青春トリップ!!?  | ナノ


第14話


「さて…。」

セバスチャンが自分の来ていたコートをシエルにかける。

「!?なに…!」

「あまりお体を冷やされませんように、屋敷街に戻ったらホットミルクでもお淹れ致しましょう。
蜂蜜かブランデーで甘みを付けたものを。」

微笑みシエルを安心させようとする。
シエルはかけられたコートの端を握りしめた。

「アーラ、そんなに簡単に返してあげないわ、ヨッ!!」

グレルが死神の鎌をおおきく振りかぶってこちらに跳躍してくる。
セバスチャンがシエルを突き飛ばして鎌から逃れさせる。

「アタシは追われるより追う方が好きヨ、セバスちゃん!ステキな鬼ごっこしましょ!!」

グレルがセバスチャンを追う。

「撫子、雅治。坊ちゃんを頼みましたよ。」

「「イエッサー!!」」

二人はシエルの護衛についた。
二人の顔色がだんだん悪くなってきている。
特に撫子、
割り切ることが出来ていないようだ。

「何故…。」

憔悴したシエルの呟きに距離を縮めながらマダムは答える。

「何故?
今更それを聞いてどうなるって言うの?
あんたと私は今『番犬』と『罪人』になった。番犬を狩らなければ狩られるのなら…。」

マダムが袖口からナイフを取り出した。

「道は一つよ!!」

マダムがシエルを襲う。
ナイフを振り回し、シエルを傷つけようとする。

仁王がナイフをナイフをはねのけ、
撫子がシエルを抱きかかえ、身を挺して守る。

そしてマダムが一太刀、仁王にいれた。

「!?」

仁王の顔が歪む。

「仁王!!アンタがシエル守って!!」

撫子は仁王が怪我をするのを避けていたのを思い出す。
仁王にはテニスがある。
怪我をしてはいけない理由がある。でも自分はそんな理由はない。
だから交代を申し上げる。

仁王もそれに了解をして役割を交代。

「マダム、医者である貴女が何故人をっ…!」

「そうだよ、マダム。シエルはッ…グっ!!」

言いかけたことで頭に激痛が走る。
悟らせて、攻撃を止めさせることは不可能ということか。

「あんた達みたいなガキに言ったってわかりゃしないわ!!一生ね!!」

頭の痛みに耐えている撫子を突き飛ばし、仁王の攻撃もかわし、シエルの首を掴む。
そしてそのまま壁に叩きつける。

「かはッ…!」

「あんたなんか…あんたなんかッあんたなんか…!」

取り憑かれたように何度も同じ言葉をくりかえす。
それに呼応するように首を締める手にも、ナイフを握る手にも力が込められて行った。

「生まれて来なければ良かったのよ!!」

叫び、ナイフを振り上げるマダム。

しかし目に移ったシエルの姿に、彼女の手が止まった。

「坊ちゃん!!」

セバスチャンが叫ぶ。
そして肉が避ける音、

殺す事を躊い、立ち止まってしまったマダムにセバスチャンが襲いかかる。

「やめろ、セバスチャン!!止めろ!雅治、撫子!!」

「「ッサー!!」」

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