第09話 「でも…私ずっと子爵とお話がしたかったの。」 「ほう…そこの瑠璃鳥の片翼も私に会いたがっていたと、」 「ええ、私たちにとって子爵はお慕い申し上げる存在ですわ。」 撫子が笑いを堪えながら言う。 なんだ片翼って、うみねこ気取りか!! 「ダンスも、お食事も…もう飽き飽きしてきたのです。」 「もっと…楽しいことはないのかしら?」 仁王と撫子が妖美な雰囲気で子爵に言うと、 子爵は小さくではあったが、口元が歪んだ。 「わがままなお姫様たちだね。 もっと楽しいことをご所望かい?」 と子爵はシエルと仁王の腰に手を滑らせる。 撫子は危険を察知して予め少し距離をとっていた。 仁王とシエルは鳥肌を立てながらも我慢する。 ザマァウェッウェ、 そして視線をフロアに戻すとエリザベスがこちらをガン見していた。 それに気づいたシエルは子爵を急かす。 「子爵はご存じ?もっと楽しいこと…。」 「もちろん、君たちになら教えてあげるよ。」 「楽しいことって?とても興味ありますわ。」 「君達にはまだ早いかもしれないよ?」 「私たちはもう一人前のレディなんですのよ?叔母様にだって内緒に出来ますわ!」 ダンスが終わり、エリザベスがこちらに走ってくる。 シエルの顔にかなりの焦りが見える。 でも安心しろ、セバスチャンがどうにかするから。 そう思っているとセバスチャンが人一人入る位の大きさのクローゼットをもってエリザベスの目の前に登場した。 ざわつく会場。 「手品なんか頼んだ覚えはないんだが…?」 主催者である子爵だけは疑問を浮かべていた。 シエルはこのチャンスをものにしようと、キュルンと効果音がつくような表情、動作で子爵を説得する。 「子爵、私達手品も見飽きてますの…だから、ね?」 「私、子爵ともっとお話ししたいわ。」 「私…も。」 撫子と仁王も畳み掛ける。 「分かったよ、仕方のない子達だ!」 子爵は広間の奥の扉を開けた。 「奥へどうぞ。」 撫子達をエスコートする。 シエルは小さくガッツポーズを作り着いて行く。 撫子と仁王はシエルを守る様に左右に位置する。 「なんだか広間が盛り上がっていますね。」 「そうね、あの手品師の手品が面白かったんじゃないかしら?ね、お姉様。」 「…えぇ。」 「フッ、今から行く所はもっと楽しい…いい所だよ。」 子爵がある一室の扉を開け、中に案内する。 何の疑いも無く中に入って行こうとするシエル、 それを阻止しようと撫子はシエルの腕を掴もうとするが案の定頭が痛くなり行動が抑制されてしまった。 仁王も同じく。 「いいと…!?」 「チ…ッ!」 「ぐッ……!」 甘いにおいを一番に嗅いでしまったシエルがふらついた。 次に撫子、仁王。 三人とも子爵の思惑通りに気を失ってしまったわけだ。 「そう…とてもいいところだよ。 駒鳥に瑠璃鳥。」 [mokuji] |