青春トリップ!!?  | ナノ


最終話


二人は再びシエルの部屋に戻る。
入るとシエルが立っている姿があった。

「撫子、さっきは…すまなかった。」

「シエルが…謝った!?」

「なんだ、僕に常識が無いとでも言いたいのか?」

「アハハハハ…。」

「さっきの行為は…やりすぎた。
傷は…大丈夫か?」

「あー…まぁ……はい。」

「嘘じゃ。泣き叫びたいぐらい痛いって言っとったぜよ。」

「仁王黙っとけ!!ってギャア!?イダダダアダダダ!!離せ離せ離せぇえええ!!!」

仁王に負傷した方の腕を掴まれた。

「ほれ、何が大丈夫じゃ。」

「テメッ、いい加減に離せっつっとんじゃろうが!!」

掴んでいる腕を振り払い。
仁王を完全ホールド。ついでに首も絞めてます。

「ぴよぉぉおおおおおお!!?」

「ぇえ?ゴラ、私はMじゃねーっつってんだろ!!
Sだからこそ打たれ弱いって知らんのんか?ガラスの剣じゃボケェ!!」

「許してちょ。」

「極刑。」

さらに拘束している力を強めた。

「ぐえッ!!」

「ザマァ。」

「そんなに…元気なら、問題ないな。」

少し引き気味に、シエルが言う。








そして人生最後にして最高のセレモニー、お葬式が始まった。
マダムと最後の別れを惜しむもの、
泣くもの、

協会の中は悲しみで包まれた。

そんな中、シエルは真っ赤なドレスを持ってマダムとの別れを告げに来た。

「――貴女には白い花も地味な服も似合わないよ。
貴女に似合うのは情熱の赤、地に燃えるリコリスの色だ。アン叔母さん。」

そういうと教会内に赤い花びらが舞った。
扉の向こうから花びらが入ってくる。
その入れ物を背にして立っているのはセバスチャンと葬儀屋、撫子に仁王だ。
誰もかれも驚いた表情をしている中、撫子と仁王は赤い花びらを纏いながら救えなかったマダムに別れを告げた。

「「――おやすみ、マダムレッド。」」





葬式が終わり、シエル一行は墓地に足を向けた。
真面目な話が交わされる中、撫子と仁王が間の抜けた声を発した。

「「ぅぎゃ!?」」

「なんだ?…!?」

二人が浮かんでいる。

「あー…シエル、お別れの時間だわ。」

「そう…か。」

「あら、クール。もっと別れを惜しんでもいいのよ。」

「ハッ、誰が。」

「まー、それがシエルか……ね、君はこれからたくさん苦労するよ。
今回の事件がおままごとに感じる位の、たくさん辛い思いもする。
けど、同じくらい幸せな思いもする。大切なものもこれからまた増える。
シエルはまだ、他人に甘えていい年齢なんだから…番犬とか云々より、シエル本人の幸せな道を歩いてね。」

「……努力はする。」

「努力…してくれるんだ。」

「あぁ、」

「ほんに、シエルはガキなんか大人なんかよう分らんのぉ。」

「黙れ。」

「プリ。」

従うつもりはないと言った仁王でも今回は従う。

「セバスチャンもシエルも……バイバイ!!」
「アデュー。」

姿が見えなくなった。
二人は元の世界に帰ったのだろう。

「セバスチャン。」

「なんでしょう?」

「アイツらは結局何者だ?」


「私と、私の協力者の元でこの世界に呼び出された。
ただの、一般大衆の中の二人。
他者より少し視界の広い、

人間ですよ。」


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