第18話 鎌に絡んでいた燕尾服を簡単に引き千切り、セバスチャンはグレルの元へ歩いて行く。 グレルも逃げようとするが体が言う事を聞かず、その距離は縮まる一方だ。 「な…何考えっ…やめなさいよっ…ギャッ!!」 「いけ、セバスチャンさん!!セバスチャンのSはドSのS!! あ、仁王ちょっとCPってもいい?ドMドS相性いいと思うよ?」 「じゃから俺はノーマルじゃ!!」 セバスチャンはグレルの顔を問答無用で踏みつけていた。 「足蹴にされるのは御免ですが、するのはいい気分ですね。さきほどの撫子の気持ちがわかります。」 「でしょ?」 ふふっと笑うセバスチャンの足に力が入る。当然グレルが下で悲鳴を上げても気にする風は無い。 「なかなかいい声で啼くじゃないですか。ご褒美に…。」 ギャラララと再び死神の鎌が動き出す。 「貴方のお気に入りの玩具でイかせて差し上げます。」 「お願っ…お願い゛ゼバズちゃ…やめてえっ!!」 「嫌です。」 「却下じゃ。」 「君も男なら聞き分けたまえ。」 「…ムスカか?」 セバスチャンはグレルの懇願を一蹴して死神の鎌を振り上げた。 「や、やめ、やめてえええええ!!!」 振り降ろされる死神の鎌。 ―ガキィン―――!! しかし、あと数センチと言う所で邪魔が入った。 金属同士がぶつかる独特な音が響き、地面に高枝ハサミが突き刺さる。 邪魔をするそれを切断しようと空回る死神の鎌。 驚いて振り向いたセバスチャンの先には、高枝ハサミをこっちに伸ばし、住宅の屋上に立つ人影がいた。 「お話し中失礼致します。」 人影が一言そう言った。 カシャンと音を立て、高枝ハサミが元に戻って行く。 「私、死神派遣協会管理課のウィリアム・T・スピアーズと申します。」 ウィリアムはグレルを回収しに来ただけの様ですぐにグレルを引きずりなからこの場から消えて行った。 「申し訳ありません…もう一匹を取り逃がしました。」 「…。」 撫子と仁王も頭を下げる。 何に対して頭を下げているのか、 「…いい、もう…いい。」 マダムから目を離さず、静かにシエルが呟く。 そばまでやって来たセバスチャンは、そっとシエルの頬に触れた。 「とても冷えておいでだ。早く町屋敷へ戻りましょう…。 お約束通りホットミルクをお淹れしましょうね。撫子と雅治も手伝ってください。」 「「イエッサー…。」」 「……そうだな。」 ふっと目を閉じ、シエルは立ち上がる。 「坊ちゃん!」 しかしよろめいてしまい、慌ててセバスチャンが腕を伸ばす。 差し出された腕をシエルははたき返した。 「坊っ…「いい。」 セバスチャンの言葉を遮り、シエルが呟く。 「大丈夫だ、一人で立てる。 ただ…少し…疲れただけだ……。」 宣言通りに街屋敷に戻った一向。 シエルは撫子と仁王に自分の部屋に来るように言いつけた。 セバスチャンとホットミルクの準備をしてシエルの部屋へと三人が入る。 セバスチャンは部屋の端でホットミルクをカップに注いでいる。 撫子と仁王はシエルの前に立たされた。 「何故…僕がわざわざ呼んだか……分かっているな?」 先ほどの気を抜いていたシエルは何処へ行ったのやら、 今、ここに居るのは…怒りを沸々と沸かせているシエル。 「撫子に雅治…知っていただろう!!! 全部、お前らがここに来たとき、いや…ここに来る前から!何故、黙っていた!!」 シエルが叫ぶ。 唯一の親族を失ってしまったようなものだから、 自分の采配で無くしてしまったようなものだから、 [mokuji] |