後よく青峰と残って遅くまで自主練を行っている。
今日はそれを完璧に却下された。

「…………はい。」

少しの沈黙の後、黒子は渋々頷いた。

「よし、念のため撫子。みんなが帰るまで残っていてくれ。」

「えー!?ちょ、マジで?…うわー…萎えるわー。」

さっさと帰りたい。んで、ネットサーフィンをしたいというのに!!

「僕のお願いが聞けないの?」

「イエッサーボス。仰せのままに。」

赤司様の口からお願い、なんて可愛らしい言葉を聞くことになるとは…赤司様、撫子のツボをよく知ってらっしゃる。

思わずその可愛らしさに鼻血を出してしまいそうだったが鼻を押さえながらキリリと答えた。

「じゃ、よろしく。
テツヤは一人で歩けるようになったら戻ってくること。撫子は今から僕と一緒に体育館に行く。」

「はーい。じゃ、黒子っちまた後で。」

赤司の指示に従い撫子は赤司と共に体育館に戻ることにした。

[ 30/73 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]