青春トリップ!!?  | ナノ


第11話


「あの…少し、よろしいでしょうか?」

扉の方を見れば、グレルが一人立っていた。

「なにかな?」

「奥様とシエル様にローズヒップのハーブティーをお出ししようかと…。」

「あぁ…ゴメン。今退けるね。」

「あ、いえ。お話しなさっていてください。
すぐ戻りますから。」

グレルはもたつきながらハーブティーを作った。
そして台車に乗せ持っていこうとする。

しかし、仁王がその台車に足をかけ、台車が大きく揺れた。
ティーセットが台車から落ち割れてしまい。
台車から落ちてしまった反動で紅茶がこぼれてしまい仁王の腕が濡れた。

「すすすすみません!!!」

「や、平気じゃ。」

平気と言いながら仁王は腕にかかった紅茶を一舐め、

「なんじゃ、これ…おまん、塩と砂糖を間違えたんじゃなか?」

「え、そんな…。」

グレルも確かめると本当に紅茶がすっぱかった。
苦笑いを見せる。

「………よかったじゃん、しょっぱい紅茶をマダム達に持って来かずにすんで。」

「ハ、ハァ…。」

「グレルと仁王はそれ片付けてよ。
私が紅茶の準備するから。」

役割を分担し行動する。
掃除も終え、紅茶も無事作り終わり、グレルを見送った。

「……これ…どういうこと?」

原作を変えれたよ?

「…さぁ?…分からん。
じゃが…一定の条件の下だったら、変更は可能だってことじゃな。」

「……一定の条件…か。
…原作として終わったことには口出しできる?」

「どういう意味じゃ?」

「あの時、仁王が足を引っ掛けなかったらあのまま運ばれていた。でも運ばれなかった。
原作としてグレルのあのミスはここで完了してあのまま原作に進む予定だった。完了ってところがポイントで、
終わったことには口出しできるってこ、と……?あれ?意味わかんないな。」

「や、大体理解したぜよ。
椿崎がDEATHって言えんかったのは、まだ原作で言ってないから。
俺が迷子になるなって言えんかったのは、まだ迷子になってなかったから。
シエルを昨日助けれんかったんはまだ、シエルがあの空気を吸ってなかったから。まぁ、これは気絶したシエルを抱えて逃げれば回避できたイベントになるぜよ。
もう一つ…考察したんじゃが、俺らはその出来事を自分に怪我を負いながらの行動だったら変えられる。」

「どういうこと?」

「こういうことじゃ。」

そう言って仁王は撫子に紅茶を被った腕を見せた。
火傷で真っ赤に腫れている。

「な、ちょッバカ!!冷やせ!!」

撫子は仁王の腕を引っ張り水道の所まで移動した。
すぐに蛇口を捻り、冷水をかけ始めた。

「でも私の考えたことも、仁王の考えたこともマダムには適応できないな…。
仁王のなんて私らの死亡フラグだよ。」

「椿崎のはいけるんじゃなか?
グレルがデスサイズを投げるっていう動作が終わって、マダムに到着する前にたたき落とせば…。」

「…結局は紙一重だね。」

「別に強制イベントじゃないけん、する必要は無いと思うけどな。」

「仁王は冷たいね。
結局は私に原作に口出しするなって言ってる。」

「ま、の。俺はこの世界に命はれるほど、好いとらん。
テニスがしたいしの。」



「撫子、雅治坊ちゃんがお呼びです。」

二人で結論付けていると、今度はセバスチャンが調理場に来た。
どうやらシエルが王手をかけたようだ。

物語が大きく動き出す。



19世紀末―――
社交期も終わりに近づいた頃

英国を震撼させる連続殺人事件が起こる

被害者になったのはいずれも娼婦
全身切り刻まれ子宮が奪われた姿で発見された

その被害者の無残な姿から
何時しか犯人はこう呼ばれるようになる

ジャック・ザ・リッパー
「切り裂きジャック」

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