第20話 二人が出て行ってセバスチャンとシエルだけになる。 「坊ちゃん、八つ当たりですか?」 「…悪いか?」 「ハァ…レディに八つ当たりなんてする紳士なんて聞いたことありませんよ?」 「……。」 「良いですか?坊ちゃん、あの二人は…。」 言いかけたところでシエルがセバスチャンのセリフを遮る。 「分かっている。 あの二人が、どれだけ行動していたか、 撫子の走馬灯を見て全部知っている。だが…僕だって、こんな展開を避けたかった。マダムを生かして、表の世界で裁いて…その後になるがちゃんとした幸せを歩んでほしかったんだ。」 ギュウッと握り拳を作る。 「ですが坊ちゃん。あのような行為はやりすぎかと…。」 シエルは撫子の血で染まった自分の指を見つめる。 「…あぁ……僕は…まだ、自分の感情を殺すことは出来ていないようだ。 セバスチャン、撫子と雅治を呼んで来い。」 「御意。」 セバスチャンは言われた通り二人を迎えに行こうとした。 「セバスチャン。」 「なんでしょう?」 「セバスチャンは命を投げ出して、誰かを守れるか?」 「それが坊ちゃんであるなら。 他は…メリットがありませんので。」 「そうか…。」 「では。」 シエルに一礼して部屋を出て行くセバスチャン。 同時刻、 別の部屋で治療中の二人。 「痛いじゃろ…。」 「うんかなり、もう泣き叫びたいぐらい。 ほんと意味わかんない、なんで二次元の皆さんはこんな傷バンバンつくってんの?慣れちゃってんの?痛すぎるだろ。 ソウルジェムが欲しい。今すぐ欲しい。むしろさやかちゃんが欲しい。」 「じゃったら逃げればよかったんに…。なんもおまんがそこまで深入りする必要も無かったじゃろ。」 包帯を外し、新しい包帯を準備する。 「そう…なんだけどね。 やっぱり抗ってみたいじゃん。どうせならbad endな展開は避けたいじゃん。目の前で死人が出るなんてさ、やっぱりいやじゃん?別の世界の住人でもさ。」 「椿崎…随分すっきりした顔しとるの。」 「そう…かもね。 やっぱり…終わったって感じがするんだよ。やっぱりここは、ここに来たら私たちは異物ってことがはっきりして…ね。 吹っ切れた感があるよ。 それにしても…原作を変えることが出来ない設定にするなんて滝たちも意地悪いね。」 「それは今さらじゃろ。」 「まぁ…ね。でさ私ら、いつ帰されるだろ?」 「そりゃ、マダムの葬式までじゃないかの?」 「あー…。」 「治療は終わりましたか?」 セバスチャンが部屋の中に入ってきた。 「あぁ…うん、さっき新しい包帯巻いてもらったよ。」 ほら、というように腕を見せる。 「坊ちゃんがすみません。」 頭を深々と下げる。 「や、セバスチャンさんのせいじゃないし…シエルのせいでもないし。 それに…ほら、私メイドだし?…ねぇ。」 「その上…ありがとうございました。」 「へ?」 「坊ちゃんがまた一つ成長しました。 人間的にも…。」 セバスチャンの目が嗤う。 「魂的にも?」 「……はい。 では坊ちゃんが二人を呼んでいます。」 「はいよ。」 「プリ。」 [mokuji] |