役立たず二年の秋。
俺が倒れるまでもう秒読み。
倒れるって分かってて、練習に身が入る奴なんていないだろう。
どうせこの先半年はまともに動くことが出来ないんだからさ。
義理程度に参加している部活も面倒くさくて仕方ない。
この先の展開を分りきっているのに、誰が努力しよう?
懸命に練習している皆の姿をここのベンチで見れば見るほど、俺の気持ちは冷めていく。
「――ら――幸村!!!」
「あ、あぁ…真田か…なに?」
考え事をしていたら動きが止まっていたようだ。
コートの中ではなかったことが不幸中の幸いと言うものなのだろうか。
「部活中だと言うのにボーとするな!たるんどる!!」
「葉波が最近考え事をしている確率89%。」
「……柳…。」
「次は全国大会三連覇を目指すのだ。日々の限られた練習は大切にしなければならん!!」
「…ゴメン。」
「葉波は何を考えているんだ?」
「ちょっとね。蓮二には想像できないことかな?
ねぇ、俺にこうやって話しかけるより、二人とも練習に集中すれば?この時間がもったいないんじゃない?」
「む…。
しかし、幸村に士気がないと部内の士気が下降する…。
いつもの様に神々しくいてはくれないか?」
「何だよそれ、俺は置物?俺はただの象徴なの?俺は俺でここに居ちゃいけないのかな?」
自分勝手極まりない。
馬鹿ばっか、俺をなんだと思ってんだよ。俺が悩みごとしちゃいけないのか?
部内の士気が下がるから俺は神々しくしていろ?
ほんと、なんで俺はお前たちの士気管理までしなくちゃいけないのかな。部長だから?
ハッ!!そんなもの知るか、知ったこっちゃない。
こっちは義理程度でここに来てやってんだ。
ここに俺が居るだけでも感謝して欲しいぐらいなのに、
「そんなことは…言ってない。」
「言ってるよ。十人が十人そう言ったって言ってやるよ。
俺だってさぁ、悩んでることだってあるんだよねー。神なんて存在じゃないんだからさぁ、人間なんだからさぁ。
ぶっちゃけるとさー、ここに来るのもダールイんだよね。先が分っててるからさー。
これから三連覇に向けて頑張ろう?俺、悪いんだけどそんなこと無理。」
「何を…言っているんだ?」
「柳も理解力ないねー。
俺はもう、我慢の限界だ。なんで赤の他人の俺がこんな人生を歩まないといけないのか分からない。
俺はこの先倒れると分かっていてなんでお前ら一瞬一瞬を大切に生きてるやつと同等に過ごせれると思ってんの?」
「…倒れる?」
「ああ、倒れるさ。今年の冬、いきなり身体が動かなくなってね。
三連覇に死角無し?アハハハッありまくりだから、どうせ青学に負けるんだよ。無駄無駄、そんなに頑張っても無――――ッてぇ…。」
右頬が痛んだ。
真田の鉄拳が飛んできたようだった。
「何を言うか!幸村!!お前がそんな弱気でどうする!!倒れる?負ける?そんなこと俺が防いでやる!!
確定した未来なんかがあってたまるかぁ!!」
「俺も弦一郎に賛成だ。俺もなにかとサポートしよう。だから葉波、世迷言をもう言うな。」
「……………そう…だね。ゴメン…今から気を付けるよ。」
にこやかに微笑めば険しい顔をしていた真田の顔は普段のものに戻った。
「うむ。ぜひそうしてくれ。」
「弦一郎行こう、葉波の悩みが解決した確率88%。」
手をヒラヒラと振ってやれば、二人は移動したし満足げだ。
ハー…バカだ。こいつらは、
何も理解してくれないなぁ、真田は……、柳は…、
なにが俺が防いでみせる、だ。まったく…そんなことは無理で不可能なんだよ。
柳も詮索してこないでよ。
いつも100%とは言わないけど…残りの数%には全く目をやらないのかな。
まぁ…どうでもいいけど。
そして冬。
俺はいきなり体が動かなくなって、倒れ込んだ。
嗚呼…来た。
だからこいつの人生なんて生きたくなかったんだよ。
痛いし、惨めだし、
病院生活なんて、耐えられないな。
「幸村ぁああ!!!」
隣に居た真田に支えられる。
………真田…そういえば前、防いでくれるって言ったよね。
ねぇ、防いでよ。
ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ。
「…防げてねぇよ。この、役立たず。」
冬なのにあり得ない量の汗を拭き出しながら俺はニコッと笑って言い放ってやった。
真田の動きが一瞬停止した。
顔は見れないけど、さぞかし面白い顔をしてくれているんだろうね。
―――――――――――
200000hit企画第11弾
せいか様リクエスト「幸村成り代わり シリアス」でした。
なんだろ…最近疲れてんのかな…?文がいつにもましてまとまりが感じられない…。
シリアスにしようと思ったら、幸村が腹黒に…なんでだ。練詠の頭の中でシリアス=腹黒っていう方程式でもあるんでしょうかね!!←
あと真田…神々しい座り方ってどんな座り方なんだい?ちょkwsk←
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