第15話 あと少し、と言う所でセバスチャンが仁王と撫子に止められる。 「……セバスチャン…?」 何故、肩を押さえ、息が荒い? シエルが感じた疑問の答えはすぐに明かされた。 「ンフッ、セバスちゃんたら根性あるゥ♪ 腕一本ダメにしてまでそのガキ助けに行くなんて…それに比べてアンタはなんなの?」 壁に突き刺さった死神の鎌を抜き、グレルがマダムの名を呼んだ。 「さっさとそのガキ殺っちゃいなさいよ!」 「だめ…。」 「あん?」 「やっぱりダメ…私にはこの子は殺せない…っ!」 胸を押さえ、苦しそうにマダムが言う。 「今更何言ってんのよ、さんざん女どもを切り刻んで来たくせに! そのガキ殺さなきゃ、アンタが消されるのよ!せっかく死神が手伝ってあげてるのに!」 「でも…でも!!」 手を握り締め、シエルを庇うようにマダムがグレルと対峙した。 「この子は私のっ…!!」 言いかけたところで叫び声が上がる。 「うッぁぁあぁああああああああっっ!!!」 「椿崎!!」 「なん、で…撫子…?」 先ほどまでセバスチャンを拘束していたはずの撫子がマダムを庇った。 庇った撫子の腕に死神の鎌が掠った。それによって軌道が反れ、マダムに刺さることは無くなった。 「あら、まぁいいわ。マダムを殺す前に撫子の『走馬灯』を見ようじゃない。」 チェーンソーが掠ってしまったのだ。 止めどなくあふれてくる血液。 そして上映される撫子の走馬灯。 腕に掠っただけだから断片的なことが上映される。 「黒執事マジ神。」 「グレルマジかわいいんですけど!!特に二期の!!」 「やばい、派遣協会のダンスマジカッケェ!!」 こちらに来る前の映像が、 「そう…だね。ねぇ、私はマダムも助けたいんだけど…良いかな?」 「そうだけど…足掻くだけただじゃん?それで救えたら万々歳じゃん?」 こちらにしてすぐの映像が、 「さっきも、セバスチャンが考察して言っているときに、違うって言いかけたら…比べ物にならないくらいの激痛だった。」 「やっぱり私たちは異物で、この物語は完結してて、シナリオは決められてて、変えようがないのかな?」 「…あぁ……。」 「表情にも表わしたらダメで、その感情を持ってもダメで、行動を起こしてもダメで……。」 「…椿崎は何度もトリップしたこと有るって言っとったけど…こんなんは初めてなんか?」 「そうか…じゃが……どっちみち俺らはこの物語が終わるまで帰れん、割り切るしか……ないぜよ。」 「分かっては…いるさ。」 馬車を降りた時の映像が、 「…やっぱり無駄だったね。」 「避けられないのかなぁ…変えられないのかなぁ……。」 「もう…ええんじゃなか?ここは結局漫画の中の世界で、俺らは傍観するしかないんじゃ。」 「どんなに辛くても俺らが帰れるんはこの話が終わってからじゃ。どうにも出来ん。」 「……。」 「…仁王は冷たいね。結局は私に原作に口出しするなって言ってる。」 「ま、の。俺はこの世界に命はれるほど、好いてはおらん。テニスがしたいしの。」 厨房で話していた時の映像が、 シエルにセバスチャン、マダムにグレルに露見した。 茫然と映像を見た。 「あらあら、やっぱりってところかしら?」 「あなた達ッ…初めから……。」 マダムが戸惑った様子で、聞いてくる。 「…ごめ、んなさい……知ってました…。」 下を向いたまま撫子は答える。 仁王は腕を止血しようと自分の着ていたコートで撫子の腕を抑える。 「じゃぁ私hグッ、ぁ…ッ」 「「!?」」 マダムの胸にチェーンソーが生えた。 いや、刺さったのだ。 「一度外しただけで、アタシがマダムを殺そうとするのをあきらめると思ったの?甘いわねぇ。 …にしてもガッカリよ、マダム・レッド。ただの女になったアンタに興味ないわ。」 死神の鎌を抜かれ、投げ飛ばされるマダムの体。 「マダムーーー!!!」 一撃は守ることが出来たのに、 もう一度は守れなかった。 結局は原作を変えることは不可能で、 結局はシナリオ通りに進むしかなくて、 そしてマダムから溢れ出る血は走馬灯になりマダムの記憶を再生して行く。 [mokuji] |