青春トリップ!!?  | ナノ


黒執事の世界に行ってきた


目を開けるとそこにはアンティークと言えってしまえば聞こえはいいが、
実際にはただの古びているヨーロッパの古い建物の中だった。

「……痛い、今回はマスターと岳人と…か?」

「…精市から聞いていたが…本当にトリップしてしまうとは…驚きだ。」

「ねー、私はいっつもだからもう慣れた。」

「撫子ー…この中怖ぇよ…。」

怖いものが苦手な岳人は不安そうな目を撫子に向ける。

「可愛いなぁおい!!」

「オイ、」

撫子の下から声がする。
視線をやるとそこには跡部が、
どうやら撫子は跡部の上に着地してしまったようだ。

「あ、跡部も居た。」

怒らす必要性は無いと感じたのでさっさと跡部の上から退いてやる。

「チッ、俺も巻き込むとは良い度胸してるじゃねーか、アーン?」

「……怒るなら滝や幸村君、不二君に言ってね。
私はこんな納得してるけど、一応被害者なんだから。」

「……。」

跡部は黙った。

「撫子さん、今回の指令はなんだ?」

「あぁ、そうだ。」

撫子は服についてるポケットをすべて探し、指令書を見つけた。

「えっとー…。」

『跡部にギャグをやらせて、そこに居る人に笑ってもらってね?午前中に』

「そこに居る人って…?」

「よ〜〜〜こそ、いきなり上から降ってきた人達〜。小生の作った棺桶の中に入りに来たのかい?」

奥から声がした。
目を凝らして見てみるとそこには真っ黒の服を着て
顔に大きな傷がある。
目元は長い前髪で隠れており、口元しかろくに見えない。
そして跡部によく似た声質の人物と言えば、

「きゃーーーーーーーー!!葬儀屋ぁああああああッ!!!!
滝様マジ滝様!!幸村様!!不二様ぁあ、目の前に葬儀屋が居るよぉ!!ありがとう!!そしてありがとう!!」

「ん?小生を知っているのかい?」

黒執事の葬儀屋しかいない。
撫子は興奮し、
柳は開眼して、
岳人はビックリしすぎて意識がログアウト。

跡部は睨みつけるように葬儀屋を見ている。
自分の美声が葬儀屋とダブっていることが気に食わないらしい。

「葬儀屋さんの棺に入れるなら私、本望…ちょっと死んでくる。」

「待て撫子さん早まるな。死んだら他の世界に二度とトリップ出来なくなるぞ。」

柳に止められる。

「あ…それはヤダ。」

「葬儀屋、今は何時だ?」

「ん〜?11時だよ〜?」

「あ、ヤバ、跡部。なんかギャグしてよ。」

「ふざけんな。誰がやるか。」

首を縦に振らない。

「やってよ!!帰れなくなるんだよ!?」

「誰がそんな惨めなことするか。」

「今すぐお笑い芸人に土下座しろ。」

「跡部、そんなこと言ってもいいのか?」

「あーん?なにがだ?」

「いけー、マスター!!説得しろー!!」

「ここは昔の英国だ。もし帰れずここで暮らすとして、今迄の生活を送るためには伯爵並の地位が必要だ。
そして今の跡部は跡部財閥の御曹司でもない。ただの無一文の子供だ。
せいぜい、どこかで働くんだな。しかし跡部の性格では仕事は続かないだろう。
いずれにせよ、此処では一生惨めな生活を強いられることになるな。
一瞬の惨めさと一生の惨めさ、天秤にかけるまでもないと思うが?」

「どんまい!!
私は色々手はあるからね。生活には困んないさ、
町で出会ったときはよろしく。」

「ッ…。」

「まぁ…跡部の外見を利用すれば……豪邸で過ごす…方法もあるが…。」

「…あぁ……確かに、トランシーさんはそれだね。」

「なにが…あんだよ。」

「春を売れ。」

「ッざけんな!!」

「だったらギャグを披露するんだな。」


「小生に笑いを見せてくれるのかい?」

葬儀屋が跡部の方を向いてニヤニヤとした笑いを発した。

「跡部…やれ、
ここでやらなければ犯るぞ(そのへんの成金が)。」

「クッ…!!」

決意を固め、葬儀屋に向かう。

「?」

「…………おい、椿崎 もし無人島に何か一つ持っていくとしたらてめぇなら何を持っていく?」

「私にふるのかよ……メモ帳、すること無いしネタを書き溜める。
……そういう跡部は何を持っていくのさ?」

「俺は自家用ジェット機を持って行くぜ!ハッ!」

柳は「ジュニア選抜の時に披露したネタをまわすのか。」と冷静に。
撫子は救いようのないものを見てしまって何とも言えないような表情をした。


「…………自家用ジェット機ってなんだい?」

「!?」

妥当な反応だ。
そんな反応にキレたのか、跡部は持ちうるネタ?を立て続けに披露した。

が、効果無し。
葬儀屋は一向に笑わない。

「ハッ!?俺は、」

「あ、岳人が起きた。おはよー。」

「撫子おはよ…なんか心なしか寒くなって起きたんだけど…なんかあった?」

「うん、ここ数十分跡部が寒いギャグを披露してくれてる。」

さっきからタジャレになってて寒いのなんのって、

「あ、葬儀屋さん。今何時?」

「今かい?11時50分だよ。」

「あ、ヤバい。」
「ゲ、もしかして帰れねぇ!?」
「最悪その可能性も出てきたな。」

「滝ってばなんでこんな無茶な指令を…。」

絶望にくれる三人。
跡部もなんだかんだ言って既に涙目だ。



「葬儀屋邪魔するぞ。」
「お久しぶりです。」

扉が大きく開き新たな客がやってきた。

「ん?」
「おや?」

小さな身長に、眼帯。
子供のくせに隣には身なりのいい真っ黒な美形な執事を連れて、こんな店に来るのはただ一人、

「シエル・ファントムハイヴゥウウ!?かっっわいいいいいいいい!!!」

撫子は迷うことなくシエルに抱き着いた。

「なッ!?セバッ助けろ!!」

「大丈夫ですよ、その人に坊ちゃんに向ける殺意はありませんし。
この世界の人間でも無い。」

「流石セバスちゃん分かってるぅ!!」

「撫子さん撫子さん、その気持ちは分かるが、もう時間がない。
最終手段に出るぞ。」

柳が神妙な顔をして撫子を見る。

「なんか方法あんの?」

「あぁ、この二人が来たことにって可能になった。向日も協力してくれ。」

「ん?」

三人は円になり柳の作戦を聞いた。

「…マジ?」
「あぁ、マジだ。」
「その方法しかねーならなってやようじゃん。俺全然活躍できてねぇし。」

仕方ないと、三人は声を揃えコールする。
そう氷帝コールを、

氷帝氷帝氷帝氷帝氷帝氷帝氷帝氷帝氷帝氷帝氷帝氷帝氷帝――――。

パチン――

「俺様の美技に酔いな。」

条件反射並に跡部はコールを止めお決まりのセリフを吐いた。

葬儀屋の方を向いてみるが葬儀屋はキョトンだ。

プッ―――

後ろからの笑い声。
シエルが噴出したのだ。

「葬儀屋の声で…俺様ッ…か……ハハハハッ!!」

「おやおや、坊ちゃんがここまで笑うなんて…よほど葬儀屋さんをバカにしたいようですね。」

笑ったッ!!!


「うぎゃ!?」

突然の浮遊感が4人を襲う。

「ふぅ、上手くいった。」

「ホントだぜ。」

「葬儀屋って指定なくてよかった!!シエルが来てくれて本当に良かった!!」

ここに居る人だから葬儀屋に笑ってもらわなくてもここに訪れたシエルに笑ってもらってもよかったのだ。

最後にお別れの挨拶。

「葬儀屋さんお邪魔しましたー!!
じゃーねーシエル!!今度会ったらまたハグさせてねー!!」

「誰が!!」

「はい、坊ちゃん共々お待ちしております。」

「勝手なことを言うな!!」


――――――――――――
100000hit企画第3弾
翼様リクエスト『黒執事の世界へ跡部とその他数名とトリップ葬儀屋との絡み』でした。

岳人と柳なのはあみだくじで決めました^^
これ以上登場人物増やすと収集がつかなくなりそうだったので…。
あ、これって葬儀屋との絡みになるのかな?むしろ最後はシエルのからみが……。

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[mokuji]