青春トリップ!!?  | ナノ


第04話


「黄瀬ェ!テメェ24秒過ぎたぞゴルァ!!」

と言ったのは口の悪い青峰ではなく撫子である。
審判の仕事をきちんとこなす。しかしこうも試合展開が速いとテニス以上に目を離せなくて少しイライラしてしまうよ。
その上赤司も今回はいる訳であって下手な審判が出来ないプレッシャー。
ストレスが生まれたのでとりあえず黄瀬で発散しようと思った次第であった。

「ヒッ!?椿崎ちぃ…そんな青峰っちみたいに怒鳴らないで下さいっスよー。」

「黄瀬君、バイオレーションです。24秒過ぎているので速やかにボールをお渡しください。…とでも言えば満足か?」

「…椿崎っちって丁寧な言葉使えたんスね。」

「馬鹿にしてんのかデルモォ…。」

「涼太。僕の率いるチームが負けることなんてあってはならないのだが。」

「黄瀬ぇ、テメェいい加減にしろ!!」

「ッすんませんっス!!」

「あーもう、ちくしょー…ファールきりてぇ……おい黄瀬、ラフプレーしろや。」

「いやっすよ!!」

「まぁいいや。白ボール再開ー。」

しかしまぁ、本当になんてスピーディーな試合展開なのだろう。
テニスはラリーが続けば続くほど見ているこちらが緊張するのだが、この試合は見ていて気持ちがいい。
公式試合ではないから気を楽にして見ているかもしれないが、

ピー、
「第1Q終了のお知らせー。って赤司様、これフルタイムでするの?」

「決まっているだろう、フルタイムだ。」

「あい、りょうかーい。」

赤司は少々浮かれている。
何故かと言うと今日から部活の最終下校時刻が一年間の中で一番長い時期がやってきたからだ。
だからフルセットなんて余裕でできる時間が確保されているのだ。
まぁ、もともと最終下校時刻なんてこいつらにあってないようなものなんだけどね。

ゲームを続けてやはり優勢になっている黒チーム。もとい赤司チーム。勝利とは新陳代謝は伊達じゃねぇ。
そうやって試合を見届けているうちに誰も触れていない状態で黒子の身体が不自然に大きく揺れた。

「黒っちょ、ストップ!!」

撫子の一言でゲームが中断。それから一度コートの外へ。
中断した理由は黒子がコート内で膝をついてしまったからだ。

「黒子っち!?大丈夫っスか!?」

慌ててかけよる黄瀬。
しかしオロオロとしているだけで対処していない。

「お退き、わんわんお。
黒子っち、熱中症でしょ。」

黄瀬を必要以上に押しのけて黒子の目の前まで移動した。

「…違います。ちょっとふらついてしまっただけです。体力的な意味で。」

「ふーん…めまい、体温は高い、の割には顔色がすこぶる悪い。はい、ダウト。
真ちゃん先生。この症状から推測される病名をどうぞ。」

「熱中症なのだよ。」

「もう言い逃れできないぞー。ついでに聞くけど頭痛や吐き気もあるんじゃなくて?」

「……………………。」

意地でも口を割ろうとしない。
そんな様子に赤司が口をはさんだ。

「テツヤ。どっちにしても抜けてもらう。抜けて放置されるのと、抜けて治療を受けるの、どっちがいいんだい?」

「…はい。頭痛も吐き気もちょっとだけあります。」

「だろうねー。とりあえず応急処置に冷えピター。」

予想していたのでとりあず冷えピタを貼る。

「だろうね、じゃないよ。撫子。
これは君の管理ミスでもあるんだよ。まぁ、テツヤの自己管理のミスが一番の原因だけど。
審判してたからって言う理由は聞かないよ。マネージャーは選手の体調管理も仕事の一つだ。忘れてた訳ではないだろう?」

いつも以上に怒っている赤司。
しかしここで怯むような責任感が低い撫子ではない。

「…すみませんでした。赤司様が言った様にチーム全体に目をやっていませんでした。
黒子っちが熱中症になる前に水分摂取させておけばよかったです。
しかし、控えの選手も無しにフルセットをするという赤司様だって非があるんじゃないですか。黒子っちがフルで動き回ることが出来ないことぐらい知っていましたよね。……無理はしてもいいけど、無茶はしちゃいけないよね。」


「………確かにそうだな。自重しなかった僕にも多少の非はあるか…。反省しよう。
しかし僕に口答え、か。良くそんな度胸あったね。」

「伊達に一年長く生きてないよ。さらに言うならマネージャーだって伊達にやっていないんだよ。」

「フフ、面白い。」

「お褒めに預かり光栄ですよっと。」

互いに認め合う?
二人の絆が深まったようだが、こんな言い争い…周りの奴らにとっては絶対零度な空気になる出来事だった。
それを黙って耐えていた周りの奴らに拍手を送りたい。

[ 29/73 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]